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脱力系柔道の話 

 柔道を嗜んだことがありますので書き残しておきます。

1  得意技
「太郎さん、柔道で得意技とかあるんですか」
「口車かな」
「なるほど」
「いや、そこは納得しないで突っ込んでくださいよ」
(その他、拝み倒し、泣き落とし、などもあります。最近は若手職員への丸投げを使うことも多くなりました)
「実際の柔道の試合では『右と見せかけての左の一本背負い』や『内股と見せかけての大内刈り』などのフェイントを使うことが多いね」
「確かに仕事をしていても『やったふり』とか『やったことにする』とかの、フェイントっぽいことをよく使いますよね」

2  黒帯
「太郎さん、多分ですけど、柔道で黒帯をお持ちですよね」
「うん、確かに黒帯を持っているけど、何でそう思ったの。凄い勘をしているね」
「いや、勘ということではなく、黒いのは腹の中だけじゃないんだろうなって。珈琲も仕事の指示も接客も、ほぼ全方向にブラックですよね」

3  試合
「いい年して柔道の試合に出るんですか、優勝とか目指すんですか」
「優勝どころか、1回勝てるかどうかですね。けどね、私が負けることで、勝つ人が生まれるのです。若い方に『勝利』を与えることも、年寄りの役目だと思うのですよ。勝ちは得られなくても参加することに『価値』があると考えています」
「怪我とかしないでくださいね。太郎さんが痛い思いをするのは勝手ですけど、休まれたりしたら僕らの負担が増えるんですから痛手です」
「君らに負担をかけないよう、無理をしないで『負け担』をしますから安心してください」

4  試合会場
「柔道の試合ってどこでやるんですか」
「大会により色々だけど市内なら総合体育館がほとんどだね。ちなみに私は色々な大会に参加したけど、実は日本武道館の畳にも立ったこともあるんですよ」
「中学とか高校時代の全国大会ですか
「学生の時ではなくて、柔道日本一を決める『全日本柔道選手権大会』です。ただ、選手として出場じゃなくてスタッフとして畳に上がったんですけどね」
「また、そんなペテンみたいな話ですか。確かに日本武道館で試合なんかできるわけないですよね」
「いや実は、選手としても日本武道館の畳に立ったことがあります。もちろん試合もしました。投げられた後の天井が凄く高かったです」
「え、どんな大会に出場したんですか」
「大手企業グループによる『社内運動会みたいな武道大会』です。〇〇銀行チームから出場しました」
「〇〇銀行に勤めてもいないのにですか」
「はい、ずっと公務員ですから〇〇銀行に勤めたことはないです」
「ほんっと、ペテン師ですよねぇ」

5  柔の道
 なお、柔道は「相手」と稽古しないと強くも上手くもなれない競技です。そのため、相手を怪我させるようなことや相手が嫌がるようなことが自制されるとともに、感謝や敬う気持ちが自然に生まれてきます。
 さらに、呼吸や動き出しのタイミングなど、相手を観察して気持ちや動きを推し量る技術も磨かれると思います。そんなことも仕事に役立っているような気がします。

 私は武道で言うところの「残心」が苦手なんですが、ある試合では「残心」を保ち「投げてからすぐに抑え込み」に移行できた思い出を気にいってます。(ただ動画で確認したら、もさもさしか動けていなかったので「すぐに」は気持ち的なことになります)

 ただし、それは過去に「残心」が出来ずに
「相手を投げた後、判定を気にした隙に抑え込まれた」
「有効をとった後、綺麗に投げようとして逆に投げ返されて一本負けした」
などの「価値ある負け」の積み重ねたから学んだ動きでもあります。

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