見出し画像

未来の建設業を考える:建設論評「青銀共創」

オードリー・タン

 新型コロナ対応先進国と言われる台湾。ITを駆使し、早期に問題を解決した先進事例は、国際的にも評価が高い。その中心的存在は、若手デジタル担当大臣のオードリー・タン(1981年生まれ)だ。初期の代表的な功績は、「マスク・マップ」システム。これにより、いつでも必要なマスクを入手できることに成功した。

政府へ直接提言を行うことができる「Join」

 さらに、台湾のデジタル化の中心人物である彼は、インターネットによって、台湾の一千万人国民が政府へ直接提言を行うことができる「Join」という、国民参加型のプラットフォームも構築している。これにより議員を通じた「間接民主主義」から、国民と直結する「直接民主主義」を実現し、国民の声を政府の政策に直接反映させようとするものだ。たとえば、台湾におけるプラスチック製ストロー廃止も、女子高校生の一言から、この仕組みを通じて生まれたそうだ。

だれもが使いやすいデジタル化

 一方で、何でもIT化すれば良いという短絡な発想をしていないのが、オードリー・タンだ。
 若者だけでなく、老人も青年も、みんなの意見を聞いたうえで、デジタルを活用して解決できるようにすることだ。そのデジタル化にあたっても、若者も高齢者もだれもが使いやすいデジタル化でないとダメ、というのが彼の考えだ。
 日本でもマイナンバーカードの専用端末の使いにくさ、高齢者が利用しにくい都市機能、さまざまな見直しをだれでも利用できるようにするため、利用者の立場になって、利用者の声を聞いて、再度、都市構造のあり方を見直す必要があるのではないか。

リアルな世界を知っている職人

 建築現場も、みんなそこで困ったことをAIやITを活用することで、大きく働き方を変えることが可能だ。むしろ現場で困ったことを知っている職人、リアルな世界を知っている職人こそが、本物のデジタル化を実現できる課題を持っている。スマートスーツで重作業を軽減したり、施工ロボットで高所作業が楽になったり、ドローンで安全確認したりするなど、すでに多くの分野でITが建設現場の作業を助けるものとなっている。
 さらに、いままで実空間で出来なかったことも、AIやITを活用したバーチャル空間であれば、さまざまなやり方を試すことが可能だ。デジタル空間は、未来のあらゆる可能性を考えるための実験空間だからだ。環境負荷シミュレーションや交通シミュレーションなどだ。建築におけるBIMも生産情報を詳細化するだけでなく、BIMを活用することで、都市や建物から生じる問題に対して、さまざまなパターンのシミュレーションを試してみて、最適な解決策を探ることにこそ意味がある。

「青銀共創」

 台湾の「青銀共創」という言葉は、青年(青)と高齢者(銀)が一緒になって、デジタル社会でのイノベーションを進めようとするもの。長い経験から生まれた生活の知恵をデジタル社会に組み込もうというものだ。
 日本の建設現場でも、「青銀共創」により、職人が働きやすいデジタル環境を実現したいものだ。まさに、現場の職人が、デジタル社会の勝者となるように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?