【生成AI】まるでインセプション、VR乗っ取るサイバー攻撃
仮想現実(VR)技術の進化により、ユーザーはこれまでにない臨場感と没入感に酔いしれることができます。しかし、この高度な体験が、新たなサイバー攻撃の足がかりとなりかねないという問題を孕んでいます。
今回シカゴ大学の研究チームが明らかにした「インセプション攻撃」は、VRの脆弱性を悪用し、ユーザーのプライバシーとセキュリティを脅かす危険な攻撃です。
高度なVR体験が生む新たな危険性
知らぬ間に乗っ取られるVR空間
インセプション攻撃は、メタの「Quest」VRシステムの「開発者モード」の抜け道を利用するようです。攻撃者がユーザーと同じWi-Fiネットワークにアクセスできれば、ヘッドセットにマルウェアを注入し、乗っ取ることが可能となります。一度ユーザーがVRアプリを起動すると、攻撃が動き出します。
攻撃者はユーザーの視界を完全に制御可能で、表示内容を変更したり、音声やジェスチャー、キーストロークを盗聴したりできます。さらに恐ろしいことに、ユーザーが他者とのソーシャル・インタラクションで送信したメッセージの内容さえ書き換えられてしまうとのこと。
生成AIで偽装された現実
この脅威はさらに、生成AIの技術と相まって、より洗練されたものとなる可能性があります。攻撃者が生成AIを使えば、ユーザーの声や顔を精巧に偽造し、VR上の会話を自在に操作できるかもしれない。
つまり、ユーザーは自分の本物の空間と、偽装された空間の区別がつかなくなる危険があるということです。
潜む危険に気づかぬまま
研究チームが27人のVR専門家を対象に行った実験では、ほとんどの参加者がこの攻撃に気づかなかったそうです。VRの没入感の高さゆえに、異変に気がつきにくいのが実情といえます。つまり、ユーザーは知らぬ間に個人情報を盗まれたり、操作されたりする恐れがあるのです。
対策が急務
現時点で最善の対策は、ヘッドセットの工場出荷時設定に戻し、すべてのアプリを削除することだそうですが、根本的な解決にはなっていないといえます。研究チームは、VRの一般化に先立ち、より堅牢な防御策を開発する必要があると警鐘を鳴らしています。
メタ側も、この研究結果を重く受け止める必要があると思います。VRの製品開発に比べ、セキュリティ対策が遅れをとっているのが実情ですからね。夢のような体験を提供するVR技術が、逆に悪夢のサイバー脅威と比肩してしまっては本末転倒です。業界を挙げて、ユーザーの安全を守る対策に全力を注いでいく事を祈っています。
参考文献
technologyreview.jp
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