【インタビュー】TAPサポーター武智小百合さん①これまでのキャリアについて
芸能に特化したメンタルサポートサービスTAP(ティーエーピー)。
実際にどんな方に相談ができるのか?と、TAPサポーターとして活躍いただいている武智小百合さんへインタビューをいたしました。
これまでにも表舞台に立つ方のサポートや、さまざまな場所の前線で活躍されきた武智さん。今回は武智さんの歩まれてきたキャリアについてお伺いしました。
精神医療・スポーツ医学・・様々な領域で培ってきたキャリア
——これまでのキャリアや経歴を簡単に教えていただいてもよろしいですか?
武智:はい。私は大学院から現在のキャリアをスタートさせました。
人のこころの動きや、こころの悩みを解決に導くプロセス、「人の話を聴く」ということを本質的に学んでいきたかったので、修士・博士の過程で精神療法を軸に研鑽を積み、卒業後は、大学病院で主に精神科とスポーツ医学の領域で臨床経験を積んできました。
実は、この領域へ進んだきっかけはスポーツ心理学への興味というものが大きくて、普段表舞台に立っている人が外に出せずに抱えている悩みや困りごとの支援をしていきたいという思いが強くあったんです。
なので、大学院を決める際に精神医学とスポーツ医学どちらの教室もあるところを選び、周囲の先生方のおかげで、スポーツ心理学に関してもチームに赴いていくなど経験を積みながら学ばせていただくことができました。
臨床に関して言えば、精神科外来での心理支援や、アスリートのメンタルサポートの他に、肥満症治療チームにも加わっていました。
頭では食事の制限や運動をしないといけないと分かっているけれどなかなか行動できない、そういう方に対しての動機付けやモチベーション維持などの心理支援を行ってきました。
他にも、企業へ赴いて一緒にお仕事させていただく機会も多くいただいてきました。
メンタルヘルスサポートのプログラム開発のお手伝いですとか、企業の保健師さんたちへの研修などを行なってきました。
—— ありがとうございます。さまざまな場所の前線で活躍されてきたというのを感じます。
武智:ありがとうございます。
「垂れ流された本音なんて誰も聞きたくない」表舞台に立つ方のサポートをしたいと思ったきっかけ
—— そもそもスポーツ心理学のほうに興味を持った、表舞台に出られる方のサポートをしたいと思われたことのきっかけはなんでしたか?
武智:これは自分自身の経験がきっかけとなりました。
そういう(精神医学という)領域があるんだと気づいた経験でもあったのですが。私自身がずっとスポーツに打ち込んできた学生生活だったんです。
その引退試合目前に大ケガをして、最後の目標にしていた試合に出られなくなってしまったという経緯があったんです。
その過程で、お医者さんに「これ間に合いますか?」って聞いたときに、バッサリと「いや、それは無理だね」と一言で片付けられてしまって。
今となっては、そのことがきっかけとなって今の職業に巡り会えたので、人生の大事なターニングポイントだったと思っていますが、その当時は、大きな絶望を感じました。
目標としていたものが目の前で突然断ち切られてしまったということに、自分の中でとにかくショックが大きかったんですね。
その時に初めて、誰かにすがりたいと強く思ったのを覚えています。
そのときにパッと結びついたのが、大学受験前に通っていた予備校の先生が授業中に話された言葉なんです。
「今の時代、垂れ流された本音なんて誰も聞きたくないんだ」って。
その前後の文脈は覚えていないのですが、「垂れ流された本音なんて誰も聞きたくない」という、そのワードがなぜかすごく印象に残っていて。
そして、本当につらいときに抱えている本音を出せる場所って、意外とないんじゃないかというふうに思ったんですよね。
特にアスリートの方とか、普段人前で見せている姿がポジティブだったり強かったりする人ほど、そういう場所ってないんじゃないかなと思って、それなら私がそういう存在になりたいと思ったんです。
そのとき私はちょうど大学卒業後の進路を考える時期だったのですが、進路変更をして精神医学の領域で大学院を受験することに決めました。
ですので、そのときから、「プロフェッショナルとして、誰かが本当につらいときにその人の本音を聴ける存在になる」というのが、私が目指してきたことでした。
—— 本当に、そういう場所があるべきですよね。人前で元気な人ほど、普段言わない弱音を吐くと自分のイメージが変わってしまうんじゃないかなとか思ったり、周りもその人が悩んでいると思わなかったり。
武智:そうですよね。
人前に立つからこその悩みと、人としての共通点
—— スポーツの現場や企業・精神科などでさまざまな方をサポートされてきたと思うんですけど、その中で例えば人前に立たれているからこそ違った悩みを抱えやすいとかってあったりするのでしょうか?
武智:そうですね、やはりそれぞれの環境によって生じやすい悩みというのはあると思います。
人前に立つ機会や注目されることの多い方だと、パフォーマンスに関する不安や緊張についての相談はもちろん多くありますし、他には、良い結果を出しているときは色んな人が寄ってきていたのに、結果が出なくなるとそれがパタリとなくなって、自分の存在価値自体を否定されたように感じてしまうとか。
ただ、支援をしていて思ったのは、共通することも多くあるということです。これは、自分の進んできた道が間違っていなかったなと自分で思えた場面でもあったのですが。
というのも、私がスポーツ心理学に興味を持ちながらもあえて大学院で精神医学を選んだのは、『アスリートである前に人である』ということを大切にしたいと思っていたからなんです。
その人がどのような職業や社会的役割の人であっても、そうである前にみんな同じ「人」であって、人の心の根本は全て精神医学に集約されているのではないかと思ったんです。
実際に、お話を伺っていてそう感じる場面は多くあります。こちら側が提供することも、基本的には共通していると感じています。ただその中でも、個別性というものは大切にしています。
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