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星に駆られて

頭上には満天の星空が広がっている。
黒のキャンバスに散りばめられた宝石細工のように、数多の星々がきらきらと輝いている。

辺りはしんと静まり返り、星の明かりを除いて真っ暗だった。
僕とこの星空だけが存在している。
それは決して錯覚ではなかった。

スマホでも、ミラーレスでも、目の前に広がる景色をそのまま写し取ることはかなわなかった。
確かに、ある程度までは写し取ることに成功していた。
しかし写し取られたものは、僕の目の前に確固として広がっている、この星空ではなかった。

この景色を、この感動を、誰かに伝えることはできるだろうか。

「煌々と輝いている」とか「星が寒さに磨かれて冴え返っている」とか、言葉を好きなだけ飾ることはできる。
でもなんだか、言葉を飾れば飾るほど、この星空の美しさから離れていくような気がした。
言葉に甘えているな、と僕は思った。

言葉というやつはなんと無力なのだろう。
どれだけ言葉を重ねても、ただ指でさし示すことには敵わないのか?

ふてぶてしい気持ちで、星々と僕だけの世界に閉じこもった。

(202304 岩手県久慈市にて)



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