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哲学の図鑑を比較してみる

哲学を学ぶにあたって、いろいろな段階があると思います。哲学を勉強したことないけど勉強してみたい人や大学の授業で少しかじったことがある人、高校倫理を勉強したことがある人など様々です。

しかし、どの段階の人でも、哲学を勉強していると、意味が分からない概念や「~学」などつまずくポイントがあると思います。そのときに結構役に立つのが、図鑑です。

哲学の図鑑は概念の説明や哲学者について書かれており、哲学を勉強するにあたって、一冊はあると便利なものだと思います。また、概念や哲学者が紹介されているので、眺めてみるのも面白いですし、入門にもうってつけです。

そこで、今回は哲学の図鑑を比較していこうと思います。(勝手に)

ここで紹介する哲学の図鑑はあくまでも一例と僕の視点なので、実際に本屋さんで見てみることをおすすめします。そうすることで、自分と合った図鑑や面白い図鑑が見つかるかもしれません。また、ここで取り扱うのは一般書として売っている本です。『岩波哲学・思想辞典』などは取り扱わないので、そこはご了承ください。

『キャラクターでわかる 哲学者コレクション』水王舎

一番最初に取り上げるのは、『キャラクターでわかる 哲学者コレクション』通称『哲コレ』です。この本は哲学者がイケメン(あるいは美女)のキャラクターになって、哲学者の説明と一緒に紹介されています。

この本の良さは、哲学者が分かりやすいキャラクターになっている点です。イケメンを楽しむのもよし、イケメンの哲学者から哲学に入門するのもよしといろいろな楽しみ方ができます。ちなみにキャラクターは本人の特徴を少し押さえていると思われます。(カントの巻き髪やフーコーの猫など)

ただ、哲学の内容としては少し薄いところもあり、不十分感が否めません…
なので、この本はこれから哲学に入門する人哲学をある程度勉強している人が読み物として読むにはオススメです。

『哲学用語図鑑』プレジデント社

この図鑑はとても有名な図鑑です。幅広い哲学の概念が分かりやすい図で書かれています。また、要所要所で哲学者の紹介が補足的に書いてあり、哲学者についても知ることができます。ポップな絵と収録されている概念の数、そして哲学者の紹介と、分かりやすく概念を伝えることに特化していると思います。

ただ、概念をイメージしやすいイラストで表しているので、分かりやすいは分かりやすいのですが、哲学の本で書かれていることを自分で読解するということをするには向いていないです。つまり、分かりやすい図によって、読解する人のイメージを固定してしまう恐れがあります。そうすると、哲学を勉強する上での哲学の概念に対する多角的な視点が無くなってしまう恐れがあります。

しかし、哲学にこれから入門する人や哲学の概念が好きな人にはおすすめです。この図鑑はたくさんの概念を取り扱っていて、その概念が出てきた哲学書も紹介しているので、この図鑑を足掛かりにして、さらに哲学を勉強するような使い方が一番この図鑑を生かせると思います。

また、続編で東洋思想や分析哲学も網羅しているので、セットで買うといいかもしれません。

『超訳 哲学者図鑑』かんき出版

この本は、哲学者の思想を身近なケースに当てはめて考えるというコンセプトの本です。図鑑というよりは、哲学的な思考のトレーニングをする参考書に近いかもしれません。また、ポップなイラストと哲学者の思想の噛み砕いた説明で、分かりやすい本です。僕はこの本のトマス・アクィナスの説明がすごく好きです。

ただ、わかりやすさを重視しているので、少し説明不足なところや、不自然な断定もあるように思えます。しかし、それも哲学の問題を実感として感じさせるような鮮やかな具体例のためなので、仕方がないものだと思います。(エラそうですみません…)

哲学をガチで勉強している人にはややもの足りたさを感じるかもしれません。でも、哲学に入門したい人から高校倫理を学んでいる人などの哲学の知識がある程度ある人まで、活用できる本だと思います。

『図解 哲学 人物&用語事典』日本文芸社

この本のすごいおすすめポイントはコスパの良さです。しっかりとした本で、1000円以内かつ内容も濃い。特に他の図鑑ではあまり触れられていない日本哲学が触れられているのもポイントが高いです。ただ、哲学の概念の説明とそれを導く過程に焦点が主に当てられているため、文が少し難しいです。

基本的には哲学者ごとに説明されており、そこで拾いきれない概念を最後にまとめていて、割と抜け目がない図鑑となっています。途中で挿入されているコラムが割と面白く、他の哲学図鑑では書かれていないようなことも補足的に書かれており、時代の流れをつかみやすくなっていると思います。

この図鑑は哲学をこれから勉強しようと思っている人には少し難しいかもしれません。哲学の概念の導き方を分かるには少し経験が必要なので、哲学に触れたことがある人や哲学の思考になれている人にオススメです。しかし、コスパが最高にいいので、一冊持っていても損はないと思います。

『図説・標準 哲学史』新書館

この本は他の本と違って、哲学者の貫成人さんの著書となってます。また、哲学史に沿って説明されているので、思想の変遷も学ぶことができます。哲学史の中でも一般書ではあまり取り上げられないような学派等も触れられているのがこの本の長所でもあります。

基本的には哲学者単位で説明されており、内容も詳しいです。説明をするにあたって、哲学者の原典にも触れられており、とても一人の哲学者あたりの情報量が多いです。その反面、上記のように他の哲学図鑑よりも範囲が広いので、欲しい情報を探すのが、少し大変なこともあります。

この本は内容の情報量が多く、詳しい説明がある反面、少し難しいところもあります。そのような本であるので、哲学をこれから入門したい人にはあまりオススメしません。もう一つ上の段階、つまり少し哲学を学んだことがある人や哲学史を学びたい人にはとてもオススメできます

おわりに

僕は哲学を勉強しているので、こういった図鑑を選ぶときに見てしまうのは、参考文献の質です。具体的には、しっかり原典に触れているかや図鑑の図鑑になっていないか等です。その面で見ると、『図説・標準哲学史』がオススメですが、哲学に入門したばかりの人や哲学を少しかじったくらいの人には難しいと感じると思います。

そこで、自分の哲学を学んだ時間や哲学をどのくらい本気で勉強するかによって、適切な図鑑は変わってきます。そこを見極めて、書店等で選んでみてはいかがでしょうか。

これらの比較は僕の個人的な観点からのもので、偏りはあると思います。ただ、何か言ってる人の意見として、哲学を勉強するときの本を選ぶ判断基準としてもらえたらいいなと思います。