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未来の建設業を考える:「PFIと性能発注」

某有名国立大学のトイレ事情

 東京都内の国立大学の前を通ると、新築計画の看板が掲げられており、「たてもの(建設工事)」花盛りの様相を呈している。一方で、そのそばの足元をみると、現存建物の老朽化はかなり激しいものがある。端的に表れているのが、大学のトイレであろう。研究に直接役立たない施設であるため、清掃が当初1日ごとであったのが、2日おきになり、今では3日おきになっているそうだ。その結果、北京の公衆トイレでは、そのグレードにより三ツ星などの「星」がついているが、留学生に言わせると、「日本の大学のトレイは星もつかない状態だ」とのことだ。
 これらの状況は今後、改善されるのであろうか。

新築よりも維持保全市場に

 ひとつは、新築よりも維持保全市場に再度、目を向けるべきであろう。一方で、建設の段階から維持保全の考え方を導入することも、その方策である。

PFIにおける「要求水準書」

 具体的な解決策はPFIであろう。しかし、PFIプロジェクトによって、より良い解決が図られるのだろうか。
 あえて苦言を呈するなら、PFIにおける「要求水準書」の多くが性能表記になっていないため、十分に事業者の創意工夫が反映されないのではないか、と危惧(ぐ)している。
 たとえば、大学PFIの清掃業務について、某大学では、「1日1回、床の塵等を篇(ほうき)又は真空掃除機で取り除く」として、従来の記述的仕様(方法仕様)の要求書となっており、事業者の自由な発想の余地がない仕様書となっている。理想的には、求められるサービス水準、たとえば、「トイレの床はきれいであること」とし、このままでは、クリーンルーム並なのかどうか判断できないため、定量基準として、「ここで言う『きれい』とは、部屋の中の1平方㍍に1㍉以上のごみが落ちていないこと」などのように具体的数値を盛り込んだ基準を決定しておくことが必要である。目的を明確化することで、ある業者は掃除ロボットの活用により人件費を削減したり、または、汚れがつきにくい材料をあらかじめ設計段階から導入したりするなど、創意工夫の余地が生まれる。

性能仕様とは

 性能仕様とは、①要求している成果物の明確化、②条件・基準との合致、③確認または実証することが可能、④不必要な手続(プロセス)の排除、が条件とされる。性能仕様を取り入れるためには事業目的を明確化し、方法ではなく、あくまで求めるサービス内容・水準を明記しなくてはならないはずである。
 改めて、発注者が性能仕様の在り方について認識することが必要であると思う。

きれいなトイレが提供されるよう期待したい

 そのためには、PFIにおいて単に金銭的な価値(VFM=費用対効果など)を算出するだけでなく、技術者や専門家のアドバイスに基づき、最大の事業効果を得られるような性能仕様に羞づく要求水準の確定が必要である。
 すべてを性能仕様とすることは難しいと思うが、代替案に期待する発注方式やPFIでは、少なくとも従来発注とは大きく変えた、発注者の頭の切り替えが必要であろう。
 教育産業の顧客である学生に対し、きれいなトイレが提供されるよう期待したいものである。

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