古きを訪ねて新しきを知るーTAPクロニクル
取手アートプロジェクト(TAP)は2024年に25周年を迎えます。言い換えると、四半世紀。すでに「歴史」と呼べる、時間と経験と、物語の堆積層がそこにはあります。
現在までの間に、取手市内でさまざまな地域を渡り歩き、時代に応答したテーマと向き合い、まちの隙間を求めて事務所を移転し、さまざまな人の手で運営されてきました。いつ、どこで、だれが、だれと、どのように。そして何のために、あるいは何のためでもなく。堆積した歴史の帯は、どこを覗いても人々の営みの渦中にあります。
私は、2005年のTAP塾※インターンでした。取手のまちを舞台にした「アートプロジェクト」という、かかわりの坩堝に触れ、現在もその坩堝をつくる仕事をしています。さて、その坩堝はどこからきて、どこへ行くのか。
ことの起こりは2015年。パートナーアーティストに劇作家・演出家の羊屋白玉さんを迎え、これまでTAPに関わりのあった人びとや、これからを考えるために必要な人や場所を訪ね、話を聞く活動「取手アートプロジェクト・クロニクル」(TAPクロニクル)をはじめました。それらは当初は、前途を見出すことにもがくTAPの未来を考えるために、過去を知ることでした。けれど、TAPの現在の足場が徐々に確かになることを経て、いつしかそれらの話をもとに、舞台作品をつくるイメージが生まれたのでした。
取手に暮らす作家、立ち上げに関わった人、支えてくれる商店の人、大学の人、行政の人。2017年にはアートセンターのあり方を探りにウェールズやロンドンなど英国も巡りました。それぞれにアートプロジェクトとの関わりがあり、物語と気づきがありました。
少しずつ聞き取りを重ね、多くの語りが集まってきています。2023年より新たにプロジェクトの共同演出として阿部健一さん、齋藤優衣さんをお迎えし、より深く、振れ幅広く取手の街の社会背景や、TAPに関わった人々のライフヒストリーに触れるフェーズへと進んでいます。
あなたにとっての取手とは、TAPとは。聞き手・語り手の関係を行き交いながら、この25年のアートプロジェクトとともにあった郊外のありようを手繰ります。
大内伸輔(取手アートプロジェクト運営スタッフ)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?