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「silent」という名の反抗

話題のドラマ「silent」最終回まで見た。

スマホながら見、倍速視聴という効率主義が加速しすぎた現代の若者の胸ぐらに真っ向勝負で掴みかかる潔い演出、そしてTwitterやインスタの浸透によって一見"言葉"が重要な時代になったと思いきや、一向にSNS上では"言葉"でわかり合おうとせずにあちこちで衝突が起き続ける現代に「互いの思いを言葉にして、どんなに時間をかけてでも丁寧に伝え合う」ことの大切さを、恋愛や友情を通して、役者陣の素晴らしい演技を通して、美しい映像・音楽演出を通して、視聴者に語りかける1話から最終話までブレない思想を貫いた脚本には感服した。

Netflix「初恋」と言い日本の恋愛ドラマにおける夏帆の偉大さと存在感に打ちひしがれる3ヶ月だった…

しかしこのドラマがファイティングポーズを取らないふりをして、全力で既存の恋愛ドラマに"反抗"しているポイントが、"恋愛ドラマにおけるリアリティ"とは何か?の追求だと感じた。

私もそうだが、こういったジャンルのドラマはある一定層の視聴者が自動的に回避する傾向があるわけだが、その訳は「こんな奴いねえよ」だとか「こんなタイミングでこんな奇跡起きるわけねぇよ」だとかいった、いわゆる"白馬の王子様的展開"への嫌気である。

その嫌気への対抗策は随所に見られたが(安易な肉体的接近の連発を多用しない、劇的に登場しない、喋らないなど)やはりこのドラマの真骨頂はコミュニケーション(会話劇)にあるのではないか?

しかしそのストロングポイントはまた逆に、登場人物全員が"ピュアで良い奴で信じられないくらい自分の思いを言語化できる"のに、それを互いがそのままぶつけ合うと、ほとんどの人が傷つけあったり傷ついてしまうというコミュニケーションや言葉の難しさや矛盾を露呈するわけだけど、それすらも物語に昇華しながら表現していることにも感服した。

そして何かと説明過多で余白を許さない現代エンタメにも一切迎合せず、"画から想像させる"という我々動画メディアが本来持っている最大の強みを、ごく自然に、押し付けがましくなることなく演出する様子にも心打たれた。


ちなみに私のハイライトは夏帆さん演じる奈々のスマホ電話とバッグのシーンです。


そして最終話、夏帆さんが飲食店で風間さんに放った一言(しかもそこでCMにいくという粋すぎる編集!)は見事な伏線回収で唸りました。
テレビドラマの底力と反抗を見た1クールでした。

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