誰がために「少子化対策」の鐘は鳴る-出産事情-篇
1. 異次元の少子化対策
重いテーマをかる〜くお届けする「チノアソビ大全」。映えある本編最初のテーマは少子化対策です。今を遡ることおよそ1か月前のことじゃった。2023年1月4日、念頭の首相記者会見において岸田総理が
「異次元の少子化対策」
というワードを打ち上げた。これまでとは全く次元(考え方)の異なる少子化対策、という、この何の具体性もないワードは、それまで日銀が行ってきた「異次元の金融緩和」という実績に聞き手の脳内で勝手に結び付けられ、良くも悪くもインパクトを創出してしまったのじゃった。
異次元の少子化対策が柱となる岸田首相の施政方針演説(NRI)
さて、あいも変わらず野党は猫も杓子も批判的なんですけれども、もうちょっとさぁ、合理性を担保して良きところは認め、悪しきところを批判できないものか、、、と感じつつ、そういった思惑とは反対に、現代の日本の経済構造を考えると少子化対策は絶対必要な政策なのです。というか政府が考える未来に対するビジョンは「条件付き」で人口政策こそ本丸でしょ(条件付きとした意味は、ぼくは別に人口政策が本丸じゃないと思ってるからなんですが、それはまた別稿にて)。
2. 経済学的には正しく見える少子化対策
ちょうど年明けに我々のPodcast「チノアソビ」にてアダム・スミスについて放送したんですけれども、アダム・スミス的な経済学においては人口こそが国富の源泉だからです。
詳細は本編に譲るとして、端的に説明しておくとアダム・スミスはそれまでの重商主義的な「金(Gold)こそ国富」という考え方から脱し、「商品の総量」が国富ということを提唱したんですね。ということは、商品を生産する労働こそが価値の源泉であり、国富は生産年齢人口(15歳〜64歳)の数とその技術力によって規定されることになります。
3. 驚愕、日本の生産年齢人口の減少レベル
では、まさに日本の国富の源泉、我が生産年齢人口はどうなっているのかというと、もうスンゴイですよお。
1995年の8,716万人がピーク。直近の統計で言うと2015年から2020年の5年間で230万人も減っています。この後、順調に数百万人ずつ減少していって2065年には4,529万人とピーク時からほぼ半減してしまうんですね。
よく「少子高齢化で人口が1億人を大きく割り込んでしまう!」みたいな議論を見ますが、問題の本質は人口が8,000万人になってしまうことじゃないんです。生産年齢人口が半減しちゃうことなんですね。これは経済学のオールドスクール的思考法を持ってすれば、至極当然の危機意識だと思います。
4. 酷すぎる日本の出産費用
「でッ、どんな対策すんの?」
という話になるんですけれども、岸田さんの話は何も出てきてないので取り敢えず捨象しまして、ぼくは大きく分けると、大学進学にかかるまでの教育費、結婚制度ではなく新婦の父親が花嫁の手紙で泣かなければならないという同調圧力にかかる超クソ高い結婚費用、そして一番大きなものは恋愛と出産に関する価値観にあると考えているのですが、本稿では出産について取り上げて論じてみたいと思います。
というのも、個人的にほろ苦い思い出があるんですね。
何を隠そうぼくは二人のお子さんを抱えて生活しているのですけれども、長男が誕生したのが2005年、ぼくが起業した年と同じでした。起業したばっかりだし、まだ27歳で貯金はないし、ヤベェ、出産費用どんくらいかかりますのん?とビクビクしていたわけです。
その時、出産一時金というものがある、と初めて知ったんですね。女性はともかく、独身男性、多分、ほとんど知りませんよ、この制度。という広報のマターは神棚の上に飾っておきまして、そのとき出産予定の産婦人科医の出産費用が35万円くらいだったと思います。結構、福岡では有名な産院です。そして、確かぼくの記憶では福岡市の出産一時金が30万円くらいだった。
「あ、5万円出せばいいんだな」
とホッとした記憶があります。しかし、これは最初に立て替えておかねばならないし、纏まったお金を一時的にも準備できない人もいるだろうし、最終的に手出しとなる5万円も重くて困っている方々もいるかもしれないという問題もあります。
それから4年経って、2009年、2人目となる長女の出産を迎えます。
このときはもう2人目ですから、いかにデリカシーのない男のぼくでも、出産一時金を知っていますからね。いったい幾らもらえるんだったったけ?と調べてみたわけです。
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