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バルザック 「ことづて」を読んで

みなさん、こんにちは。バルザックの「グランド・ブルテーシュ奇譚」の中に書かれている「ことづて」の感想を書いていきます。

あらすじです ※ネタバレを含みます
 私(男主人公)は旅をしており、馬車に乗ろうとしていました。しかし、お金に余裕がなかったので、風がよく当たる屋上の席に座ることに。すると、主人公より少しお金を持ってそうな青年が主人公の座っている、隣の席に腰かけました。青年は初対面にもかかわらず、主人公の話を笑顔で聞いてくれました。青年と話をしていると、お互いの価値観が似ていることが分かりました。その結果、すぐに打ち解け、和気あいあいと長い道のりを共にします。
 やがて、お互いの恋愛話に発展するようになります。主人公と青年は若いにも関わらず、35歳から40歳の年上女性がタイプらしく、主人公は40歳の女、青年は38歳の女を熱愛していると、お互いカミングアウトしました。次に主人公と青年のうち、どちらが彼女に愛を注いでいるか、自慢し合うようになります。青年の話を聞くと、主人公は自分より彼のほうが「彼女に愛されている」ことが分かりました。
 お互いの話に熱が入っていくうち、突然、主人公と青年の乗っている馬車が転覆してしまいます。主人公は転覆時、座席にしがみついたおかげで怪我はありませんでした。しかし、青年は転覆時、身の安全のためか、耕したばかりの畑のわきに飛び降りてしまいました。飛び降り方がまずかったのか、あるいはすべったのか、真相は謎だが、青年は倒れてきた馬車の下敷きになってしまい、瀕死の重傷を負ってしまいます。青年は虫の息をするとともに、彼が愛している40歳の女性に手紙を届けてほしいと主人公に頼みます。
 青年の使命を果たすため、その女性の家に行きます。家は大きく、女性はとある伯爵の妻であり、娘を持つ母親でもあったのです。女中やその女性の娘らしき少女の案内のもとで、家の庭に入ることができ、その女性と伯爵を見つけます。いざ本人を見て、主人公があたふたしていると、伯爵が近づいてきます。主人公は覚悟を決めて、持ち前のコミュニケーションと立ち振る舞いで伯爵に「奥様に用事がありますので、お願いします」という風に言って、なんとかその女性と話す機会を得ます。その女性は青年のことを言うと、ひどく動揺し、心配しました。その女性の姿を見て、主人公は「元気にしてますよ」という感じに噓をつき、青年が死んだことを言いませんでした。しかし、その女性の圧倒的な姿と口調が噓をつけない雰囲気が影響で、主人公はとうとう真実を言ってしまいます。それを聞いて、その女性はヒステリックになるとともに、その場から消えてしまいます。
 その後、伯爵は主人公を食事会へ誘いました。家の中にはご馳走が多く並べられており、伯爵夫妻、娘、来るはずだった青年の分、聖堂の会員たちの分があります。食事の前の「いただきます」をすましたあと「奥さんがいませんが・・・」と会員の一人が言います。伯爵は「すぐに来るから心配しないでください」と言いながら、全員の皿にポタージュを入れていき、自分の皿に入れた後、すぐに飲み干します。伯爵が何気ない顔で料理を食べていると、小間使いが「奥さんが見つかりません」と報告します。それを聞いて、主人公は嫌な予感がすると思い、その女性を探しに行こうとしますが、伯爵は何とも思っていないようで「待っていたら来る」と言って、主人公たちを席に座らせます。
 結局、伯爵と娘は家の中に残ったまま、主人公と会員たち、小間使いとともにその女性を探します。庭や池付近などをくまなく探し見つからず、途方に暮れていたところ、納屋から奇妙な声が聞こえてきます。その正体は、その女性でした。どうやら、干し草のなかに埋もれ、悲しみの叫びを押し殺していたようです。その後、その女性はベッドに運ばれ、伯爵と娘がいる家の中へ戻りますが・・・

感想です

まるで始まりが、居酒屋などの場所で一人で飲んでいると、その場のノリか、酒の酔いかなんかで、隣の席の人と意気投合し、話が盛り上がっちゃたという感じに近いです。それから「彼女、いるの?」的な恋愛話になっていきます。そして突然、青年が事故で瀕死の重傷を負い、青年の好きな女性に手紙を届ける展開になり、その女性に真実と手紙を届けるといったストーリーとなっています。青年とその女性が真剣に愛し合っているのは、読んでいくと伝わり、面白いと思います。しかし、私が面白いと思ったのは、伯爵の人間性です。その女性は身なりも上品で、美しくおしゃれをしています。それに比べて、伯爵はだらしない恰好で、田舎丸出しのように感じました。そのうえ、食べることが大好きで、医者から少々控えるようにと忠告されていますが、ポタージュを自分の皿に山盛りに淹れて、すぐに飲み干したり、その女性がいなくなった知らせを聞いても、食べることに夢中でした。娘にも笑われ、からかわれていますが、気にすることなく食べる、食べる・・・という感じです。伯爵は自分の妻よりも食べることを優先しており、夫としてどうなのかとツッコミたくなります。その影響からか、青年とその女性が愛し合っていることも、他人事のように思え、気付いていないかもしれません。伯爵はおそらく、何もかもが鈍感ですが「まあ、実際こんな人、現実にはいるよね」と思えてきます。伯爵を反面教師として、何か学べるところはあります。それに対して、主人公がその女性に対するフォローは、素敵だなと思いました。そのフォローとは、青年のひとふさの髪をその女性にあげました。その女性は青年の思い出の品が一切なく、今までの手紙も焼いてしまい、手元には何もない状態だったので、主人公のプレゼントに喜んでいました。こういったことを何気なくする主人公。その主人公に見習って、人に対して何気なく、無意識に気遣いをできる男になれるよう、努力していきます。

読んで頂きありがとうございます。

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