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【創作SS】快ケツ キューティーバニー  朧月 

 今日はパパの帰りが早かった。1階のリビングからテレビの音が聞こえる。古い歌謡曲みたい。
『♩恋する女は綺麗さぁ けしてお世辞じゃないぜー』
 はいはいはいはい、お世辞じゃないけど嘘ね。全くもう、牛さんモーですよ。私は今、間違いなく恋してる。けど、間違いなく綺麗でも美人でもなく、ブスというしかない。
「はぁ~(*´Д`)」
タメ息をつくことしかできない。今頃、陽介先輩は何をしているんだろう。テレビを見てはいなさそう、勉強、運動、ネット、あぁ、何をしててもいい。陽介先輩が生きていてくれるということは、何て幸せなんだろう。

 するともなく「恋の悩み」「告白」とかのワードでネットサーフィンをしていたら、見たことがないサイトにたどり着いた。
 カーテンを閉めて、机に戻りコメント欄に書き込んだ。
『月が綺麗ですね』
 月は綺麗、私は不細工。太陽のような陽介先輩とは月とスッポン、兎と亀みたいなもんかな。
 自嘲的な笑みを浮かべながらため息をつき、珈琲を口に運んだ。珈琲はすっかり冷めてしまっていた。
 ふと、背後に気配を感じて、パッと振り向いた。
「お悩み快ケツ キューティバニー推参。心の闇を照らしてあげる」(ポーズ)
 いつの間にか、白いバニースーツの女の子が立っていた。
「だ、誰、あなた。何でアタシの部屋に居るの?しかも、何でそんな恰好そしているの」

「私は愛の天使 キューティバニー。心から悩める人の心を照らすの。あなたの純粋な恋心が私を呼んだの。
 いい、アナタはとってもキュートで魅力的。好きな先輩にちゃんと向きって欲しい、幸せを掴みに行って」
 バニーの美少女に言われても全く心に響かなかった。
「満月でいる時間は短いし、少女でいる時間も短いの。このまま見ているだけで恋、青春を終えるつもり。生きてる今、勇気を出さなきゃ」
「だって、アタシ、ブスだから」
自分の言葉に涙が出そうになる。
 キューティさんはウィンクすると、
「まって まって まって まって 待ってなんだもん。
 ブスな女の子はこの世にいないわ。ただ、原石が磨かれていないだけ。
 ムーンプリズム バニーブラッシュアップ
 キューティさんの手が柔らかな桃色の光に包まれて、私の顔に迫ってきた。私は怖いとか、嫌という気持ちが湧かないまま、体を委ねるようにキューティさんに近づいた。
 キューティさんは桃色に光る手で、私の全身をポンポンした。
「絵里ちゃん鏡を見て。これがあなたの本当の姿」
鏡には初めてみる美少女が映っていた。
「月の光は真の姿を映すの。これが自信を持った絵里ちゃんの姿。勇気を出して愛を育てて。命短し恋せよ乙女よ。月は雲に隠れて朧月になるけど、いつも空では輝いているの。絵里ちゃんの輝きも、ほんとはいつも輝いていて素敵よ」
 キューティはウィンクすると、窓から漆黒の夜に消えた。

 朝起きると、私は相変わらずブスだった。ただ(命短し恋せよ乙女よ)という言葉が、何となく心に刺さったままだった。

 その日の午後、学校の階段で偶然陽介先輩たちとすれ違った。間近で陽介先輩を見たせいか、何もないのに、眩暈をおこして階段を踏み外してしまった。
 体が落ちそうになった、その瞬間
(命短し恋せよ乙女よ)
キューティさんの笑顔を思い出した。あぁ、死ぬ前に陽介先輩に、一言想いを伝えたかった。こんな気持ちで死んじゃうなんて。
 と思った私を、陽介先輩の隣にいた人が支えてくれた。
(【お触り厳禁】キューティバニー)
という思いとともに、思いっきり声が出た。その役目はアナタじゃない。
「ちがーーッう」
一緒に手も出てしまい、知らない人を突き飛ばしてしまった。
 あぁ、ごめんなさい。けど、命短し恋せよだから、陽介先輩に想いを伝えたい。
 私は思わず陽介先輩にしがみついてしまったままで叫んだ。
「陽介先輩、好きです。付き合ってください」

 その頃、学校の屋上にはキューティバニーの姿があった。
「恋人 月兎(ゲット) キューティバニー」
 キューティは魅惑的な微笑を浮かべながら呟いた。
「二兎を追うものは二兎を得る。絵里ちゃんに続いて梨沙ちゃんも、素敵な恋人を月兎してね。
 月に代わって 応援しているからね」

 キューティはご機嫌そうに尻尾をフリフリしながら、月に向かい跳躍した。
 満面の微笑を浮かべていた。

(本文ここまで)
 はい、登場人物の名前こそ違いますが、名作「学校のカイダン」と「キューティバニー」のコラボレーション企画です。

 こちらの「学校のカイダン」は、もともと「にっこりみかんさん」のこの話インスパイアです。「佐藤先輩」というキャラをお借りしました。

 ということで、今回のお話は「学校のカイダン」と「スキマからのシアワセ」を読んでいただくと、キャラが深堀りできることになります。

 いやぁ、まさか今日も「キューティバニー」を投稿するとは考えてもいませんでした。
 俗に言うところの「キャラが勝手に動き出す」という感覚を楽しんでいます。まして、今回は新しい技として「ムーンプリズム バニーブラッシュアップ」が登場しました。

 他の方が面白いと思うかどうかは、甚だ疑問ですが
「私は、めっちゃ楽しいです」
#何を書いても最後は宣伝
 この宣伝の効果があるかどうかは、甚だ疑問ですが
「私は、めっちゃ楽しいです」
皆様、お読みいただきありがとうございます。
 11月11日の「文学フリマ東京37」には、こちらの本を多めに持参します。

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