読書感想#2 ”時間は逆戻りするのか”
本:時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて
著:高水祐一 氏
出版:㈱講談社
この本は、おすすめ致します。(大声)
この本は、私が関西に転勤が決まった時、移動時間の暇つぶしで手に取った本でした。(時間を逆戻りしたかったのだろうと、思います。。)
この本は、“時間は逆戻りするのか”という問を考える方々、最近の科学での時間の考え方を紹介する本でした。
この時間は逆戻りするのかという疑問が生まれた背景や、その問に真っ向から立ち向かう方々、その思想を紹介,解説する内容でした。私にとっては、熱力学の歴史を大変わかりやすく扱ってくれ、とても良書に感じました。
熱力学。この学問は産業革命の時代から急速に発展していき、現在はマクロな学問からミクロな学問へシフトチェンジしている、そんな印象を持っています。(何様)
そもそも、高校の頃も、大学の頃も、このような学問を取り扱わないといけないのか疑問でした。化学平衡や、無機,有機などは、この世界にその対象のものがあるから科学する気持ちもわかります。なぜこの反応が起きるのか、反応は何が律速しているのか、どういう仕組みなのか、”これを知って何が解き明かされるのか”などなど、目に見えるものを取り扱うからこそ、疑問も、興味も湧きやすい。私はそうでした。
けれども、熱力学は異なります。目に見えないし、規模も大きい。その割に単純化した考え。これまでの科学(化学)とは異なった分野でした。
そのくせ、熱力学第1法則だの、第2法則だの、名前は仰々しく、また、この世界そのものを対象にした法則で、一体なんなのだ、と感じていました。
そして、この本に出合いました。
この本は、まず、熱力学とはどんな分野かを、紹介してくれます。
そして、丁寧に熱力学第2法則(エントロピー増大の法則)を紹介してくれました。神でした。
そこから、相対性理論を紹介し、やがて量子分野での時間のとらえ方を説明していきます。
この本には数式も出てきますが、それがわからなくても、読み進められるようになっています。(式を言葉で説明してくれます。これがとても良いです。)
この熱力学分野(産業革命以降)の化学は、日進月歩で進んでいくのはなんとなく感じていました。そして興味を持っていました。(今も)
色分野でいえば、これまでムラサキガイの貝殻でしか色素を抽出できなかった”藍色”が、ジアゾカップリング反応の発見で、人工的に”藍色”を作ることに成功しました。それから、色を作る資本主義競争が始まっていきます。。
科学の中で人類に貢献した反応の1つと、よく言われるハーバー・ボッシュ法もこの時代に生まれました(正確には産業革命から約50年後、です。)
高温,高圧下という厳しい条件を実現させ、アンモニアを合成させる反応でした。アンモニア(NH3)の生成により、肥料を人工的に作ることが可能になりました。(肥料には窒素Nが必要)そのため、植物が生息できない荒廃した地域に、食用の植物を栽培できるようになりました。石炭と空気でパンを作る反応と比喩されるようになります。この反応の発見が、食糧を増やすきっかけとなり、人口増加につながったと考えられています。
けれども、このアンモニアを、火薬に精製させ、第2次世界大戦にて爆薬に利用されました。この反応は、人類の人口増加につなげ、人類を多く殺めた反応、と言われています。。
そして、有名な相対性理論の考案もこの時代でした。
相対性理論の考えはGPSなどに利用されているみたいです。理論の使い方などは聞かないで、。
そんな、そんな熱い時代に出てきていたのが、熱力学でした。
産業革命時に生まれた蒸気機関から、熱力学は飛躍していきます。。が、、
その歴史を知ることは、私はありませんでした。
理系にいると、ぽっと現れ、理解を置き去りにしていく謎の程度
エントロピー(乱雑さ)
熱力学に出てきたかと思いきや、化学にも物理にも、とにかくいろんなところに出てきては、よくわからない、という感情を抱かせにくるやつ。
彼が時間の矢として、描かれ、生きることはエントロピーを減らすこと、と彼(エントロピー)に出会ったが最後、思考の中心に居座られてしまう、そんな魅力あふれる彼。
熱力学第2法則とは、(閉鎖系であれば)エントロピーは増大する。という法則です(大雑把です)
この法則に沿った考えをすると、この宇宙という非常に大きなくくりの閉鎖系を考えれば、この宇宙全体はエントロピーが増え続ける、という考えができます。ここから、エントロピーの増大の程度が、時間の流れを表している。と考えられ、エントロピーを時間の矢と比喩しているのです。
しかし、最近になって、量子(非常にミクロな粒)の世界において、
このエントロピーが減る瞬間をとらえたのです。。
これまで、エントロピーが増えることは絶対と考えられてきました。
それが、量子には成り立たない。
ここで、時間の定義が揺らぎます。(量子だけに)
1+1=2は、2=1+1とも書き換えることができます。
書き換えることができる理由は、1+1は2にもなるし、2は1+1にもなりうる、いわゆる対称性があるからですよね、
自然界では、磁石のS極,N極 性別のオス,メスなど
対称性をもつものは意外と多くあります。というより、おそらく対称性があるようにして科学は世界をとらえています。
この本では、”科学者は対称性を持たないものを気持ち悪いと感じる”
という感覚まで紹介されました。
時間はこれまで、矢のように一方向にしか進まない。この対称性を持たないことが、気持ち悪く感じるんですね
熱力学第2法則は、S≧0(S:エントロピー)と表され、理想状態であるときにはじめて(=0)が成り立つ式なのですが、減ることは考えられていないんですね。
なぜ一方向なのか、なぜ減らないのか
というところから、様々な科学者が量子世界にて実験を重ね、
ついにエントロピーの減少(時間が巻き戻ること)をとらえました。
時間は巻き戻らないことが時間たらしめるもの、ではありましたが、
時間が巻き戻ったとき、時間そのものの定義が揺らぐんですね。
という、感じで少し理系をかじった理系学生もどきの私目にもここまで言語化できるほど、わかりやすく書かれた本
それが時間は逆戻りするのか でした。
もし興味を持たれる方、いたら、ぜひ購入をお勧めします。
お読みして頂きありがとうございました。]
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