【詩】恥の世界旅
風が吹いているね
私のことを何も飛ばしてくれない風が
吹いているね
存在するだけで恥ずかしかった
笑われてる気がして
穴に入ったって
いつかは出なきゃならない
風が吹いているね
私なんかいっそ
飛ばしてくれたらいいのに
私の恥ずかしい部分だけ抜き出して
飛ばして
私の恥ずかしい部分が
空を旅する
太平洋に出て
フィリピンを眼下にゆうゆうと
インドネシアの小さな島に着くと
ひと休み
再び風に乗り
インド洋の海面を
トビウオと肩を並べて跳ね進んでも
心はおどらない
いっそ凍ってしまいたいと
南極点を目指す
けど、道を間違えて
アフリカ大陸上空
広大な大地を歩く象の群れや
見知らぬ様々な民族の暮らしを眺めて
(このくらいですでに
恥ずかしかったことを忘れはじめる)
そのまま大西洋に抜けて
ブラジルの熱された森林地帯に
目が眩み
再び太平洋に出ると
ふと
私が恋しくなった
東からしずしず帰ってくる
私の恥ずかしい部分
(もうその時点では
それほど恥ずかしくもない気がする)
別に追い出したわけじゃなかったし
風に飛ばされてほしいなんて思ったことを
むしろ申し訳なく思って
「おかえり」と
出迎える
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?