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撮影レンズはなにがおすすめ?前編

ここまでの記事でカメラのボディの選び方についてご紹介しました。続いて、いよいよレンズ編です。「いよいよ」というのも、自分に合ったレンズを見つけて扱いこなせれば、写真はみるみる洗練されていきます。…と同時に、レンズにこだわり始めると、驚く速さで福沢諭吉が消えていくのでご覚悟を。カメラに出費はつきもの、と開き直ってレンズ沼に肩まで浸かった私が、沼より手招きさせて頂きます。

野球撮影で使用するレンズは主に2種類

「ズームレンズ」「単焦点レンズ」「広角レンズ」「ミクロレンズ」「魚眼レンズ」…と、レンズにはとてもたくさんの種類があります。野球の撮影で使うのは、この中で「ズームレンズ」と「単焦点レンズ」の2種類です。ごくまれに「広角単焦点レンズ」という超高級レンズで撮影に命かけてらっしゃる方をお見かけすることもありますがひとまず置いておきましょう。

レンズ選び前編では「ズームレンズ」と「単焦点レンズ」の違いと、野球を撮るうえで それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。ズームと単焦点の違いが分かる方は、前編に用はありません。飛ばして後編へどうぞ。


ズームレンズとは?

ズームレンズとは、おそらくほとんどの方が一眼レフカメラと聞いて真っ先にイメージするレンズです。被写体に近づく「ズームイン」、被写体から遠のく「ズームアウト」で構図を決めてシャッターを切ります。

…被写体、とか書きはじめると文章がどんどん読みにくくなりそうなので、以降は「選手」と書きます。せっかく野球撮影に特化したnoteなので。

たとえば、「70mm-300mm」と書いてあるレンズがあるとします。「最短70mm、最長300mmまでズームすることができる」レンズのことです。ちなみに、これはフルサイズのボディに搭載したときのこと。野球撮影でおすすめのボディ・APS-Cに「70mm-300mm」のレンズを搭載した場合、例の1.6倍の魔法です。「112mm-480mm」のズームレンズとして機能します。素敵やん。

単焦点レンズとは?

「たんしょうてん」、日常生活では聞きなじみのない言葉だと思います。「焦点距離が単一であるレンズ」のことなんですが、焦点距離と書くと難しく見えるので、ざっくり簡単にまとめると「ズームしないレンズ」のことです。「ズームしない」というより「ズームできない」レンズのことです。イメージが湧かない方のためにしつこく書くと「ズームリングが無い」のです。それでもピンと来ない場合は、家電店で実物を触ってみると一発でご理解いただけると思います。ぜひ。

レンズには「300mm」と表記されていると思います。ズームレンズのように「〇〇mm-300mm」ではないのです。「300mm」だけ。これが「単」のゆえんです。(300、の数字はあくまで一例です)

フルサイズに搭載すると「300mm」で撮影でき、APS-Cに搭載すると1.6倍の「480mm」で撮影することができます。

野球を撮るならズームと単焦点どっちがいい?

実はこの比較は、野球を撮り慣れている人によっても意見が半々に分かれます。というのも、「どのポジションの選手を撮るか」「どんなシーン(打撃、ベンチ、守備)を撮るか」でそれぞれ一長一短なんです。

あくまで私の肌感覚ですが、初心者の方は比較的ズームレンズ使用者が多く、中級~上級者の方はズームレンズと単焦点レンズを併用している方が多い印象です。上級者の方でもズームレンズ1本で撮っていらっしゃる方もいるので本当に一概には言えませんが。

野球撮影でズームレンズのいいところ

一番のメリットは、カメラ越しに選手を見失いにくい、カメラ越しに選手を追いかけやすいことかなと思います。

球場で選手がわさっと大勢で集まっていたとします。試合前の練習や声出しをイメージしてください。撮りたい選手がどこにいるか探すとき、ズームレンズであればファインダーを覗いたままズームで寄ったり引いたりしながら推しを探すことができます。「前方席なら肉眼で探せるじゃん」「推しはだいたい同じ場所で練習してるからわかる」と思っていても、野球で使用するのはけっこうな望遠レンズなので、覗いたら“今これどこを見ているんだろう?”ということも始めのうちは多々発生します。展望台にある望遠鏡(100円を投入したら5分くらい景色を眺めることができるやつ)を想像してください。覗き込んでいきなり超ズームでどこかのビルひとつだけドーンと写っていても、目的の建物が探せなかったりしますよね。一旦引いて、目的物を見つけたら寄る、あれと同じ原理です。

レンズを覗いたときは引きで全体を見て、ファインダーを覗きながら推しにズームインして撮る。ちなみに単焦点レンズだと、そういうわけにはいきません。ズーム機能がないので、300mmのレンズであれば、ファインダーから見える世界は300mmの距離だけしか映し出しません。選手がどこにいるか探そうと思うと、望遠鏡を覗いた状態、いろいろがドアップのまま探すことになります。つまり、何が起こるかというと慣れるまではクラクラしたりファインダー酔いします。しました。(体験談)

野球撮影で単焦点レンズのいいところ

ズームレンズのいいところを見ると、ズームレンズが圧勝のような気がしてしまいそうですが、単焦点レンズは別名「明るいレンズ」と呼ばれています。そう、最大の強みは「明るく撮れること」なんです。よほど高性能(&高額)のズームレンズと比較しない限りは、ほとんどの場合単焦点レンズのほうが明るく撮影できます。

単焦点レンズだと明るく撮れる理由は、「単焦点 明るいレンズ」で調べると分かりやすいサイトがわさわさ出てくるのでここでは説明を省略します。理屈は後回しでも問題ないので、単焦点レンズだと明るく撮れる、これだけ丸暗記して頂ければ大丈夫です。

ちなみに、明るく撮れるメリットとは何でしょうか?「明るく撮れなくたって、写真が暗ければスマホアプリで明るく加工すればいい」と思われるかもしれません。スマホの画面サイズで楽しむ分には、おっしゃる通りアプリ加工で十分です。ただ、「せっかく撮ったから印刷してみよう」「パソコン画面で大きく見てみよう」と思ったときに、アプリ加工だと写真のざらざらが如実に目立ちます。

12球団本拠地で一番照明が暗い、京セラドーム大阪(※たろ調べ)の写真で比較してみます。下記はズームレンズで撮影して、さらにアプリを使って明るさをかなりあげた1枚です。

今このnoteをスマホから見ているかパソコンから見ているかで表示サイズが異なるため、見え方がとても違うと思うので伝えづらいのですが、ザラザラが目立っているのがお分かりでしょうか?「わかるわかる!」って思われるのも、自分で書いておきながらアレですが、つらいですな。(仕方ない。)

続いて、同じ京セラドームで単焦点レンズで撮影した1枚です。

ツルツルなのがお分かりいただけるでしょうか?上林選手の肌の話じゃないです。選手はもちろん、背景の芝や青色の壁も、ザラザラ(ノイズといいます)が先ほどと比べるとほとんどありません。おまけに、一切アプリ加工していません。シャッター切ったままです。なんなら先ほどのアプリ加工後よりも明るいのがお分かりですか?(鼻息荒いです、伝われ)

ちなみに、撮影場所はどちらも3塁側のほとんど同じ席から撮っています。

ただ、ちょっとだけ補足すると、上の写真はズームレンズ界の2軍で撮影しました。下の1枚は単焦点レンズ界の中でも1軍4番のレベルを誇るレンズで撮影しています。記者席にいるカメラマンの半分くらいも、これと同じ単焦点レンズなんです。なので、ズームレンズでも、ズームレンズ界の1軍レベルで撮影してあげるともう少しザラザラも軽減されるかと思います。

とにかく、この明るさに気付いてしまうと、単焦点レンズも手放せないなぁと思ってしまったりするわけです。

しかしながら、単焦点レンズだけ持って球場に行くと、自分のすぐ近くに選手がいた場合でもズームを引くことができないので、シャッターを切ることができません。遠くの選手を撮ることができる望遠レンズは、近すぎる選手にはピントを合わせることができません。…となると、今持っているのがズームレンズだったなら選手がどこにいても幅広くシャッター切れるのになぁと悶々とするわけです。ね?迷うでしょ?

どちらか「1本だけ」を選ぶなら

野球撮影初心者の方に、それでもどちらか1本だけを進めるとしたら、私ならズームレンズをおすすめしておきます。というのも、私は野球撮影用のレンズを買ったとき、1本目は単焦点レンズにしました。そうすると、「近くにいるのにシャッターが切れない状況」に歯がゆい思いをしましたし、走る選手を望遠で追って試合中に目が回ってファインダー酔いしました。まずはズームレンズで撮影してみて、慣れてきたら単焦点レンズを使ってみる、でもいいかなと思います。(ほら、簡単に諭吉が飛びますね)

そして、購入前には、やはり一度店頭で実物を触ってみてください。なんやかんや言いつつも、レンズに関してもやはり「こっちがいいよ!」と断言はしにくいです。購入前には店頭でいくつか触ってみてください。1本1本が高額なお買い物ですし。

次回いよいよ、野球を撮影する場合「〇〇〇mm」のレンズが撮りやすいか、を私なりの考察でご紹介させていただきます。


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