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たそがれ


学校からの帰り道を 変えてみた 高2の秋
登り切った坂からは 僕の町が全て見えた
ブレーキ握りゆっくりと降りると 風が涼しく優しかった

冬の初めの強い雨に 濡れながら家路を急ぎ
背中越しに名前を呼ばれ 振り返ると彼女がいた
「入ってく?」と傘を指さしたけど 「大丈夫」と声を出した

中ニの頃 隣の席になり
好きな本と音楽の話をした
今も同じクラスだけど 
目の合う力が強くて
話しかけられずにいた

雨に打たれて風邪をひいて 3日休んだ帰り道に
自転車押して坂を上ると 彼女が立っていた

西の空には グラデーションの黄昏
青と茜が にじみ合っている
名前も知らない家に 明かりが灯り
坂を下りながら途切れ途切れに 2人 話をしてた

高3の春 坂の上で 彼女が待っていた
話の途中に 「別れたの」とだけ言って苦笑いをしてた

中ニの頃 隣の席になって
話していたことと同じ話してた
今の君は僕の知らないこと抱えているのを
街の灯を見ながら教えてくれた

文化祭で歌った夜 素敵な歌だと微笑んでくれた
一度だけ一緒に映画を見た帰りの電車で できた歌を

西の空にはグラデーションの黄昏
黒い帳が少しづつ落ちて
灯り始めた街路灯の頼りない白さに
照らされてた君の髪と頬とまつ毛を 今も思い出す

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