路地裏太郎

駄文をしたためます。

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【エッセイ】爺さんが失踪し妹と絶縁した話 その1 

 M山さんは俺が社会人になってから知り合った友人である。ぽっちゃり体系につぶらな瞳を持ち、物腰は柔らかい。一方で体毛は濃く、前頭部は枯葉剤が散布されたような有様になっており、彼の体内で分泌されているテストステロンの荒ぶりを感じずには居られない。    聞けば二十歳前後から頭髪は抜け始め、風呂場の排水口には大きめの毛玉がしばしば発生したと言う。  ある日M山さんが入浴後、毛玉掃除を忘れたことがあった。その後に当時同居していた認知症の爺さんが入ったのだが、なかなか爺さんが風呂から

    • 【エッセイ】大黒堂の思い出

       先日銀座を徘徊する機会が有った。西日が優しく街を照らしていた。うら若き淑女が俺を追い越して通り過ぎた。これから高級クラブにでも向かうのだろうか。ふと空を見やると「ぢ」の文字が目に入った。ヒサヤ大黒堂の看板だ。赤くねちっこいそのフォントを目にしたとき、俺は反射的に親父のことを思い出していた。  俺の親父は学生時代スポーツマンだったらしい。野球、バレー、空手などのサークル活動に精を出し、良く飲み良く食べる若人だった。  就職後は良く飲み良く食べる習慣だけが残り、結果順調に肥え

    【エッセイ】爺さんが失踪し妹と絶縁した話 その1