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デンスブレスト(高濃度乳房)と乳がん検診(前編)

・デンスブレスト(高濃度乳房)を説明し、みなさんがどうすればよいのか伝えます。
・米国と日本の取り組み・現状を紹介。
・(後編)ニュースのきっかけとなった、ラジエーションハウス(第4回, 2019/4/22)のあらすじと、造影MRI、非造影MRI、HBOCの解説。

● デンスブレスト(高濃度乳房)に関する10の重要知識

1) X線乳房撮影(マンモグラフィー)で認められる所見(しょけん)のこと。
2) 病気ではなく、身体的な特徵のことで、乳腺が濃い(乳腺が多い)ことを指す。
3) デンスブレストは、「高濃度乳房」とも呼ばれる(「高濃度乳腺」は誤り)
4) 乳腺全体が白くなってしまうので、乳がんが隠されてしまう(↓)。

5) 日本人の半数以上がデンスブレスト。30代までは基本的にデンスブレスト(乳腺が豊富で脂肪が少ない)。50〜60代でもデンス(濃い)人は稀でない。
6) デンスブレストは「不均一高濃度」と「高濃度」の2つを指し、診断能が低くなる。高濃度では、乳がんの検出能は約半分しかない(48%)
 つまり「異常なし」=「検出能50%の検査で異常なし」という意味でしかない。

7) 米国の公的機関*は、2019年3月27日に、「デンスブレストであることを告知しなくてはならない」と指示を出した)(英語ニュースリンク
8) 日本では、2016年に野田聖子国会議員が「乳がん・子宮頸がん検診促進議員連盟」で厚労省担当者に質問した(なぜデンスブレストの人にその事実を伝えないのか)。
9) マンモグラフィの改良版である「トモシンセシス(3Dマンモ)」は、被曝量の増加と引き換えに、立体視により約50%検出能が向上する。
10) ただし、上記の右端「高濃度」では、真っ白なので、検出能は改善しない**。

* 米国食品医薬品局(FDA)
** Rafferty, et al., JAMA 2016( ← Impact Factor 46の超々一流雑誌): 1000人あたりマンモのみ 3.8人 vs マンモ+トモシンセシス 3.9人。

● デンスブレスト(高濃度乳房)と超音波検査に関する10の重要知識


1) デンスブレスト(高濃度乳房)の人は、超音波を受けることも考えるべき。
2) ただし乳房超音波検査の資格者数はマンモグラフィの1/8しかいない(マンモ 約2万8000人 vs 乳房超音波 約3600名)。
3) このためデンスブレストのひとがすべて超音波を受けたら、現場はパンクする。
4) このためリンクのような答申がなされており、難しい問題を孕んでいる。


5) 受診者の立場からすると、ぜひ伝えてもらいたいが、現時点の日本では、各自治体に告知の有無が任されている。
6) 一部のマンパワーのある病院(例:大阪ブレストクリニック)では、マンモグラフィーでデンスブレストを示した人には、その旨を通知している。
7) マンモグラフィに(よく訓練された技師による)超音波を加えると、約50%増しの検出能になるという、大規模研究の結果が得られている(リンク)。
8) 悪性腫瘍のがんは一般に硬く、良性腫瘍は一般に柔らかい。これを用いて両者の鑑別の材料を提供するのが超音波エラストグラフィー(Elastography)。ラジエーションハウスのドラマ内でも使われた。
9) 超音波は、乳房を挟まないので痛くない
10) ただし自動走査型の超音波(ABUS; エイバスと発音)では圧迫するので痛いと感じる人もいる。

●「無痛MRI乳がん検診」(ドゥイブス・サーチ)に関する10の重要知識

1) ドゥイブス法(DWIBS法)は、放射線科医(高原太郎)により考案された。
2) 乳がんの発見に用いることができる。
3) デンスブレスト(高濃度乳房)でも、その影響をほとんど受けない。
4)「痛くない」うえに、「見られない」+「注射しない」検査が可能。
5)  MRIなので被曝なしに癌を見つけることができる。


6) 検査時間は10分余り。病院在院時間は1時間余り。
7) 受けられる病院はまだ少ない(全国12病院。2019年8月までに16病院程度を予定)。
8) 700例余の結果では、がん発見率は1.42%だった(平均的なマンモグラフィの4約5倍、400%増し)。
9) 豊胸術の人も(検出能は下がるが)受けられる。糖尿病の人も受けられる。
10) マンモグラフィや超音波に比べて、素人でもわかりやすい画像(↓)が得られる。

痛くない・見られない乳がん検診ホームページ
● 良医の視点



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