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(連載)「ボカロアーカイブス一五一八」第0.1話 “前史、2014年”

どうも。田沼ハルです。
そうなんです。0.1話なんです。

(↑こちらに今回の連載の趣旨や注意事項等を書いておきましたので、先にさら〜っと目を通して頂けると幸いです。)

それで今回なんですが。
第1話にて、前史として2014年以前のボカロシーンについて触れようとしたところ、思ったより「長えし暗えし」という事態になってしまいました。

基本的には明るく楽しく分かりやすく!というコンセプトの連載なので、「のっけからそんな話をするのもな...。」と思い、一時はお蔵入りも考えました。

しかし今後のボカロシーンの歴史を語る上で重要な話題だと考えましたので、結果的に当記事に残しておくことにしました。(折角書いたものを寝かせておくのも勿体無いので!!!)

ですので、今回はその旨をご承知おきの上でご覧いただけますと幸いです。また、ここに記すのはあくまで私個人の見解です。

という事で第0.1話、「前史、2014年」スタートです。どうぞ。


DECO*27「ストリーミングハート - 初音ミク」
2014/3/21投稿

まずは当時のボカロを取り巻く状況について、少し時を遡り2014年から簡単に解説していきます。

まずはボカロシーン総本山であるニコニコ動画について。
同時のver.はニコニコ動画:GINZA。

この頃のニコニコ動画における大きなニュースとしては、2014年2月14日より3DSでのダウンロード版ソフト「ニコニコ」が配信された事が挙げられます。

2012年にAndroidアプリ、2013年にiPhoneアプリをリリースしたニコニコ動画。しかしここに来て3DSに対応した事はかなりインパクトのあるニュースでした。(ちなみにYouTubeの3DS版ソフトは2013年12月10日に配信開始)

筆者を含む当時の子ども達にとって、3DSは最も普及したネットへのアクセス手段でした。
読者のみなさんの中には、このタイミングでニコニコ、ひいてはネット文化に初めて触れたという方も多いでしょう。

この3DSニコニコソフトは半年で約100万DLされ、ニコニコ動画に大量の新規若年ライトリスナー層が流入しました。

さて、2014年のボカロシーンを語る上で、どうしても避けて通れない問題があります。
それは、ニコニコ動画におけるボカロ新曲再生数の不振です。

2013年、ニコニコ動画内に投稿されたボカロ曲で、投稿から1年以内にミリオン再生(100万回)を達成した楽曲は計16曲。(ロストワンの号哭やカゲプロ関連楽曲、ドーナツホール、妄想税など)

対して2014年はDECO*27氏のストリーミングハート、Crusher-P氏のECHOの計2曲のみです。

今でこそ1000万回以上再生されているウミユリ海底譚と、アスノヨゾラ哨戒班を擁する2014年のボカロシーンですが、当時の新曲再生数はこのようにかなり低調でした。
(ちなみに年内ミリオン数は2014年に底を打ち、2015年も4曲と低迷、その後2016年に脅威のV字回復を見せ過去最多の20曲という数字を叩き出します。)

この時期突然発生したボカロ新曲再生数の不振。
そのハッキリとした原因を特定する事は難しいですが、考えられる要素として以下の2点を考察します。

①ボカロシーンで大きな影響力を持つ大手ボカロPの投稿休止。

②ボカロリスナーにおける世代交代(ミドルリスナー層の流出)と、若年層ライトリスナーの流入。


まず①について。2013年のボカロシーンを最も盛り上げていたのは、やはりじん氏の「カゲロウプロジェクト」関連楽曲です。前述した年内ミリオン16曲のうち、同氏の楽曲は実に半数の8曲を占めます。
この数字だけを見ても、当時のカゲプロの人気っぷりは疑う余地が無いほど凄まじい物だったのが分かります。
またカゲプロと双璧を成していた人気シリーズがKemu氏の楽曲群です。同氏はボカロの歴史上初となる投稿楽曲全てがミリオン再生達成という偉業を成し遂げました。

しかし、これらカゲプロ関連とKemu氏のボカロ投稿は、2013年内をもって一度終了します。

もちろん2014年、DECO*27氏やNeru氏など、多くの固定ファンを持つボカロPが現役で活躍していましたし、n-buna氏やorangestar氏という新世代の有力ボカロPとして注目される存在もありました。

ですがこの時期、ある種の世代交代における有名ボカロPの空白期のような現象が生じていた感は否めません。


その流れを特に決定付けたのが②、リスナー層の世代交代、3DSからニコニコ動画に新規流入してきた若年ライトリスナー層の存在だったのではないでしょうか。

ニコニコ動画ボカロシーンで楽曲が再生されるサイクルを雑に説明すると、

①小数のヘビーリスナー層は新曲を発掘、再生。

②各Pの固定ファンを含むミドルリスナー層は、好きなPの新曲や既存曲、新着ランキング上位に浮上した新曲を再生、拡散。(注目された新曲は歌ってみた等の2次創作も増え始める)

ライトリスナー層は既存有名曲や話題になった新曲を再生。ここで新たなヒット曲が生まれる。

①に戻る

...雑ですが概ねこういった流れでしょう。
ここで重要になってくるのは「ライト層、ミドル層、ヘビー層の人口比率」です。

特に注目すべきは、従来の有名ボカロPが投稿を休止した事で発生した、固定ファンを含むミドルリスナー層の流出。そして若年ライトリスナー層の流入です。

2014年のボカロシーンでは、次のようなサイクルが発生していたと考えられます。

①小数のヘビーリスナー層が新曲を発掘、再生。

ミドルリスナー層は基本的に好きなPの新曲を再生。新着ランキング上位に浮上した楽曲も再生するが、2013年以前と比べて層人口が少なく拡散力に欠ける。

③人口の多いライトリスナー層は主に過去の有名既存曲を再生。その為既存曲がランキング上位に留まり続ける。

①に戻る

このように、新曲がランキング上位に残りづらい環境であった事が考えられ、これが先述の有名ボカロPの空白期、ひいては新曲再生数の不振に繋がったのではないでしょうか。

さて、ここまでボカロ新曲再生数の不振によるボカロシーンの低迷期について語って参りましたが、結果的にはこの2年後、ボカロシーンは奇跡のV字回復を遂げ、第2の全盛期と言われる時代を迎える事となります。

この連載では、これからどの様にしてボカロシーンがその勢いを取り戻したのか。その理由についても考察し、迫っていきたいと思います。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

繰り返しますが、本記事で記した話題は私自身の憶測が含まれ、必ずしも正しいと言える見解では無いかもしれません。

ただいずれにせよこの時期、ボカロシーンの再生数が低迷していた事は事実です。
そしてその要因を考える事が、ひいては2016年以降のボカロシーン大復活の理由を探る鍵になるかもしれない。私はそう考えます。

という事で本編、第1話の方へ進めて参ります。
次回もお楽しみに。

それでは!

orangestar「アスノヨゾラ哨戒班 - IA」
2014/8/19投稿

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