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たのしいファイリングとマイニング

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USBに入っていた色んな出来かけの話。
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2作目:『文学は黙ってろ!』

2作目:『文学は黙ってろ!』



 こないだのことを書いてみますね。できるだけお文学的に。そうだ副題をつけましょう。《「永訣の朝」と「無声慟哭」によるNachdichtung》



 朝、万年床横の灰色いカーテンをひっぱると、すりガラスごしにぼやけた光がゆっくりと入ってきた。窓の外はへんに明るくて、へんに静かだった。それで、ああおもてでは雪でも降ってんだなって思った。二重窓を一気に開けて、それから深呼吸をした。冷たく、つ

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1作目:『物語りが閉じない』

1作目:『物語りが閉じない』

 太宰治の『春の盗賊』を例に挙げて、白髪で刈り上げ頭の中木教授は、すべてがフィクションであること、について、また、そうであるならば反転してすべてがリアルであること、について、少しだけ声を張って説明した。少しだけ。



 まだまともに大学に通っていた頃のUSBを引っ張り出すと、中から大量のファイルが出てきた。それらの多くは書きかけで、なにかの話の導入や、気まぐれで書いた日記、レポートとかだった。

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