ドイツのアザラシから新しいポックスウイルスが見つかった
ドイツの北海に棲息するハイイロアザラシから病気をもたらす新しいポックスウイルスが見つかったというお話。
Detection of Novel Poxvirus from Gray Seal (Halichoerus grypus), Germany (Emerging infectious diseases)
保護したハイイロアザラシの皮膚病変が発見され、その後3週間の間に呼吸困難や嘔吐が見られたという。その後病原体を調べると新しいポックスウイルスが同定され、北海のWadden海という場所にちなんでWadden sea poxvirusと命名されたと。アザラシに症状を引き起こしたウイルスであることが報告されている。
今回は英語でGray sealというハイイロアザラシで、ハイイロアザラシ属に含まれている。アザラシにも色々種類があり、少年アシベに出てくるゴマちゃんはゴマフアザラシ属、多摩川のたまちゃんはアゴヒゲアザラシ属で、アザラシはアザラシでもハイイロアザラシは別のグループのアザラシになる。
アザラシはもともと陸の動物から海に適応できるように進化したと言われているみたい。
しかし他の種類のアザラシ(ゴマフアザラシなど)からも別のポックスウイルスが感染していたことも報告されている。
さらには他の鰭脚類(アシカ、トドなど)からもポックスウイルス感染が見つかっている。
上の図がポックスウイルスの系統樹。Detection of Novel Poxvirus from Gray Seal (Halichoerus grypus), Germanyより
たくさんの動物からポックスウイルスが見つかっている。
色々見てみるとカンガルー、ラクダ、あらいぐまやスカンクから見つかったのかなと思われる名前のウイルスも…。
有名どころでいえば痘瘡(痘そう、天然痘)の原因のvariola virus、エムポックス(サル痘)の原因のmonkeypox virusや、子どもの水いぼの原因である伝染性軟属腫ウイルス(Molluscum contagiosum virus)など、ヒトに病気を引き起こすポックスウイルスがいくつか知られています。
今回見つかったアザラシのウイルスが直接ヒトに影響することは知られていない。
しかし、天然痘ワクチンとなる種痘を発明したジェンナーは、もともと牛に感染する牛痘(cowpox virus)に感染した人からヒントを得たという話もあるし、いつどこで動物の種を飛び越えて感染する可能性もある。
そのため、かわいくても動物(特に野生動物)との接触には注意した方がいいでしょう。
現在の種痘ワクチンは牛痘ウイルスではなく、ワクシニアウイルス(Vaccinia virus)という別のポックスウイルス。
そもそもジェンナーの種痘の時代から牛痘ではなくワクシニアウイルスだったという話もあるみたい。
Image by Wolfgang Vogt from Pixabay