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未来の建設業を考える:「伝言ゲームと建設プロセス」

伝言ゲーム

 伝言ゲームを知っているだろうか。小学生時代に、だれもが経験していると思う。ある文章を一人ひとり伝えていくと、最初の文章とまったく異なった文章となって、笑いを誘う例のゲームである。

これを建築にたとえると

 これを建築にたとえると、最初の文章が発注者要求だとすると、最後の文書はいわば建物(完成形)ということになろうか。
 生産物とは、材料に情報を加えることで、生産物(中間生産物も含む)となる。家具であれば、単なる木材に、設計図という情報を加えることで、製品となる。製品価格は素材価格以上に情報を加えられたことで価値を生む。建築で言えば、素材であれば単なるコンクリートの塊になってしまうものに対し、設計情報を加えることで形となり、建築物となるのと同じことだ。
 これは設計図の完成でも同じこと。単なる紙に、設計という情報を加えることで価値を生み出している。製造業や建設業であれば、それが製品や建築物という形となるが、サービス産業であれば、付加価値などとして認識されることとなる。

情報量の詳細化

 ところで、この情報であるが、製造業と建設業で決定的に異なることがある。製品はINPUTされたモノに対して情報を加えることで、より多くの情報が付加された形でのOUTPUTとなるはずである、つまり、情報が加わることで、製品の価値はスパイラル式に向上するはずである。さらに、INPUTとOUTPUTの間で付加される情報は完結するはずである。そのため、情報の修正は、価値の減少や価値の再構築のために費用の増加をまねくはずである。
 このような観点から製造業を見てみると、設計情報はすべての要求を分析したうえで、設計段階で完結し、完璧な設計図をもとに生産を行っており、できる限り設計変更が生じないようにしている。

建設業は実は伝言ゲーム?

 それに対して建設業では、設計情報が設計段階で完結できず、あいまいな設計図をもとに生産情報が加えられ、建設物として構築していく
 ここで、最初の伝言ゲームに戻ってもらいたい。伝言ゲームの結末は、最初の文章とまったく異なる文章で終わることは、よく知られたところである。建設業も伝言ゲームになっていないだろうか。
 はじめのプロジェクト要求を設計情報とする過程で、すでに何らかの欠落が生じ、その後、あいまいな設計情報を受け取った施工者が生産情報を作成し、そのあいまいな生産情報を修正しながら施工される。そして、最後には当初の発注者要求とまったく異なる建設物として完成することも多い。それは、まさしく伝言ゲームのひとつではないだろうか。

伝言ゲームをコントロールするには

 それでは、伝言ゲームをコントロールするにはどうすればよいのか。
 答えは簡単。2つある。
 伝言ゲームに参加するそれぞれの者がそれぞれの段階における情報をきちんと完結すること。もうひとつは、情報を一貫してコントロールし、全体のプロセスを検討することである。つまり、各自の適正化を図ることに限界があるのなら、全体の最適化を図るために、プロジェクトマネジャーを設置することだ。
 建設プロセスを情報のやりとりという観点から、今後も見直していきたいものだ。
 いずれにしても、建設プロセスが「伝言ゲーム」とならないよう、プロジェクト参加者の配慮が必要なことは言うまでもない。

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