【エッセイ】大黒堂の思い出
先日銀座を徘徊する機会が有った。西日が優しく街を照らしていた。うら若き淑女が俺を追い越して通り過ぎた。これから高級クラブにでも向かうのだろうか。ふと空を見やると「ぢ」の文字が目に入った。ヒサヤ大黒堂の看板だ。赤くねちっこいそのフォントを目にしたとき、俺は反射的に親父のことを思い出していた。
俺の親父は学生時代スポーツマンだったらしい。野球、バレー、空手などのサークル活動に精を出し、良く飲み良く食べる若人だった。
就職後は良く飲み良く食べる習慣だけが残り、結果順調に肥え