見出し画像

夜のバスはロマンチック

夜の町を走るバスとすれ違った。

車内の人はまばらで、窓の外を眺めたり、音楽を聞きながら目を閉じていたり、連れ合いと話していたり。

車内は控えめの照明で、ぼうっと浮かんで見える。

浮世離れして見える光景なのに、行き先を示す電光掲示板は、パキッと輝いていて。
その実在する地名を見て、確かに現実なのだと、安堵した。

これから家に帰るのか。
誰かに会いに行くのか。
どこかへ行くのか。

お客の数だけ、金曜日の夜がある。
流れる車窓の外、明かりの数だけ、今日を終えていく。

私は小さな軽自動車で、家に帰る。

昨日の残りのコンソメスープと、
安かった鶏胸肉をどう調理するか考えながら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?