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地元の歴史や伝承ってどこにあるの? ~郷土史の調べ方~

学校の課題、創作のネタにするため、暇つぶしのため、散歩先の物色、ちょっとした郷土愛、様々な理由から郷土史に興味がちょっとある人というものは、私の回りにもいるのではないでしょうか。

中央図書館に行こう

地元の歴史を調べる場合はまずは図書館に行きましょう。自治体の図書館には必ずと言っていいほど郷土史のコーナーが設けられており、ここに郷土史の本がまとめられています。

この際は「中央図書館」に行くことをオススメします。分館の場合、郷土史の資料が閉架に入っていて自由に取り出せなかったり、所蔵されているのが主要な本だけということがままあります。

新宿区立中央図書館。

なお、調べたい地域に居住していない場合は、相互貸借制度を使って取り寄せる、都道府県立図書館や大学図書館に行くという方法があります。

しかし、これらは資料と対面するまで少々時間がかかったり、必要な資料に巡り合えなかったりします。

特に自治体がHPで公開している有償刊行物リストは「現在」頒布しているものだけが掲載されている場合が多く、ネットの情報から本を探すのも結構難しいものです。

郷土史の棚についたら

歴史学における調べもので頼る辞典

郷土史の棚に行く前に、歴史を調べる際に頼るべき辞典を紹介しましょう。

まず基本となるのが『国史大辞典』です。日本最大級の歴史百科事典であり、日本史学の学生は知らない歴史学用語にぶつかったときにとりあえずこれを引きます。

次に『日本国語大辞典』。日国は日本最大級の国語辞典であり、昔の文献からの用例も集めています。古い文章を読むときや専門的な文章を読むとき、見慣れない単語を見つけたらこいつの出番です。

そして『世界大百科事典』『日本大百科全書』。これはどちらでも構いませんが、所謂何でも載ってる百科事典ですね。

なお、これの辞典は有料のインターネット百科事典であるジャパンナレッジに収録されており、数多くの中央図書館や大学図書館のPCから利用することが出来ます。『日本歴史地名体系』や『角川日本地名大辞典』のような地名辞典も収録されているので便利です。

『○○市/区/町/村史』

郷土史の棚からまず引っ張り出すのは、地域の通史を記した『○○市/区/町/村史』です。これは一般に通史編と資料編に分かれています。

通史編には古代から現代に至るまでの大まかな地域の歴史がまとめられ、資料編には様々な史料が活字化されて収められています。

この後読む資料も基本的にはその時代時代の地域の様子が分かっていることが前提であり、もしそうでなくとも知識があれば有機的な理解も可能となります。

なお、資料編の史料は毛筆や石碑の文字を活字に起こしただけで、現代語訳されていることはあまりありません。近世の史料を読みたい場合は、書き下しの作業が伴います。いきなり候文や漢字のみの文章を解読するのは骨が折れます。

リーフレット・図録・研究紀要

多くの自治体及び公営博物館は通史編以外にも特定のテーマで郷土史の本を刊行しています。

よくある例としては、

  • 旧名主・庄屋家や代官所、寺社、学校、市長村長などの日記や資料を活字化したもの

  • 地域特有の建築や産業を解説したもの

  • 地域の偉人を解説したもの

  • 地域の史跡の調査報告

  • ちょっとした逸話や名所をまとめて解説したもの

があります。

これらは初学者向けのリーフレット・図録として読みやすいものもあれば、研究紀要・史料集としてまとめられている場合もあるので、常に初心者がとっつきやすい形とは限りません。

『○○市/区/町/村教育史』

自治体は近世から近現代の地域教育の歴史をまとめた『○○市/区/町/村教育史』を編纂していることがあります。

教育といっても寺子屋や小学校についてのみまとめているわけではなく、戦前の青年団などの地域全体の教育まで及んでいるので、当時の子供たちを取り巻く環境を知りたい場合は、これらの本を手に取ってみてください。

『○○都/道/府/県/史』、隣接自治体の資料

都道府県史や隣接する自治体の資料を読んでみるのもよいでしょう。自治体史は当該自治体についての記述が主で、隣接自治体、あるいは所属する郡について書いていることはあまり少なかったりします。

しかし、地域の産業や交通、生活は、何もその自治体だけで完結しているわけではありません。県政資料のレベルから出ないと見えてこない地域の特色や関わり・役割が見えてくるはずです。また、都道府県が担っているような行政機能に関する歴史を知りたい場合は、都道府県史を紐解くほかないでしょう。

『○○郡史』を始めとした大正・昭和期の資料

大正十五年・昭和元年まで、近代日本には地理的区分ではなく地方自治体としての「郡」(町村<郡<県)が設置されていました。その内実についてはさておき、教職員の互助や地域・教育の研究機関として郡の教育会が組織され、彼らが郡史を編纂・刊行する場合もありました。

旧郡が市域になったりする場合など、郡の地域的一体性は見逃せない。

もちろん、郡以外にも旧東京市時代の区など、今は存在しない自治体が自治体史を刊行していることはありますし、歴史の長い市町村はその過程で二度三度自治体史を編纂していることもあります。一度調べる自治体の合併の歴史を見てみるのもいいでしょう。

東京15区。

ただ、これらの古い自治体史は相応に古い文体や活字で書かれており、現代人が読むには骨が折れることがあるでしょう。ただ、大正後期や昭和期なら読めないこともないはず…。

博物館に行こう

23区の場合は港区など、自治体によっては博物館や郷土資料館を運営していることがあります。そのような自治体を調べる場合は、こちらを訪れるのもお勧めです。

館内に閲覧室がある場合には、中央図書館と同じく自治体史の本が読める場合がありますし、特別展の図録はこちらにしかないこともあるかもしれません。

なにより博物館の魅力は、発掘史料や再現展示などを見たり、触れたりできることにあります。

また、地域によっては博物館・郷土資料館とは別に、公文書館を構えており、古い行政資料などを収めていることがあります。調べる地域の文書管理について調べてみてもいいかもしれませんね。

地元を歩こう

地域によっては教育委員会が寺社の境内や道端に歴史解説看板を設置していることがあります。寺社の境内にはその由緒が書かれた案内が設置されているはずですし、地域の出来事を記念・祈念した石碑が残されていることもあるでしょう。

ただ、後者の場合は候文や漢字のみの文章が出てくることもあるので、雰囲気を楽しむに留まるでしょうね。

(おわり)


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