700円で放出する脳汁
金が無いのでストイックな禁欲生活を送っている。如何に日中金を使う事なく耐え凌ぐ日常にも慣れてきた。毎回生命維持目的でしか無いツナパスタを食し続け、修行僧みたいなストイックな生活に酔いしれている。俺は確実に煩悩が排除され強くなっていくような感覚が堪らない。
しかし週に一回は何かしら報酬系に訴えかけるようなイベントが欲しくなってくる。欲求というのは上限にキリがないので、如何に普段蓄積させて一度に最短距離で放出するかが心地よい幸福維持のカギとなってくる。人間は効率的ではない愚行的な行為をやはり求めているのだ。そんな中でも700円で週に一度完璧に抑圧された脳汁を排出する方法を確立した。是非とも皆もこれを体感して欲しい。
とりあえず1週間は酒も飲まずにストイックな味気ない最低限度の食生活を行う。ここでのポイントはなるべく毎日同じものを食い続けることが重要となる。客観的に見て全然楽しそうじゃない修行パートのようなメンタリティで過ごすのがマストである。ある種筋トレ中のような辛さへどれだけ快楽を感じられるかが楽しみ方である。
週に一度の解放日、まずは朝起きたらしっかりと風呂に入って欲しい。とりあえず体内から水分を飽和させるのがコツである。サウナや運動もいいが、とにかく金が無いので自宅の風呂で済ませている。風呂を意識して修行の場にするのがコツである。正直外に出ることがないので週に一回の風呂としてもいい。外に出なければ毎日風呂に入る必要もないのだ。常識を疑え。でも脳汁のための代償であると割り切るのだ。
風呂上がりサッパリとしカラッカラになったら最寄りのスーパーへ向かおう。風呂上がりの心地よさが平日午前の日中という背徳感にプラスされ本当に心地よい。これだけでもシチュエーションだけで若干の脳汁が出ていく。
スーパーに着いたらグリーンラベルのロング缶を買おう。アルコールが入っていれば何でもいい。現に今は水分不足なので液体と酩酊さえ感じられるものであれば何でもいい。
そしてプリングルスのサワークリームオニオン味を探そう。お菓子の中でこんなに脳汁を出せるアイテムをこれ以外俺は知らない。最近だとドンキや業務スーパーでかつてのビッグサイズ感ある「偽プリングルス」も出現しているのでそちらでもいい。あのサワークリーム味さえ付いていれば全てが幸福に繋がる。
そして塩気を確保したら次は甘味である。この世には板チョコなるダイレクトで砂糖を摂取できる非常にバカっぽくもアーティスティックな商品が存在する。はだしのゲンで米兵が資本主義の象徴としてくれるアレである。俺はその中でも明治のホワイトチョコレートの板チョコを推したい。白くて甘いなんて人工的で最高にオツである。
ここで600円ぐらいになるが最後の仕上げに向かう。もちろんスーパーカップ1.5倍である。1.5倍というキャッチコピーだけでゾクゾクできる精神性まで持っていければこの買い物時点でキャリーオーバーとなる。会計時に俺はこんな俗悪な行為をしているのだという背徳感が得られるのは禁欲の賜である。スピラに旅してないのに「エボンの賜物」というのがここになってリアルに理解できる。
そしてワクワクしながら帰宅しよう。まだ平日の午前中なのに喉はカラカラ、こっからやるべきタスクは無い。最高のコンディションに追い詰めていき、まずはグリーンラベルを一気に飲み干す。いつもの仕事終わりの一杯とは違う。朝から何も食べていないのでビールもどきのリキュール飲料が飲酒の心地よさだけでなく、麦芽やホップの栄養素をダイレクトで感じられるようになる。栄養素として発泡酒が機能するのだ。アルコールのみならず食品として認識する自身の肉体に感動を覚える。
そして徐にプリングルスを食す。サワークリームのホンモノなんて知らないくせに、「写真はイメージです」以上のサワークリームオニオン感とジャンクな成形されたある意味キモいポテチが体内に広がる。そして再びグリーンラベルに口をつける。麦と芋と塩分が1週間ぶりに一気に摂取することにより圧倒的な多幸感に包まれる。もうブレーキを気にすることはない。お気に入りのライブ映像なんて見ながら体感するとなお素晴らしい。
嫌気がさすほど発泡酒とポテチを体感した後は、徐に中継ぎのホワイトチョコへ向かう。砂糖というのは凄まじい毒性を孕んでいることを実感できるとともに新たな脳汁を放出可能である。甘いことはこんなにもにも美しい。止めどなくバクバクと板を破っていく行為すら耽美である。この時点で3種の毒性を摂取することにより幸福度は血中ピークへ向かっていく。
この時点で何かしらのタガが外れる音が聞こえてくる。何か走り切った満足感を抱えた後は仕上げのスーパーカップ1.5倍の登場である。アルコールと塩気と甘味を堪能した後は、やっぱり温もりのある塩分が効いてくる。温かい食品というのは熱のない前菜の後に摂取すると本当に脳汁の絶頂となるし、満腹中枢限界に向かうことがもう堪らない。まだ午前中である。やはりここからすべき行動など一切ないのも最高に愉悦だ。
3分待ちひたすらに麺を啜る。そして身体にいいはずでないスープを余すとこなく一気に取り込む。もうこの時点で1日の頂点を叩き出しているのだ。俺はこの先どうなって行くのだろう。そんな満足感で満たしたあとはひたすらに怠惰に努める。次のお楽しみは来週である。一寝入りした後は再びストイックな生活へ向き合う。こんな毎週を過ごせれば正直死ぬまでこんな具合でいい。700円で熱狂は購入できるのだ。
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