そして

あれから1年が経った。

私は正直彼のことはもういいやと思っていた。
思っていたより、会わないと考えることも
少なくなっていた。

私はこの年、仕事をやめようと思っていた。
職場の仲間はみんな家族みたいで大好きだったし
やめたくなかったが、この不景気もあり
辞めざるを得なかった。

そのとき久しぶりに彼のことを思い出した。
そういえば連絡してって言ってたな、と。
彼はもうそんなこと忘れているかもしれないけど
私はずっと忘れていなかった。
でもしばらく連絡を取っていなかったし
急に連絡を取ることに対して躊躇してしまった。
このことを先輩に相談したら
気になるなら連絡したほうがいいと言った。
その言葉通りすぐに私は連絡をした。
でもご飯を誘うことはできなくて
その代わりに「よかったら遊びに来てください」
なんて言った。

彼からの連絡は翌日来た。
まだ連絡先残していてくれたんだなと思って
うれしかった。
彼は私がこういう報告をちゃんとしてくれたことに
対してうれしいと言ってくれた。

そして1年半前には考えられない出来事があった。
彼からご飯を誘ってきてくれた。
うれしかった。しかも2人きりで。
でもあれっと思った。彼女は??
でもそのときは聞けなかった。怖かった。
もしまだ彼女がいたら?私は断っちゃうかも。
でも会いたい、でも夜ご飯と言われた。
1年も会ってないし、2人だし、夜だし。

結局2人は怖かったから共通の仕事の先輩も呼んだ。
1年ぶりに会った彼は顔がやつれていて
身体も前よりも痩せてしまっていて、疲れていた。
話を聞いたところ
本社に行ってから働き詰めになってしまい
身体がおかしくなってしまったと。。
彼がそんな状態だったなんて知らなかったし
そんな中、来てくれたことに申し訳無さと
何か私に力になれることはないのかな
なんて思った。

会はとても楽しく終わった。
みんなで働いていたときの話をして
思い出話をいっぱいした。
他のみんなでも飲みたいね〜なんて話もした。

でも私はずっと彼女のことが引っかかっていた。
そういえば彼と彼女は住まいが
お互いの家から徒歩5分圏内にあると前に
話しをしていて、「同棲しないの?」って
別に聞きたくもないのに探るために聞いた。
すると彼は平然とした顔で
「そうだな、そろそろ考えないとな。」と
ボソッと言った。

やっぱり別れていなかったんだって思った。
ショックではなかった。
"あぁやっぱり別れていなかったんだ" というのが
正直な感想。

でも私は一緒にお酒が飲めてうれしかった。
一緒にご飯を食べれてうれしかった。
同じ時間を共有できてうれしかった。
とにかくうれしかった。

先輩は帰りの電車が違う線だったから
改札で別れて、私と彼は電車は違うけれど
同じ線だったからホームまで一緒に向かった。
楽しかったね、なんて話をしながら
来る電車を待った。
彼は私が乗る電車が発射するまで
手を振ってくれた。
うれしかった。
些細なことだけれど、このときの彼の笑顔は
私に向けてしてくれている笑顔だったから。


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?