見出し画像

未来の建設業を考える:「先端的蓄電池の世界」(2023年8月1日)

先端的な蓄電池

 環境問題とエネルギー効率の向上は、いま最も社会的に重要な課題だ。解決策のひとつとして、先端的な蓄電池充電器の開発がある。
 その起爆剤となっているのは、言うまでもなく自動車業界だ。クルマのEV(電気自動車)化が急速に進む中、モビリティ用充電器の世界的な規格競争が起こっている。

EVの充電器規格

 現在、EVの充電器規格は、大きく日本、米国、欧州、中国の方式に分かれる。日本の充電器は、いち早く世界に先駆けて標準化された「チャデモ(CHAdeMO)」方式(CHArge de MOve(動く、進むためのチャージ+電気+充電中にお茶でも))。米国はNACS(北米充電規格)」方式。欧州は「CCS(複合充電システム)」方式。中国はGB/T方式だ。

NACS方式

 NACS方式は、米電気自動車メーカー「テスラ」が開発した規格で、コネクタの大きさが半分にもかかわらずパワーはCCS方式の2倍あるのが特徴だ。米国内の充電ステーション設置数はNACSが2万基、CCSが1万基、チャデモが7千基。米国ではNACSが事実上デファクトスタンダードになる基盤ができつつある。
 さらに、米バイデン政権も2030年までにEV向け充電ステーションを5年で50万箇所設置することを目指し、州をまたぐ高速道路沿いの50マイル(約80km)毎の設置義務付けを行うなど、整備を支援する。
 中国数十万もの充電ステーションが設置されていると言われる。一方で、古い充電インフラが多く、実際使えないとか、そもそも中国の電力事情もあり充電ステーションへの電力の安定供給が実現されていないなど、多くの問題も抱える。

日本の経済産業省

 日本の経済産業省も、2030年までに15万基の充電ステーションの整備を進めようとしている。そのためには、郵便局やコンビニ、ガソリンスタンドなど、全国網羅的にネットワークを持つ施設の拠点化が必要だ。すでに全国1,194の道の駅のうち70%に充電器を設置済みだが、利用率の低さも問題だ。
 急速充電器の設置費用も数千万円程度かかり、1回の充電に30分から60分も時間がかかる。普通充電器だと半日にもなるそうだ。
この充電時間を減らすためには、充電時間が短くなるような先端的蓄電池が求められる。

Kバッテリー発展戦略

 世界も蓄電池開発に着目し、韓国は「Kバッテリー発展戦略」に基づき、官民によるR&Dを推進するグローバル先端基地の建設を推し進める。世界一の蓄電池生産量を誇る中国も、江蘇省に130以上の電池関連企業を集積させ、集中的な研究・開発を進めている。

日本発の先端的蓄電池・充電器の実現

 日本でも導電性高分子を利用した新たな蓄電池なども生まれつつあるが、早々に、日本発の先端的蓄電池・充電器の実現に向けた技術開発を強力に進めたいものだ。
 これにより、今後、建設機械の電動化も加速される。電動建設機械の導入は、エネルギー効率の向上環境負荷軽減に大いに貢献できるはず。ただし、建設機械は自動車以上にとても高い出力が要求される。先端的蓄電池の実現で、現在の技術では難しいと言われる急速充電、高出力への対応や長時間の連続運転が可能となるはずだ。建設業界としても先端的蓄電池・充電器整備に、積極的に協力していきたいものだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?