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"TheLEPLI"ARCHIVES-38/   DIANE ARBUSそして、LISETTE MODELとCOMME des GARCONS : 激しく生きた二人の女性写真家たち。/  2011春夏パリコレクションから;

初稿/2010年10月 3日記:
文責/平川武治:

今シーズンの巴里のコレクションはビジネス状況とその世界が生んだヴァニティな環境によって閉塞感が大きく感じられる。
そんな中でのこのブランドCOMME des GARCONSのコレクション論理は
正論であり、的を得た手法である。 
 今シーズンは、より激しく、何ものにも囚われない自己を中心とした自由と端正と厳格の日常性が生んだ強い美が感じられたコレクションだった。

 CdGブランドのコレクションはこの街の、この時期に見ると変わらずの
異端と異形を放つ。この”異端さと異形さ”。これが強く、大きければ大きい程にこの街へ来るそれなりのジャーナリストやメディアに強く評価される。
 その答えはこの街が培い、維持して来た生活の中の美しさと精神のバランスである、”ELEGANCE”というボキャブラリィーとの対峙作用が評論の論格となるからである。

”革新”/”Avant-garde"とは何か?
このコレクションを見て改めて、疑問に想い考え始めた。

 ”異端と異形”がそれを生む一つである事には変わりがない。
しかし、それだけでは”革新”/”Avant-garde”ではない。
そこには、何か未来を彷彿させ、訴える新しさのコンテンツと激しい心意気と悶えが在るはずだ。
 若輩者たちは自分たちの時代観からそのコンテンツに共感し、
その激しさと悶えを感じ取り自分たちも其処へ委ねる影響や新たな道筋を
求め,彼らたちが迎え来る時代の新しさへと通じる。

 今回のコレクションからも、これが僕には余り強く感じられず、
”異端と異形”という表層さが目立った。
 しかし、”革新”/”Avant-garde"も現代のようなPCをメディア手段とした”生活と造形”の基盤の時代性を背景に変質してしまったようだ。
そう、総てが”バーチャルな世界観へと”。
 
 最近のCOMME des GARCONSブランドのショーを見ていると
このデザイナーしか発せられない創造のボキャブラリィーとしての
見事で厳格な『”革新”/”Avant-garde"のアイロニィー』としか読めない。
 しかし、それは変わらず、誰よりも強く美しい。
失礼だが、このデザイナーの年齢を感じさせない総てが存在している。
これだけでも賛辞を贈る。
 そして、このデザイナーとブランドチームが持ち得た総力と資金を使っての創造力と集中力には恐怖さえ感じる。
 過去の自身の作品のアーカイブの再構築化とそこらから儲けた資金力のパワーの使い方である。
 しかし、残念乍ら、ここには明日を訴えるボキャブラリィーは聞き取れ
難かった。

 ショーの最後で種明かしが為されてしまったと感じた。
そこには僕の好きな写真家,Lisette ModelとDiane Arbusを見てしまった。
 ’40年代を代表する二人のユダヤ系アメリカ人女性写真家である。
最後にはダイアンの代表作品集"An Perture Monograph"を感じたのだ。
Diane Arbusが影響を受けた写真家がA.ザンダーであり、Lisette Modelである。

 ここ迄読むと昨年,2月迄、川久保玲が親しく近く付き合っている
ミラノの”10コルソコモ”のギャラリィーで開催された
写真展『Lisette Model and Her Successors』。そして、去年の秋から
今年はじめ迄この街、巴里のjeu-de-paume写真美術館で行なわれた『Lisette Model回顧展』を思い出す。

 この激しく自分の世界観時代を逆風として、
正直に強く生き抜いた二人のユダヤ人女性写真家たちのいぶし銀の様な
存在感と生き様に共感してのコレクションだったのであろう。

 ここに決して、”時代のVANITY"に溺れない川久保玲の真の姿を見た。

ありがとうございました。
文責/平川武治:
初稿/2010年10月 3日記:

 リセットモデル/
http://www.artphoto-site.com/story77.html
http://fashionjp.net/wnext/milan/mln00027.html
 リセットモデルとその後継者たち展/
「Lisette Model and Her Successors」
http://www.americansuburbx.com/2010/08/lisette-model-biography-jeu-de-paume-63.html
 巴里、jeu-de-paumeの展覧会

 ダイアン アーヴァス/
http://www.artphoto-site.com/story77.html
http://www.metmuseum.org/special/se_event.asp?OccurrenceId=%7BE9C11548-26E7-431C-9F83-03E1EBC758CD%7D
N.Y.メトロポリタン美術館で開催された展覧会。/3~5月 '05/"Revelations"


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