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未来の建設業を考える:建設論評「森に学ぶ環境対策」(2021年12月19日)

炭素を固定する役割を担っているのが森林資源

 環境に大きな影響を与える地球温暖化。その主要な要因である二酸化炭素(CO2)を吸収し、炭素を固定する役割を担っているのが森林資源だ。その活用がいまこそ強く求められる。

「木」にまつわる話題

 そこで、今回は「木」にまつわる話題をいくつか紹介したい。

門松

 正月と言えば、「門松」。「松」は寒い冬でも青々とした常緑高木で、緑をたたえ長く生き続ける姿が「めでたさ」や「長寿」につながる。「竹」は寒い時期でも色あせず緑を保つ強さから、「志を曲げない心」、「成長力」につながる。まさに正月飾りの門松は、生命力、不老長寿、繁栄祈願のためのものだ。門松の歴史は、平安時代にさかのぼる。「小松引き」という長寿祈願のための宮中行事がもとになったと言われる。

クリスマスツリー

 年末の恒例行事、クリスマス。クリスマスツリーは、常緑針葉樹の「樅(モミ)の木」。モミの木が、冬でも緑を保つことから、生命の強さや永遠であることを願い、用いられたそうだ。ただ、クリスマスツリーはキリスト教とは直接関係がないそうだ。キリスト教以前の古代ゲルマン民族の「ユール」という祭りで使われていた「樫(かし)の木」が、クリスマスツリーの原型と言われる。欧米でもクリスマスツリーを飾る習慣は19世紀中ごろから始まったとのこと。日本では、1860年のプロイセン王国公館が最初で、1886年12月7日に明治屋が、横浜でクリスマスツリーを飾った記録がある。日本では、毎年12月7日を「クリスマスツリーの日」としている。

檜(ひのき)

 伊勢神宮の20年ごとの式年遷宮に使う木材「檜(ひのき)」。内宮・外宮の正宮を始め14か所の別宮や宇治橋などの造り替えに用いられる。その総数はなんと1万本。使われるヒノキも、長さ5.4m、末口(小さいほうの木口)直径46cmの節が少ない丸太が求められ、樹齢は100年を超え、中には長さ11mとい400年以上の巨木も使われる。
 一方で、式年遷宮で正殿や別宮に使われたヒノキは、一片たりとも無駄にしないという精神で、地方の神社における建て替えや修繕のための木材として再利用されている。
 これらのヒノキは、もともとは伊勢神宮の背後の山である神路山・天照山・神垣山から調達してきた。しかし、これらの山の木材が不足したことから、三河や美濃へ移り、現在では、旧尾張藩が植林した長野県木曽谷の国有林から調達している。一方で、伊勢神宮では、200年後に、半永久的に遷宮用材をすべて自分たちの森から供給できる体制づくりをめざした植林事業「神宮森林経営計画」を大正時代に策定し、もとの山をヒノキの森として取り戻す計画を進めている。

木を大切にするこの日本の文化

 日本の国土面積38万haのうち森林は25万ha。つまり、日本の国土の約7割は森。先進国の中ではフィンランドに次いで2番目に森林率が高く、世界でも有数の森林国の日本。環境対策は目先の利益や取引ではなく、100年、200年の計で考えるべきことだ。ぜひとも、木を大切にするこの日本の文化で、世界に冠たる森林資源の活用により、新たな環境対策を打ち出したいものだ。

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