診療体制から病院を選ぶ

筆者は長期入院患者で、3つの病院を転々としてきた。そこで感じたのは病院毎の診療体制の違いだ。本稿は、筆者が体験した診療体制を紹介し、病院選びの参考にして頂くことを目的としている。

筆者が最初に入院したのは郊外の国立病院で、次に私立の大学病院に転院し、そして現在は高名な都心の病院に入院している(便宜上、順にA病院、B病院、C病院とする)。

A病院 主治医1人体制
A病院の診療体制は大変わかりやすかった。主治医が1人いて、その主治医が治療方針の決定、診察、回診、IC、処置の全てを執り行う。もちろん治療方針については裏でカンファレンスでしっかり他の医師らに意見を仰いで決定していたようだ。このカンファレンスでのチェック機能さえ十分に機能していればこうした診療体制は患者としては安心できた。

メリット
・責任の所在が明らか
・日頃診ている医師と意思決定者が同一なので、一貫した医療を期待できる
デメリット
・主治医との相性が悪かったら最悪

B病院 主治医3人体制
B病院の診療体制は複雑だ。大学病院ならではだと思う。3人の内の1人はその分野では有名な大学教授で、偉い人。とにかく偉かった。あとの2人はその部下とさらにその部下だ。
大学教授が治療方針を決定する。もちろんカンファレンスもあるが高名な大学教授の方針がそれでどれだけ変わっていたかは不明だ。その治療方針をICで説明するのも大学教授だがそれはまるで大学の講義で、時間が90分程に及んだ時は出席者は皆眠そうにしていた。このお偉いさんに会えるのは週に1回のいわゆる教授回診(他の医者をたくさん連れてぞろぞろ院内を廻るやつ)の時だけで、滅多に会うことができなかった。
朝の回診や採血を担当するのは次に偉い医者。裏で薬剤の調節も行っていた。この人には高頻度で会うことができた。ただし、朝6時とか寝ぼけている時間だった。
処置を行っていたのは一番下っ端の医者。回診にも来ていたので患者との距離が最も近かったのはこの医者だ。この下っ端には筆者の質問に対して何度も誤った回答をされ苦しめられた。

メリット
・相性の良い医師に当たる確率が上がる
デメリット
・治療方針が独断的(になりそうな気がする)
・一番偉い医師に滅多に会えない
・責任の所在が不明確(各医師の裁量の範囲が不明)
・3人の医師の意思疎通が図られておらず、患者を混乱させる

C病院 主治医1人担当医1人体制
C病院は主治医は1人だが、主治医とは別に担当医なるものが存在する。主治医は治療方針や薬剤を決定し、回診も行う。この点はA病院と同様だ。担当医には若い医師が任される。担当医は処置を行ったり、回診も行う。熟練の主治医と相談しながら日々の患者の病状を見極め、医師としての能力を高めていく仕組みだ。

メリット
・責任の所在が明らか
・日頃診ている医師と意思決定者が同一なので、一貫した医療を期待できる
デメリット
・担当医の経験が浅いため処置がちょっと怖い

3つの病院について自身の経験を踏まえ論じてきたが、個人的にはA病院の主治医1人体制が最も患者として安心できた。B病院の主治医3人体制にはほとほと苦しめられた。大学病院がどこもそうかは分からないが、この診療体制は筆者がB病院から転院することを決めた1つの要因だ。C病院の主治医担当医体制は、若手医師を育てるという目的が強く感じられる。患者と病院、双方にメリットがある。功利主義に立てば、最も良い制度なのかもしれない。

以上のように、病院によって診療体制は大きく異なる。入院や転院、セカンドオピニオンの際にはその病院の診療体制について踏み込んだ質問をし、自身に最適な病院を選定することが病気の治癒に向けての重要な要素であることは間違いない。

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