森水学園創始者・森水生士センセが語った「カタカムナ」の楽しみ方
森水学園第三分校のWEBサイトにある「森水生士『カタカムナ事件』の真相を語る」のダイジェスト版をこちらにも掲載しておきます。
以下は、森水学園の創始者・森水生士(生物学者)と、学園の音楽担当講師・林田光が、1978年の春頃、酒を飲みながら交わした会話を、同席していた用務員の杜用治さんが書き残していたもの。
カタカムナを楽しむ──森水生士の話
林田:……そもそもカタカムナって、どこまでまともな話だと思ってらっしゃるんですか? 森水センセは。
森水:う~ん、最初は面白くてぐいぐい引き込まれたけど、今はまあ……楢崎皐月が書いたファンタジーなんじゃないかと思ってるよ。
林田:え~? 信じてなかったんですか、センセは。あの、金鳥山で平十字というマタギみたいな人物と遭遇してどうのこうのという話も全部作り話だと……。
森水:作り話というか、まあ「小説」みたいなものなんじゃないかな。……あ、同じか。でも、あのくだりはなかなかいいよね。
鉄砲を持った猟師風の男が現れて、腰には仕留めた兎をぶら下げている。で、「狐は撃つな。兎ならくれてやる」とか言って、腰にぶら下げていた兎を放ってよこしたなんてところは特にね。リアリティを出そうとしたんだろうねえ。楢崎は理系の人間だから、文学的なものを創作することに憧れみたいなものを持っていたんじゃないかなあ。
林田:じゃあ、カタカムナのウタヒも全部楢崎の創作ですか? あの文字も楢崎が発明した……と。
↑ ヒフミヨイのうた
森水:多分ね。よくできているよねえ。カタカムナ文字って、ものごとの移り変わりとか変遷とか森羅万象とか、いろんなものを文字そのものに込めている感じでしょ。
例えば、ヒフミヨイ ムナヤコト は、太陽が東から昇って沈んで、地球の裏側を回って、最後に「十」の文字になる。これが日本の数の数え方、ひい、ふう、みい、よ、いつ、む、なな、や、ここのつ、とお……の音なんだよね。
カタカムナ文字の50音表
林田:しかも、いろは歌みたいに、50音を重なることなく1回ずつ使っている……と。
森水:そうそう。苦労したと思うよ。
林田:あの「ヒフミヨイのうた」って、うたとしての意味はあるんですか?
森水:もちろん意味はあるでしょ。「マワリテメクル」は「回りて巡る」って読めるし……
林田:他の部分は?
森水:僕は何度も挑戦してみたんだよ。なんとか平易な文章として読み解けないか、って。で、例えば……ね……ヒフミヨイ ムナヤコトは数の数え方でもあるから、まあ置いておいて……
マワリテメクル (回りて巡る)
アウノスへシレ (合うの術知れ)
カタチサキ (形先)
ソラニモロケセ (空にもろ消せ)
ユヱヌオヲ (結えぬ尾を)
ハエツヰネホン (生え 終 根本)
……とかね。
林田:それって、どういう意味になります?
森水:「回りて巡る」は分かるだろ? 物事はすべて循環しているってことだよね。物質循環、大気の循環、海水の循環、生態系の食物連鎖とか、すべてそう。回って元に戻ることで永続性が確保されているわけ。
林田:はあ……
森水:「合うの術知れ」というのは、命令形だね。合うというのは合成、結合、合体、融合……別々のものが合わさって新しいものになること。その技術を知りなさい……と。
人間の心の話だととらえれば、心と心を合わせることを学べ……と。愛の説法ともとれるね。
林田:はあ~、ちょっと分かりづらいけど、まあ、そのへんまではよしとしましょうか。
森水:よしとしてくれるか。じゃあ、次は「形先」な。これは、人間はみな、最初は目に見えるものしか認識しない。生まれて目が開いて、この世界を視覚でまずとらえる。
林田:目が見えない人は?
森水:手で触って形をとらえようとする。「形から入る」なんて言葉もあるだろ?
林田:それはちょっと意味が違うんじゃないですかね。
森水:そっか。ちょっと言葉が上滑りしたな。……とにかく、人間は形のあるものを先に認識する。でも、それは表層の世界でしかない、っていうことを言っているんだね。
林田:書いてありますか? そんなこと。
森水:まあ、まあ。で、先にいこうか。「空にもろ消せ」だね。これは「形」がまずあるけれど、それを空に向かって消さなければならん、と言っているわけ。
林田:形を空に?
森水:そう。ここがすごく重要なポイントなんだよ。
形あるものは必ず壊れる。劣化する。朽ちる。後にはゴミが残る。ゴミが残ったままだったら、この世界はゴミだらけになって住めないだろ。
林田:エントロピー増大の法則ですね。
森水:そう。森水学園で教えようとしている最重要テーマだね。形あるものは必ず壊れる。汚れる。壊れた後のゴミを空に向かってモロ消せ、っていっているんだね。
林田:モロ?
森水:これはまあ、もろもろ、とか、もろに、とか、もろとも、の「もろ」だね。allという意味に近いかな。もろもろのゴミを全部空に向かって消せ、と。 物質循環の輪にのせて、ゴミを分解し、最後は熱になり、それを水蒸気にくっつけて地球外に運び、宇宙、つまり空に向かって熱を放出することで増大したエントロピーを捨てるわけだね。これが「空にもろ消せ」の真意だな。
林田:う~~ん。かなり苦しいような……。次はどうなります? 「結えぬ尾を」って……尾って尾っぽの尾ですか?
森水:これは比喩だね。尾というのはウンコの出口、つまり肛門の上にあるだろ。これがうまく結べないと、ウンコがくっついちゃう。
林田:ええ~? それはいくらなんでも無理が……
森水:いや、もう少しきれいに言えば、尾は結末、最後のまとめ、みたいな意味ね。「結えぬ尾」というのは、「結べない結末」……最後まできれいに始末できないものだね。やっかいなもの、ってことかな。
林田:う~ん、かなり苦しいような……。
森水:うん、まあ……このへんはね、もう、50音もわずかしか残っていない最後のほうだからね。多少の無理はしょうがない。
林田:しょうがないんですか。天才・楢崎皐月もこのへんで苦しんだ……と。
森水:もともと文系じゃないしね、彼は。もしくはね。「ゆえ」は「理由」という意味の「ゆえ」ととらえてみることもできるかな。「ゆえに」の「ゆえ」だね。続く「ぬ」は打ち消しの語だから、理由がない、つまりどうしようもない、分からない、人知を尽くしても解決できない、という意味になる。
林田:そのあとの「おを」は?
森水:この場合、「お」は悪心とか悪寒とかの「お」かな。悪いもの。「どうしようもない、どうにもならない悪いものを」ってことになるね。ああ、こっちのほうがいいかな。
林田:いいかな、って、センセ、ずいぶんぐだぐだじゃないですか。
森水:そらそうだよ。楽しみながらやっているんだから、いいんだよ。その程度で。
林田:じゃあ、「どうにもならない悪いもの」ってなんですか?
森水:そりゃまあ、物理学的に考えれば、エントロピー増大の法則のように、避けられない劣化とか、肉体の死とか……。我々人間に対していえば、歳を取って顔はシワシワになり、オシッコもちびったりして、だんだん醜くなるという宿命。内面に目を向ければ、欲望とか虚栄とか嫉妬とか……誰もが持っている、ごまかしようのない欠点というか、弱さかな。
林田:それをどうしろと?
森水:「空にもろ消せ」といっているんだね。全部を受け入れて、悟って、空を見上げて大きく息を吐き、水蒸気と熱にして放出する……
林田:え? それって前の「形先」に対しての話じゃなかったんですか?
森水:前にも後ろにもかかるんだね。この「空にもろ消せ」は。形あるものがエントロピー増大の法則に従って最後はゴミになる。そのゴミは生物循環、物質循環、熱循環、大気の循環などにのせて空に運んで消しなさい。また、人としての避けようのない悪、弱さもまた、空に向かって捨て去りなさい……と。
で、重要なのはね、「空にもろ消す」ためには地球上の物質循環が必要でしょ。ものを循環させるためには、食物連鎖があって、バクテリアがゴミを分解して熱に変えたり、風が吹いたり、雨が降ったりしなければいけないわけ。そのためには森と水が健全であることが絶対に必要だ……と。
さらには、物質循環にのせて空にもろ消せないもの、地球環境の中で始末できないような汚物を発生させてはいけない、ということにもなるわな。
林田:う~~ん。まあ、いいでしょう、じゃあ、最後、「ハエツヰネホン」が「生え 終 根本」って、これまったく意味が分かりませんが。
森水:生えは生まれるってこと。誕生だね。「終(つい)」は文字通り終わりだね。だから、始まりと終わり。阿吽だね。物事の始まりから終わりまではこのようになっている。これが世界の根本原理だよ、と結んでいるわけだね。見事じゃないか。
フルバージョンで読みたいかたは「森水学園第三分校」のWEBサイトへどうぞ。⇒こちら
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