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インバウンドバブルの影で ~沈みゆく地方百貨店~

 三越伊勢丹ホールディングスが14日に発表した2024年度決算によると、同社のインバウンド売上高(国内百貨店計)が過去最高の1088億円となりました。

 コロナ前のピークだった2018年度に比べ45%増と大きく伸びている計算ですから昨今の円安の影響も大きいと思われます。

 同日行われた決算会見で細谷社長は「中国本土からの訪日顧客がコロナ前を割り込んでいるが、その他のアジア地域からの訪日客の売り上げが拡大している。2024年度の国内百貨店計では、インバウンド売上高1563億円(2023年度比44%増)を見込んでいる。また、次期中計以降、外国人顧客向けアプリの導入により、すべての顧客を識別顧客とし、つながりを世界に広げていきたい」と意気込みを語りました。

 また、伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店・三越銀座店3店舗計の国別・地域別売り上げシェアでは、2018年度は中国(本土)74%、アジア地域21%、その他5%だったが、2023年度は中国(本土)40%、アジア地域49%、その他11%となっているようです。

 一方で、好調な全国百貨店と違い、地方の百貨店は苦戦を強いられています。人口減少やネット通販の台頭などにより、地方の百貨店は閉店を余儀なくされるケースも見られます。鹿児島県の老舗百貨店、山形屋が私的整理による経営再建を目指すことになったというニュースは記憶に新しいかと思います。

 そんな地方百貨店が直面している課題は多岐にわたりますが、主な課題は5つになると考えています。

 1つ目は市場縮小と人口減少です。 地方百貨店は地域全体の市場縮小と人口減少に直面しています。特に東京等の三大都市圏以外では、人口が約5%減少、生産年齢人口は約12%も減少しており、これが消費市場の縮小に直結しています。消費者が減っているので、普通に営業していても売上は右肩下がりというわけです。

 2つ目は中心市街地の変化です。百貨店は伝統的に商業集積の中心として栄えてきましたが、交通機関、特に車社会の発達により人の流れが変化し、百貨店の立地が中心市街地ではなくなってきています。公共交通機関を使う人が減ってしまっているわけです。

 3つ目は大型ショッピングセンターの進出です。自家用車の普及に伴い、郊外型大型ショッピングセンターの進出が顕著になっており、百貨店からの顧客流出を引き起こしています。地方百貨店は、そんな大型施設との競合に苦戦している状況です。

 4つ目は建物の老朽化です。多くの地方百貨店は建築後40年以上が経過しており、建物の老朽化が進んでいます。改装や建て替えが必要な状況にもかかわらず、資金の確保が困難となり、競争力を失っているという悪循環に陥っています。

 5つ目は情報の優位性の喪失です。かつては「百貨店」の名の通り、見たこともない商品置いてあり、さらに人が集まることで情報の発信拠点としての役割を果たしていた百貨店ですが、インターネットの普及により、地方百貨店が持っていた情報の優位性が失われています。消費者はスマホなどで世界中の情報をリアルタイムに得られるため、百貨店を訪れる必要性が低下しているのです。

 これら課題に対処するため、地方百貨店は新しいビジネスモデルの開発、地域社会との連携強化、デジタル化の推進など、多角的な戦略が求められていますが、同時にその人材を確保するための魅力も失われてしまっています。ただし、スマートシティの観点から見ると、地方都市の中心市街地活性化において、百貨店が果たす役割は依然として大きく、地域経済にとっては重要な存在であることを再認識し、官民一体となって、その価値を高める取り組みが必要なのだと思います。

 自分は、よくニュースで見かける「閉店が決まってから」来店するお客さん達を見ると商売は難しいなと思います。「もっと頑張って欲しかった」とかコメントを見るとニーズに応えられなかった企業側の努力不足だけでなく、地域としてお店を支える姿勢も必要なのではないのかなと思うことがあります。

 まぁ消費者視点では企業には常に「生活向上」をモットーに、豊かで便利な生活を企業努力で実現して欲しいと願っていますが・・・。


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