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未来の建設業を考える:建築の製品アーキテクチャとは

製品アーキテクチャの概念

 製造業における製品開発戦略は、製品アーキテクチャの概念で語られることが多い。製品アーキテクチャとは、製品システムの機能要素と物理構造とを組み合わせる殷計思想で、技術・生産管理論の第一人者である東京大学大学院の藤本隆宏先生によると、「どのようにして製品構成部品や工程に分割し、そこに製品機能を配分しそれによって必要となる部品・工程間のインターフェースをいかに設計、調整するかに関する基本的な設計思想」であると、指摘している。
 製品アーキテクチャは、大別すると、「モジュラー型アーキテクチャ」と「統合型アーキテクチャ」に分けることができる。

「モジュラー型アーキテクチャ」

 「モジュラー型アーキテクチャ」の代表といえば、デスクトップ型パソコンである。デスクトップ型パソコンでは、ハードディスク、メモリ、モニタなど、機能的、構造的に独立したモジュールで構成されているため、たとえば、情報記憶容量を増やすためには、パソコン全体の再設計を行うことなく、ハードディスクというモジュールを交換すればよい。

「統合型アーキテクチャ」

 一方、「統合型アーキテクチャ」の代表といえば、自動車である。部品相互間の調整が必要で、たとえば、居住性をとっても、エンジン、シャーシ、シートなど部品間の相互依存性が高く、部品間、工程間、企業間の「継続的な調整」を必要とする。

建築の製品アーキテクチャ

 建築の製品アーキテクチャは、どうであろうか。
 建築物は自動車以上に統合型アーキテクチャの度合いが高いといえよう。部分的には維持管理段階でスケルトン・インフィルに代表されるように、パーツの取り替えで維持管理が図られるようなもの、たとえば、トイレやユニットバスなど、よりモジュラー型アーキテクチャの導入が必要であると思う。

「マネジメントすること」の重要性

 建設プロセスに限って言えば、モジュール間のインターフェースルールが確立していない以上、各部品間、各工程間、各参加主体間の調整能力が求められるところであり、「マネジメントすること」の重要性は高いものがある。
 しかし、これまでの建築生産プロセスでは、最終成果物は設計者にとっては「作品」であり、生産プロセスはあくまで施工者の調整に委ねてきた。
 一方、昨今は、大学教育に象徴される製造業の一部としての生産教育やマネジメント教育の欠落、生産プロセスにおける知識伝承の欠落、企業の境界を超えた相互調整の欠落などにより、事故や機能不全など生産物としての「建築の質」の低下も見られる。

統合型アーキテクチャの重要性

 これらを解決するためには、原点に戻り、統合型アーキテクチャにとって重要な生産プロセスにおける「マネジメント」を認識することが重要である。
 トヨタの強みは、継続的な調整能力をマネジメントとしてシステム化したことと言われている。
 建築生産プロセスにおいても、暗黙の調整を、「マネジメント」として明確化することで、建設産業全体の更なる発展に期待したい。

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