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未来の建設業を考える:「企業価値の創造」

マイケル・ポーターのCSV

 マイケル・ポーターは、企業が維持し成長していくためには、単に企業自体の利益を追求するのみでなく、企業活動を社会貢献活動にリンクし、社会に対して価値を生み出すような企業でないと中長期的に成長し得ない、と言っている。これを称して、CSV(Creating Shared Value)がこれからの企業成長のキーワードになると提唱している。

CSVを達成するために

 CSVを達成するために、マイケルポーターは次の3つの方向性を示している。
 ①社会課題を解決する新製品・サービスの創造(例:GEにおける効率性と経済性を追求した環境負荷削減への取組みであるエコマジネーション)、
 ②バリューチェーンの再定義による生産性の向上(例:ウォルマートにおける容器包装の簡素化、軽量化により、輸送に係るコストを2億ドル削減するとともに、環境負荷を低減する取組み)、
 ③経営資源の蓄積と共生による地域発展(ネスレにおける途上国の貧困地域のコーヒー農家に高品質な豆を栽培させ、貧困からの脱出と企業活動を両立させた事例)がCSV達成のために必要不可欠と説いている。
 企業が企業間競争を追求しすぎた結果、企業の存在基盤であるはずの社会構造や経済への貢献を忘れ、企業利益を最優先に考え、結果として企業存続であるはずの基盤を破壊することとなった。リーマンショックもしかり、欧州市場の混乱もその結果であろう。

建設現場に目を向けると

 建設現場に目を向けると、契約を優先するあまり、職人の間で機能してきた調整機能が欠落しつつあると聞く。たとえば、型枠工は鉄筋の配筋が間違っていれば、それを指摘し調整してから型枠をはめ込んでいたのに、最近では、少しおかしいと思っても、自分の仕事を終了することが優先し、そのまま建て込みを行うなど、人や企業として持つべき社会への影響を考えない、思いやりのない現場になっている。
 これらのことも、自分の仕事への誇りや先に述べた建設することの目的や価値の共有ができていないことに起因するのではないか。
 マイケルポーターが提唱するように、世の中の流れが明らかに価格競争に基づく資本主義から、それらを修正する形で、社会やステークホルダーとの協調へと変わってきている中で、自らの仕事に高い倫理観と他者と協調しすり合わせながらモノづくりを行うことへのこだわりが改めて求められている。
 欧米の狩猟民族の歴史と日本の農耕民族の歴史を比べると、ルールに従って一人の勝者を作り上げる狩猟民族より、米作りのために多くの人々が助け合い共に豊穣の喜びを分かち合える農耕民族の方が複雑なモノづくりには向いているのではないかと思う。これからの社会を協調的な社会にするために、改めて日本の役割は大きいのではなかろうか。そのためにも、建設業として身近な現場レベルでの協調や建設業を通じた社会貢献のあり方について見直す必要があるのではなかろうか。

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