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20230814 浅間温泉(松本市) #風景誤読

▼前日の松本あるき

二日目は、愛読書『松本の本』(第3号、特集=浅間温泉ものがたり)を片手に、シェアサイクルを走らせて浅間温泉へと向かった。

いくつかの語りを携えて歩く。

芸者小路

見番の斜め対面にあったのが、芸者衆が使う温泉の「睦(むつみ)の湯」です。昭和の初め頃にはあったと思うけど、置屋が湯仲間になってつくった温泉です。だから別名は「芸者の湯」です。(中略)
宴会がはじまる前の4時頃がいつも混んでいました。男湯と女湯が分かれているのだけど、女性が多く使う温泉ということもあり、女風呂の方が大きいことが特徴ね。

睦の湯

道の陰

「(生家の)隣の家は踊りの師匠。向かいの家は三味線の稽古をつける家で、家の前の路地は昼間も三味線の音がしていたね。半玉(見習いの若い芸者)を見掛けたり、夕方になると支度をしたお姐さん方のお出掛けがあったりで、賑わっていたね」

とおく、すこし急ぐ足音



閉店のお知らせ

6月末日をもって鳥居
プロパンを閉めさせて
頂きます。長い間
ご愛顧を頂きまして
誠にありがとうござい
ました。感謝申し上げ
ます。   鳥居プロパン
    代表
      鳥居國男



からかぜあんうんみずのねの
さかしたわしわしわーしわし

源泉から生まれたてッー

私は体質的にお酒を飲むことができなくて、お客さんからの酌を断ることができずに、周りから分からないように着物の裾にこぼしていたの。

建付けの悪い引き戸をちからいっぱい開けてみると、てぃれてぃれてぃれてぃれ~♫とベルが鳴って、奥から「いらっしゃいませー」の声が近づいてくる。もうここで何千回と繰り返された風景。

「2,3日はもちます」という浅間小菊を6個買ってみる。ひとり八王子に暮らしている祖母のことを考えている。

平和堂。戦前はしんこ餅を作っていた

「しんこ餅は、2回蒸したりして手間がかかる菓子でね。くっつきやすくて、手に鬢付け油をつけながら作ってね。だから表面は指紋だらけだよ。
これに使う米粉は、この前の道の先にある山本の精米店で粉にしてもらったもので、かつては水車小屋があって、そこで米をひいていたよ。」

宮島商店で購入した「しんこ餅」
『松本の本』(38頁)をバックに



湯花の遊ぶ
空中温泉
からころからこ
からからこ からこ
待合室にピアノ
ドライヤーと扇風機
知らぬ 知られぬ
体重計のおおはしゃぎ
下駄を履かせて
川はきぬ擦れ


帰りがけ、あいがとうございましたと声をかける。すると、ご主人がわざわざ出てこられ、
「はい、お駄賃」
と、ミルキーを1個、渡してくださった。

廃旅館のちかくの日帰り温泉にはいる。浴室に照明はついておらず、雲がかかると、深く暗くなる。



黒糖ラムミルクを飲む。ステンレス氷が入っている。間違って飲み込んでしまいそうで怖い。こんな温泉街のはずれで齋藤慶典『思考の臨界』などを目にするとは思わなかった。

ある時、度々学校で居眠りするものだから、心配して学校の先生が吉田屋に来たことがあるの。芸の練習で疲れていたのでしょうね。それで先生は私の習い事のことを知ってびっくりしていました。

いりぐちでぐち
芸苑協同組合
わたしはそこで手紙をながす
もうなんども読んだから
すべておぼえている
浅間線、篠ノ井線
朝までそらで
そらでうた
うたいながら
わらいながら
そこらの沢にながしてしまう


【引用】

  1. まつもと一箱古本市実行委員会『松本の本(第3号)』2022年9月

    1. 「芸とともに生きて…。」(文=渡辺宏、語り手=深津京子)5頁、7頁、8頁

    2. 「石州さんのみた昭和の松本・浅間温泉」(文=太田岳、語り手=石川欣一)28頁

    3. 「しんこ餅と浅間温泉街の菓子」(文=道下千鹿、引用箇所語り手=岩腰平八)39頁

  2. 飯田屋別館」『線翔庵日記』2013年5月(最終閲覧日:2023年9月16日)


[たかしな]



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