10年越しに頭のなかで1本の道が開通した

June 2018

月曜日
7時58分に大地震。テレビで見るシミュレーションのように、揺れるというより部屋ごと、がしゃがしゃとシェイクされる感じ。大変なことが起こった。貴重品や水、ラジオをリュックに詰めて、階段を駆け下り、バイクに乗って走り出す。携帯電話がつながらなかったため、近くの公衆電話で実家に電話して無事を確認。学校が避難所になっているのではと思って行ってみるが、とくに人が詰めかけている様子はない。道行く人はなんとなく戸惑っているようだけど、パニックになったり、大騒ぎになったりしている様子はない。自分たちも落ち着いてきた。ラジオでだいたいの状況もわかってきた。部屋に戻る。冷蔵庫が開いて中身が飛び出し、瓶類が割れてガラスが散乱している。上のほうに置いていたものが落ちたり靴箱が倒れたりしていたが、引っ越し直後でまだ乱雑な状態だったので、何が地震の影響なのかすぐにはわからない。落ちた壁掛け時計の針が地震の時刻で止まっていた。ガスも止まっているので、カセットコンロで目玉焼きを作る。コーヒーも淹れる。こんなときでも、ちゃんと朝食を手作りして用意しようとするのがFである。何気なくキッチンの上の戸棚を開けると、中のものが転がり落ちてきて危なかった。教訓。

火曜日
ピコピコを解約するか考え中。ガスの開栓時に思わず契約してしまった。8日以内ならクーリングオフできるが、この地震である。ガスが復旧していない地域があり、ガス会社は対応に追われているという。そんなときに解約を頼むのもなあという気持ち。そして、そんな災害があるなら、安全のため、ピコピコをつけておいたほうがいいのではという気持ち。あと、古い団地なので、どんな不具合があるかわからないから、念のためつけておいたほうがいいのではとも思う。でも、ひと月300円引かれ続けるのは、ガス料金全体の割合から考えても少なくない。おやつにわらび餅。わらび餅が似合う季節である。

水曜日
雨で一歩も外に出なかった。地上に降り立たなかった、と言ったほうが感覚的に近い。余震がかなり減ってきた。向かいの棟のベランダで、2羽のイソヒヨドリが向かい合って会話するように鳴いている。団地ではお隣さんより、向かいの棟の同じ階の一家が隣というか、もっとも生活の気配を近くに感じる。ピコピコはひとまず継続することにした。

木曜日
朝食は豆腐チーズをパンにつけて食べる。Fが部屋の整理をだいぶ進めた。ラジオ体操など、引っ越し前の日課もだいぶ戻ってきた。

金曜日
午前中はヨガに行く。おやつに茹でたジャガイモをよばれる。警察署で住所変更。10年以上前に住んでいた社員寮から通っていた道と、この間まで住んでいたマンションから散歩した道と、今の団地から街の中心部まで行く道が同じ道だったことが判明。10年越しに頭のなかで1本の道が開通した。

土曜日
京都に出かける。Fが前に写真を撮ってもらった写真家、甲斐さんの展示を見たあと、細い道を歩いていると、繁盛している蕎麦屋があったので入る。新装開店したばかりらしい。あんかけうどんと親子丼セットを注文。親子丼はご飯全体にダシがからんでいて、雑炊のようでおいしい。あんかけも汁の上面だけでなく、つゆ全体にとろみがある。具はなかったけど、あんを食べるだけでも満足した。ヨーロッパ映画祭を見たあと、ビーガンジェラートの店に行く。乳製品不使用のアイスがうれしい。アメリカにもそういう店があった。アメリカはジャンクなものも多いが、オーガニックやビーガンものも充実している。その手のものも、ボリュームの面で妥協していないのがアメリカらしい。日本だと、オーガニックやビーガン、イコール健康志向、イコール小食ということで、カロリー低めだったり量が少なかったりするけど、アメリカではビーガンのケーキでも、甘くてカロリー高そうなものがパックにぎっしり入っている。

日曜日
おばあちゃんのお見舞いに行く。100歳。部屋に政府からの賞状が飾られていた。壁に若いころの写真が貼られていて興味深く見る。写真に写っている自分の親より自分のほうが年上になっていることに不思議な気持ちになる。

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