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20歳の夏休み全部使って日本一周してみた(15:秋田〜米沢)

第15日目

今日は一日、山形観光に費やします。山形県というのは僕の人生で今まで立ち入ったことすらなく、とりあえずお米とさくらんぼが美味しくて、最上川が流れていて、松尾芭蕉が…というイメージでした。旅行の勉強をして以来、加茂水族館や銀山温泉、出羽三山など魅力が詰まっていることを知り、いつか山形観光を堪能してみたいと思っていました。今日はその日です。

元々計画していた予定では、前日のうちに秋田から鶴岡まで移動して、鶴岡もしくは酒田の快活クラブに泊まる予定でいましたが、その2つの快活クラブにはシャワーがないことが発覚し、急遽、秋田周辺の快活クラブに泊まることにしていました。

その関係で、朝イチで鶴岡に向かわないと、計画していた加茂水族館と銀山温泉を1日で堪能する観光ルートが台無しになってしまいます。色々調べたところ、秋田を始発で出れば、ギリギリ鶴岡で加茂水族館と接続するバスに間に合うという天才的な旅程が出来上がりました。始発で出発するのも、もう慣れましたね。

5時37分に羽後牛島駅という泊まっている最寄りの快活クラブを出る羽越本線に乗車し、酒田で乗り換え、8時半頃に鶴岡に到着します。その5分後くらいに出る加茂水族館行きのバスに乗り、開館してすぐの時間帯を狙って加茂水族館へ向かいました。

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入場制限の関係で整理券を配布して時間ごとに入場者数を決めているようでしたが、無事9時から9時半の整理券を手にし、待ち時間0分で入場することができました。これに入らないと10時にここを出るバスに間に合いません。駅から相当離れた海岸沿いにあるこの水族館は、訪れる観光客の9割以上が自動車で来ていました。朝から駐車場が異常に埋まっていました。

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入館料1000円、思っていたよりも安いことがここに来ることを決断させました。展示は最初はどこの水族館にもあるような魚の水槽で特に日本海を再現した展示になっていました。少し進むと徐々にクラゲがぽよぽよしている展示へと移ります。小さいクラゲ、大きいクラゲ、怪しい色のしたクラゲ、透明なクラゲなどなど多種多様なクラゲが小さな水槽に転々と展示されており、神秘的な空間になっていました。帰りのバスの関係で少し気持ち早めのペースで進んでいたところ、もうすでに最後の展示であり、かつこの水族館の1番の売りである巨大な円形の水槽が見えてきました。

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常に順番待ちで写真撮影されていて、僕単独でその撮影ポイントを占有する勇気はなかったので、外側の通路からパシャパシャ写真を撮っていました。クラゲを見るだけなら1人でも楽しいですが、このような撮影スポットとなってくると話は別です。そこを後にし、水族館の外にある灯台をぐるりと見てバスに乗って鶴岡駅に戻りました。

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そういえば、忘れてはいけないのが、屋内のクラゲ展示が終わった後にある屋外のアシカやアザラシの展示スペースです。クラゲには顔もなく、無表情で何を考えているか想像もつきませんが、クラゲと違ってアザラシたちには顔がついていて、これを見ているだけで面白いです。狭い水槽を行ったり来たり、壁にぶつかるたび、自分の体をぽよっとさせて方向展開し、眠そうな顔で泳ぎまわっている様はずっと見ていても飽きません。

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クラゲばかりが脚光を浴びて、日の目を見ることのなくなったアザラシたちは自分たちの不運をどれだけ嘆いていることでしょう。この表情を見れば、心の中に秘める思惑が伺えるかもしれません。模範解答のような羨望の眼差しから、どことなくクラゲに対する嫉妬心を感じます。加茂水族館は面白い場所ですよ。

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鶴岡に戻ってからは、羽越本線に乗って余目まで戻り、そこから陸羽西線に乗って新庄を目指します。余目で1時間ほど乗り換えの待ち時間があったので、何をしようか考えましたが、セブンイレブンが駅から10分ほど歩いたところにあるので、散歩がてら少し早めの昼食とすることにしました。

途中、おそらく、つや姫を育てているであろう一面の田んぼが広がっている道を歩きました。歩いているうちに無性に塩むすびが食べたくなったので、購入しました。普段だったら絶対買わないんですけど、思わず買ってしまいましたね。帰り道、一面の田んぼを目の前にして塩むすびを貪り食いました。大地の味がしました。今まで食べたコンビニおにぎりの中で一番美味しかったです。

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余目から乗車する陸羽西線は田沢湖線と似たような感じで、線路の右か左を常に最上川が並行しており、車窓を見ていて飽きない路線となっています。思っていたより濁っているような気がしましたが、普段からこんなもんなのでしょうか。松尾芭蕉もこの川の流れを見て、例の有名な句を読んだことは言うまでもありません。

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新庄でも乗り換え時間が1時間ほどあり、暇を潰そうと観光案内所を彷徨ったり、駅前のロータリーを彷徨ったりしてましたが、どうやらここは昨日の角館同様、山車の祭りが有名なところらしく、駅の至る所に写真のような展示がありました。また、新庄駅は駅の構造も面白く、山形新幹線のターミナル駅となっている関係で不思議なホームの配置となっています。新庄からは奥羽本線で大石田を目指します。

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大石田からは銀山温泉に向かいます。レンタサイクルをして行こうかと考えていたのですが、観光案内所が15時に閉まる関係で使えませんでした。結局バスを使って行ったのですが、往復1440円。これを払ってでも行く価値があるかと考えたのですが、せっかく山形に来て、あの景観を見たいために下車したのにここで引き返すのはもったいなさすぎるので、行くことにしました。薄々気づいていたのですが、いくら調べても16時半から日帰り入浴を提供している旅館はありませんでした。

バスの発車時間まで暇ですので、最上川を見に行くことにしました。川沿いの団子屋でだんごを購入して、おやつにしようと思ったのですが、どうせ小さいサイズだろうと思って頼んだら、意外にも1つぶ1つぶが大きく、餅は腹持ちもいいですし、今日の夜ご飯は要らないとも思える量でした。ずんだもごまもあんこもどれも美味しかったです。

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銀山温泉というのは、それこそめちゃくちゃ山の中にありますから、駅からバスに乗っても30分以上かかる15km以上先に位置しています。この地理的距離感が、秘境の湯感を醸し出していていいですね。路線バスに揺られること35分、ついに銀山温泉に到着しました。

バス停から坂を降ったところにある温泉街は、よく観光雑誌などで見る、あの構図の景色が広がっていました。よく、旅先で見れる景色は、ネットで調べればいくらでも見れると言っている人がいるのですが、写真から感じられるのは視覚のみの情報です。視覚だけ満喫するだけで、観光が完了するとは到底思えません。その場所の温度、湿度、匂いなどから感じられる、実際に行ってみないとわからない雰囲気というのは、その場所に実際に行ってみないと味わえませんし、なにより、1枚の写真だけに留まらない連続的な視覚の情報や自分であれこれ動き回ってみて見つけることができる新しい角度の景色はその場所に行かないとわかりません。

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帰りのバスまで2時間近くあり、温泉にも入れないのでベンチに座って、富良野のファーム富田の時と同様、観光客の人間観察を行います。有名な観光地ですから、あたり一体は写真撮影に勤しむ人で埋まっています。僕のようにベンチに座ってぼーっとしている人間は誰1人としていません。おそらく僕は何枚もの写真の被写体として銀山温泉に溶け込んでいたことでしょう。

バスの発車時間30分前くらいになってやっと温泉街の奥の方に足を踏み入れるやる気が出てきて、てくてく歩いて川を遡りました。するとその先にはとんでもない勢いで水を落としている滝があるではないですか。これが銀山温泉を流れる銀山川の一部となって水を供給していたのです。奥に足を踏み入れてみないと見つけることのできない発見がありました。

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足湯にだけは入っておこうと思って、足を湯につけたのですが、これが思っているほど熱い。おそらく冷水などで冷ます工程を省いている源泉でしょう。温泉の硫黄の香りが自分の足からぷんぷんとしてきますが、相変わらず水温が熱い。熱いというか痛いです。僕が熱さに弱いだけかもしれませんが、別府で入った温泉よりも熱かったように思いました。

帰りのバスで山を下っていると、前方から眩いオレンジ色の光が差し込んできます。ちょうど夕暮れの時間に差し掛かっていて、バス内はオレンジ色に染まります。その日の終わりに綺麗な夕暮れが見れたら、その日1日、どんなことがあってもいい1日だったと思えることができます。振り返ってみれば、仙台で見た夕日も、久慈で見た夕日も、角館で見た夕日も、大石田で見ている夕日も、東北の夕焼けはどこで見ても、どんな天気でも美しかったように思います。

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今日の宿は米沢の快活クラブです。奥羽本線を南下して、いつものように夜遅く到着します。明日は、おそらくこの日本一周の旅で1、2を争うアクロバティックな移動をする予定なので、少し気を引き締めて行く必要があります。明日で長かった東日本も終わりです。

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