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未来の建設業を考える:「生産BIMとFMBIM」(2021年5月10日)

建物の管理や保守

 建物の管理や保守にどれくらいの手間がかかるか、みなさんはご存じだろうか?
 建物は、柱、梁、床、壁、天井、電気機器、空調機器、防災機器などから構成されている。1万㎡の建物であれば、目視できる数は平米あたり5点から7点程度であるので、建物全体では、5万から7万点を維持管理しなければならない。建物を維持管理するためには、清掃、警備、保守、修繕など、さまざまな活動が必要だ。たとえば空調機だけでも、点検、フィルター交換、保守、測定、修繕などの「管理」や「保守」が必要となっている。
 これまでは、人により、維持・管理してきたが、これから少子高齢化や熟練者の減少もあり、一方で、各種ITセンサーの高度化、低額化により、人に代わってITが管理する時代になりつつある。
 7万点もの数を管理するためには、明確でわかりやすい情報を提供する必要がある。そのためには、建物や機器の随所に設置された各種高度センサーとその場所をむすび、故障の原因や必要な定期修繕を的確に指示できる「BIMデータ」が必要不可欠だ。

「生産BIM」と「FMBIM」

 ただ、建築で用いられる「生産BIM」と維持管理で用いられる「FMBIM」では、その目的が異なる。

「生産BIM」

 「生産BIM」は設計、施工を行うための生産情報をオブジェクトの属性とし、設計から施工にかけて情報の密度を高め、設計と施工の共通の基盤・情報により、部位や機器を特定しながら、建物を竣工することにある。したがって、最終的な生産BIMのデータ量は相当膨大で、詳細なデータを含む。一方で、FMBIMは建物の資産管理、維持管理を対象とし、部屋の大きさや、モノ・機器の特性や大きさが分かればよく、詳細なデジタルデータは不要だ。

「FMBIM」

 BIMデータは、BIMモデルを構成するオブジェクトの詳細度合いを「LOD(Level of Development)」で表すが、「生産BIM」はLOD400程度(ワッシャー、ナットなどパーツも含めてすべての部材が表現可能)と言われるが、 「FMBIM」ではLOD300程度(正確なサイズ、場所、方向性をもった主要構造部材が表現可能)で済むといわれる。
したがって、生産BIMのモデルを使ってFMBIMモデルとするためには、生産BIMのオブジェクト情報にFMBIMで必要な情報を加え、一方で不必要な情報を削除することだ。

BIMの目的の違い

 それぞれの求めるBIMの目的の違いを把握したうえで、生産BIMとFMBIMを相互連携させることだ。
 FMは、企業が施設資産を効率的に管理し、無駄のない管理を促進するための手段だ。建物は多くの資産で構成されており、完成後は徐々に劣化する。このため、メンテナンスを行い、常に正常な状態に保つことが求められる。FMBIMを用いることで、膨大な量の情報を整理し、ITを用いた数理統計処理やAIを用いた人工知能の活用により、経営者が自身の建物の状態を正確に把握し、それを評価し、劣化を予測することが可能となるはずだ。的確なFMの実施により、資産の劣化を防ぎ、経営を成功に導くことができる。
 さらには、個々の建物におけるFMBIMの活用を、不動産や都市におけるデジタルデータの活用につなげ、日本におけるより良いIT社会の構築に役立てたいものだ。

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