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禁欲のすすめ

「小林さん、禁煙してるって知ってる?」

OL風女子2名がデザート売り場の前で話をしているのが耳に入った。

「え-!小林さんが?」

全神経を耳に集中して聞いてみる。

発注の締め時間がせまっていたが、ボクに選択の余地はない。

無駄にカウンターの上を清掃してみたり、

デザートコーナーの反対側。

パン売り場で左右のパンを入れ替えて並べて意味ありげに頷いたりしてみる。

ヘビースモーカーの小林氏は禁煙して10日になるらしい。

「すごーい!」

とかって言ってるが、いったい10日の禁煙の何がスゴイというのだろうか?

理由は良くわからないが、

問題児が更生して予備校の先生になったり、

デブが痩せて美人になったり、

ヘビースモーカーが禁煙したりは評価が高いのだ。

ホントは偏差値70をキープし続けるのは才能と努力が必要だし、

ずっと美を保つことだって努力はもちろん、もって生まれた資質も重要だ。

ヘビースモーカーが害だとすると、タバコをやめて害のない普通の人になっただけなのだ。

ただ、これらの人が「俺って昔、○○だったんだぜ」と自慢そうに語ることがあれば、相変わらず害のある人かもしれない。

同じパンを右から左へ、左から右へ。

ほら、元のとおり。

そして発注の締め時間がせまっている。

ボクは何をしているんだ。

ボクは女子2人に「すごーい!」言われるのが羨ましいんです。

何か習慣にしていることで、やめることないかな?

事務所に戻り、締めの時間ギリギリで注文を済ませ考えてみる。

風呂に入らないとか、

歯を磨かないとか、

ヒゲをそらないとか、

すごく無いコトばかりが思い浮かびます。


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