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読書感想 : 押見修造「血の轍」

「血の轍」の最終話を読んで「老人と海」を思い出した。結果だけ見ればたわい無いかも知れないが、過程を知っているから重みがある。夢野久作「線路」にも通じるものを感じる。結局本人しか知り得ないことがある。思想、思考、苦悩、信念、尊厳、価値観、美意識、生き方、評価されない努力。 押見修造さんの作品や純文学などを読むと、それらを肯定してもらえるような、共感してもらえているような、そんな気分になれる。 しかし、読むだけではなく、その内側に秘めたものを書きたくなった自分がいるのも事実だ

    • 小説#1「白銀の世界」747字(5分以内)

      テレビの画面に事件のニュースが映し出された。 私は、なぜか、被害者に対し「ざまぁ見ろ」と思ってしまった。「死んでしまえ」とも、「どうせお前が悪いんだろう」とも思った。事件の詳細も何も知らないままに。 私は大変正義感の強い人間であった。悪を懲らしめるために、磨き上げてきた、触れただけで内臓まで抉るような、鋭利なガラス槍が私に突き刺さる。 その創傷から黒い罪悪感がぐぢゅぐぢゅと、とどまることなく溢れ出した。 私は、たちまち黒い罪の意識に呑まれていった。先ずは全身を、まるで

      • 「君たちはどう生きるか」に対する答え

        「君たちはどう生きるか」  私はこのタイトルに惹かれて、映画館に足を運びました。どう生きればいいのか、その答えの提示を期待していました。ですが、見終わっても答えは見つからず、よく分からないままモヤモヤとした日々を過ごしました。  しかし、太宰治の随筆「ア、秋」をたまたま読み、この映画タイトルの問いに対する発見があったので皆様と共有したいと思います。(映画に対する若干のネタバレを含みます。あくまで個人的な解釈であるということもご了承下さい。)  突然ですが、皆様は「秋」をどう

      読書感想 : 押見修造「血の轍」