秋の京都周遊記(前編)
秋の京都に行きたいと妻が言う。だが、巷では紅葉の時期の京都に行ってはいけないとも言う。インバウンドも復活してきて、さぞ混むんだろうなあと二の足を踏む思いはあるものの、果たしてどれほど混むんだろうという下世話な興味もあり、結局3泊4日で秋の京都の旅を企画した。
京都在住の娘ともところどころで合流しながら、今まで行ったことのないところを中心に秋の京都(の混雑)を満喫しようという計画である。拝観料、飲食費は親のお金を当てにできるし、特に用事もないから娘も付き合うよ~という。美味しそうなお店探しておいてね~と夕食の店のリサーチなども頼んで、早朝の新幹線で京都に向かった。
第1日:令和5年11月23日(祝木)
東福寺
朝新幹線で京都に着いてすぐに、JR奈良線に乗り換え東福寺駅まで行く。娘はバス移動なので、東福寺のバス停前で待ち合わせ。8時30分に門が開くということだが、時間前から団体の観光客が次から次へと東福寺へと向かう道に吸い込まれていく。
東福寺では、本堂と開山堂を結ぶ通天橋から見た紅葉がお勧めらしい。
臥雲橋を渡った先の日下門から入るが、順路が決まっているので順路の通りに歩く。撮影スポットでは渋滞も起きている。何となく気忙しいが、紅葉はなかなかきれいでもある。
通天橋ではみんな立ち止まって写真撮影に余念がない。誘導係が「写真を撮ったら先に進んでくださ~い」と声を懸けているが、写真撮影にもそこそこ時間がかかるので列はなかなか進まず、誘導の人もなかなか大変だろうなあと同情する。
通天橋からの紅葉は確かに見ごたえがあるが、雑踏の中なのでちょっと落ち着かない。
通天橋以外では本堂も三門も大きくて立派だ。三門は国宝なんだそう。今日は別料金にて三門の上にも上がれるようだが、そちらはパスをして南側の六波羅門から東福寺を出て、次の目的地伏見稲荷へ向かうことにする。娘は伏見稲荷は別に行かなくてもいいやということなので、一旦門前で解散する。
伏見稲荷
伏見稲荷へは電車でも歩いても大して時間は変わらないだろうと、徒歩にて向かう。京阪の線路と平行に進み、京阪の駅方面からと思われる人の流れが横切るところで左折。両側にお店が並んで参道らしい雰囲気だ。折角なので、おやつ用に稲荷ずしを購入。
参道を進み千本鳥居へと向かうが、もう外国人ばっかり^^;)
きっと人がいなければ、厳粛な感じもうけるのだろうが、鳥居の数より人の方が多そうだ。
せっせと鳥居を潜り続け、四ツ辻と呼ばれるところまで行ってちょっと休憩。見晴らしもいいので、麓で買った稲荷ずしを食べて下山する。
やっぱり人の多いところは疲れるね…。
帰りは裏道のようなところから戻ったので、それほど込み合わなかったが、いや人の多さにびっくりした。これは先が思いやられる…とちょっとげんなり(笑
宇治
伏見稲荷の参拝を終え、JR稲荷駅からJRで宇治まで移動。たまたまJR稲荷駅に臨時停車するみやこ路快速に乗れたので、途中六地蔵に停車するだけで2駅目が宇治だった。平等院は数年前に車で紀伊半島巡りをした後に寄り道して拝観している。その際天ヶ瀬ダムにも寄りダムカードももらった。ということで、今回は平等院は素通りして「響け!ユーフォニアム」の"聖地"を軽く巡る感じでのんびりと歩いてみた。
まずはJR駅前の観光案内所で探訪マップを入手して、平等院方面へと向かう。商店街を宇治橋方面へ向かう途中のお店で鰻弁当のテイクアウトをしていたので、昼食は並んで待つよりもとテイクアウトの鰻弁当に決定。買い込んで宇治橋の袂から河原に降りて、橋と川を眺めながら河原でいただいた。
鰻の量はささやかだが、ご飯の間にも鰻が仕込んであるのが関西らしい。ご飯の量もたっぷりあって満足まんぞく。
ランチの後は、あじろぎの道を歩いて喜撰橋から塔ノ島、中島橋、朝霧橋と辿って、宇治神社、宇治上神社を訪問。
初めて歩く道だが、アニメが丁寧な取材による高クオリティで制作されているので、既視感ありまくりで懐かしさすら覚える。ひょっとして北宇治高校の生徒と擦れ違うんじゃないかと錯覚してしまうが、さすがにそんなことはないね…。
そして、折角なので大吉山展望台まで登ってみた。九十九折れの登山道は広いし傾斜もそれほどではないが、ユーフォニアム背負ってパンプスで歩く道ではないかも…。でも、他人と違うことをして特別になりたい高校生ならやるのか・笑。
展望台は眺めのいい落ち着いた場所だった。地元の親子連れが遊んでいたりして平和な様子で好ましい。しばし宇治市街の眺めを堪能し、自宅から持って行ったシャトレーゼの焼き菓子などを食べて寛ぐ。
大吉山から降りた後は、さわらびの道から源氏物語ミュージアムの敷地を抜けて宇治橋東詰めまで。途中、源氏物語ミュージアム周辺の紅葉が綺麗だった。
そう言えば、来年の大河ドラマは紫式部が主人公ということで、4月から始まる"久美子3年生編"(何とNHK-Eテレで放映とアナウンスがありましたね ^^)と併せて、宇治市観光協会はウハウハ(それとも戦々恐々?)だなあ。いずれにしても来年はもっと混みそうだ…。
宇治橋を渡らずに来てしまったので、最後は宇治橋を東詰めから西詰へ、西詰から東詰めへぐるっと往復して、京阪宇治駅から六地蔵まで京阪電車に乗り、六地蔵でJRに乗り換えて京都駅へと戻った。
東福寺も伏見稲荷も人で溢れていたが、今日回った宇治のスポットはどこも静かで落ち着いていてちょっとほっとした。
そして、京都に戻ってからは、ASTYで期間限定開催中の京アニグッズショップに寄ったことは言うまでもない。
夕食は、娘と再度合流して「鳥せゑ蛸薬師店」で焼き鳥メインの居酒屋メニュー。
第2日:令和5年11月24日(金)
琉璃光院
2日目は、朝9時40分から琉璃光院の拝観を予約していたので、ホテルからバスで出町柳まで移動後、朝食とおやつを調達。
「出町ふたば」の開店前の行列に並んで「豆餅」と「黒豆大福」を購入し、駅のちかくのおにぎり屋さんでおにぎり、駅構内の志津屋さんでパンも購入。そのまま叡電に乗り込み、八瀬比叡山口へ向かう。
八瀬比叡山口に到着後、川を渡った先の広場でおにぎりの朝食を摂り琉璃光院へ。
琉璃光院も大変な人出で、落ち着いて参拝し紅葉を愛でるという雰囲気にはならないのだが、安くはない拝観料をお支払いするので、腹を括って行列の一員となる。
時間指定の拝観予約のため、時間になるまで門前の広場で待機し、順に拝観券を購入して入場する方式だ。人がいないと想像すれば趣深い建物だし、紅葉も綺麗ではある。
磨きこまれた机に反射する紅葉の写真が有名だが、机の前には大勢の人が順番待ちで同じような写真を撮っている。もちろん自分も例外ではないのだが、ただ写真だけを目的にしても勿体ない気がして、撮影はほどほどに自分の目で見ることも意識してみたり…(笑
入場時に渡される袋の中には、写経の用紙も入っている。順番を少し待つと写経コーナーで写経(といっても、紙に薄く印刷されたお手本をボールペンでなぞるというなんちゃって写経だが…)もできる。少し落ち着いた気持ちで紙に字を書くということも最近は少なくなっているのでチャレンジしてみた。
人は多かったけれど、思ったほどはざわついていなくて落ち着いて紅葉を愛でることができたような気もするのは、写経の効能か。
琉璃光院を出た後は、拝観券に入場券がついていたルイ・イカール美術館京都に寄ってみた。
こちらは、琉璃光院の付帯施設という位置づけで拝観料に入館料が含まれているのだが、足を運ぶ人は多くないようだ。
ぼくも、ルイ・イカールという画家の名前は寡聞にして初めて知ったのだが、アールデコの時代にパリで活躍した人らしい。その、イカールのコレクターの私邸というコンセプトで作品を展示しているとのことで、落ち着いた雰囲気の中で作品の鑑賞ができる。
作品自体にさほどのインパクトは感じなかったのだが、空間としての美術館の雰囲気は悪くなかった。人波に疲れた後に気持ちをゆったりさせるにはちょうどよかったかもしれない。
今日は琉璃光院以外の予定を決めていなかったので、美術館から琉璃光院の門前を抜けて、そのままだらだらと一乗寺の方へ歩いてみた。修学院離宮の前を過ぎ、住宅街のようなところを歩いて行くと何やら曰くありげな建物の前で数名の観光客らしき人影がたむろしている。
なんだろな?と覗き込むと「雲母漬」という文字が…。漬物を売っているらしい。奥に進むと売店らしきコーナーがあり商品が並んでいる。
雲母漬(きららづけ)は小茄子を白味噌で漬けた漬物で、茄子がちょっとコリコリとしていて白みその甘辛い味とよく合う。プレーンの雲母漬と柚子きらら、山椒きららの三種が詰め合わせになった雲母三昧をお試しで買ってみた。ついでに茄子のしば漬けも置いてあったので一緒に購入。思わぬ出会い、という感じだが、ぶらぶら歩きはこういう発見が面白い。
雲母漬を買ってさらに進むが、そろそろお腹も空いてきたしと途中の「一乗寺中谷」という和菓子屋さんの喫茶に入る。昼時で詩仙堂もほど近いからか、少し行列ができている。ただ、そんなに待つこともなさそうだし、売店の方を覗いて時間潰しもできるから、まあ許容範囲。
"でっちようかん"というのが名物のようだが、お饅頭、餅菓子、洋菓子まで置いてあって、それぞれ美味しそう。
喫茶にはお食事メニューとして「京雑煮のいろどりごはん」(白味噌雑煮にお赤飯プラス小鉢のセット)がある。三人で「京雑煮のいろどりごはん」を注文したが、ひとつだけ絹ごし緑茶てぃらみすという洋菓子と飲み物を付けたセットを頼んで、お菓子は三人でシェアしていただいた。絹ごし緑茶てぃらみすは、もうちょっと洋酒の風味があった方がいいかなあという妻の意見もあったが、濃いお茶の香りがよくてぼくは好きな味だった。
お雑煮は丸餅入りなので結構お腹いっぱいになる。喫茶はさほど広くないが、ざわざわしていなくていい雰囲気だったのでまた行ってもいいかな。
昼食後は、そのまま通りを降って一乗寺の駅から叡電で出町柳まで戻った。
時間はまだ14時前で、夕飯までは結構時間があるしどうしようかと鳩首凝議。妻がガイドブックを眺めながらここに行ってみようと、指さしたのは「旧三井家下鴨別邸」。11月16日から通常は非公開の主屋二階および三階望楼を特別公開しているという。
旧三井家下鴨別邸
「旧三井家下鴨別邸」は、出町柳駅からは高野川に架かる橋を渡って糺の森方面への道へ右折しすぐの左側が入口だ。
立派な玄関棟から母屋へと進む。階段で2階へ上がると、3回の望楼へ上がる人が数名待機している。上がるとわかるが望楼自体は広くないので、5・6人で満員、と言う感じである。2階で庭の池や周囲の紅葉などを眺めていると、望楼から降りて来た人たちと入れ替えに望楼へと案内された。
2階から上がる階段はまるで梯子のような角度で、ロープまで設置してある。
さて、望楼は四方がガラス戸になっているので眺望はいい、というか2階では周囲の木立に遮られて遠望が効かなかったが、たった一層あがっただけで眺望が大きく開けたことに驚いた。比叡山や大文字山が目の前に見えるし、周囲に高層建築が少ないので四方に眺めが広がり大変に開放的だ。
まさに"望"楼である。加えて、建物の由来や周囲の眺めを解説される男性が落ち着いた雰囲気の方だったので、いい気分で望楼の見学を終えた。
望楼から降りた後は、1階のお部屋を見せていただきその後庭に回って建物全体の様子や庭の景観を楽しんで、旧三井家下鴨別邸を後にした。
特別公開期間以外でも、食事付きのツアーなどで望楼の見学はできるようだが、思い付きで入った割には楽しめて満足であった。
下鴨神社
旧三井家下鴨別邸を出た後は、糺の森を抜けて下鴨神社へ。妻は下鴨神社に行ったことがないと言うのだが、いやいや子どもたちが小さいころに一度行ったと思うけど…。まあ、別に二度行っても三度行ってもいいので、お供しましたが。糺の森の雰囲気は好きだし…。
下鴨神社までゆっくり往復した後は、亀の飛び石を渡って川端通りへ上がり、東一条通り沿いにある松井酒造の「ティスティングルーム 酒中仙」へ。
松井酒造のお酒のテイスティングができるお店で、外国人を含めて結構にぎわっていた。1時間ほど、あれやこれやお酒のテイスティングを楽しんだ。普通の日本酒もそれぞれ美味しかったのだが、"神蔵 「蜜號」 京ゆず 無濾過日本酒仕込み"というリキュールがとても美味しくて、正月に帰省する時に娘に買ってきてもらおうと画策。
その後、ぶらぶらと娘の下宿先まで歩いてちょっと休憩後、夕食へ。
昨日の夕食が居酒屋系だったので、今日は洋食にしようと二条通り沿いのイタリアン・レストランまで足を運んだ。
大きなお店ではないけれど、ゆったりした時間の流れるお店で、前菜、パスタ、メインの肉料理とデザートをワインとともに楽しんだ。
と、ここまでが前半2日間の様子だが、少し長くなったので続きは後編で。
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