【8人目】2回目の一目惚れ(21歳)
21歳になる歳、東京内で転職した。第二新卒と呼ばれる立場だったが、採用数が多いために単に新卒扱いであった。
配属初日の挨拶は緊張していた。挨拶を終え、見渡すと、肌の白い男性がいた。かっこよかった。後に高野さんという名前であることを知った。
1週間後、休憩時間にエレベーターで一緒になった高野さん含む4人でランチに行った。気をつけるべき上司や、美味しいランチを先輩から教わった。高野さんは美術館巡りが好きと言っていた。
2日後、高野さんがコロナに感染してしばらく休む事になった。私も一緒にランチをした頃から、自宅待機となった。
高野さんから謝罪のメールが来ていた。チャットで気にしないでくださいね、と返した。すると、実は回復したんだよね、暇すぎてネトフリ観てる等たわいも無い会話をした。
1ヶ月後、朝高野さんと同じエレベータに乗った。今しかないと思い、勇気を出して連絡先教えてくださいと言った。喜んで、と交換してくれた。
なんて連絡しよう…と悩んだまま夜になった。ヘッダーが美術作品の写真だったので、その流れから美術館に誘おうと作戦立てた。
「高野先輩、よろしくお願いします!ヘッダーの写真ダリですよね。美術お好きなんですか?」
『そう、よく知ってるね。趣味でよく美術館行くんだよね。もしかして美術好き?』
よし、ラリーが続いている。
「そうなんです、よかったら現代美術館で開催中の展示行きませんか?」
なんと同時に先輩から
『よかったら、明日のランチ一緒に食べない?』
「お誘いの渋滞(笑)ランチ行きましょう!」
『俺も気になってた!ランチで予定立てよう』
ランチでは、最近行った展示やカフェの話をした。今週の金曜日、午後休を一緒に取って展示に行く事になった。そしてインスタを交換し、彼女の影はなかった。一緒に有給はやばい。
当日、一応別々に駅に向かった。高野さんは私服に着替えていた。シルバーリングを付けていた。アクセサリーつける系男子との接点は今まで無かったが、高野さんなら許せた。
展示を一通りみて、ロビーでくつろいでると、高野さんが「今度、この展示行かない?」と展示のポスターを指差して言った。2回目もあるんだと嬉しくなった。
夜は一緒に飲みに出た。コロナ禍の飲みは控えていたけど、高野さんと一緒に居たい気持ちの方が強かった。前の彼女と同棲していたが、現在はいないこと。渡部代理が大事な会議を水道管修理で休んだ愚痴。お互いの恋愛観。潔癖ではないけど、整理整頓が行き届いていないと嫌なこと。全部「私も」と相槌打って解散した。
翌朝、突如高野さんから電話が来た。「来週の土曜日、昨日言ってた展示行こうよ」思わずガッツポーズした。
それからも毎日会社で顔を合わせ、連絡を取り合った。
そして土曜日、カフェへ行って、展示を見て、また飲む事になった。なんと高野さんが歩く先はラブホ街。警戒心MAXだったが、ラブホ街のすぐそばの居酒屋に入った。
そこでは元カノの話や、下ネタを話した。このままセフレ落ちかと思って落ち込んだ。
セフレ扱いされるなら先に分かったほうがいいと思い、帰り道家に誘った。けど、断られた。明日予定あるしって。
帰ってから電話が来た。今日はごめんね。明日朝早くてさ。誰にでも誘ってるの?と聞かれた。実は…と胸の内を話すと笑っていた。
そして、毎週会う仲になった。
ある時は、下北沢に連れて行かれ、デートの最後に見た映画にその日回った場所が全てでてきたり。私の資格試験の日には、お守りにって高野さんが付けてるシルバーリングを渡してくれた。アクセサリーを見ていて、2人とも気に入ったからと言って、同じリングを買った事もあった。
ある日のデートの帰り、高野さんは私にキスをした。付き合おうと言う言葉は無かった。なんでキスしたのか聞いたら、したくなったと言った。
またねって言うと、次あるか分からないと言われた。なんでって聞くと、キス嫌だったんでしょって言われた。
そんな事ないよって、私からキスをした。
ある日、我慢しきれず、付き合う気があるのか聞いた。
「付き合い気はある。ただ元彼との犬を飼っているのが気になってる。元彼とまだやり取りがあるんだろう。でも、好きだから付き合いたい。」
そう、うちには元彼と飼ったチワワのシロが居た。
その日の夜は今までの反動で翌夜まで肌を重ねた。
それから高野さんはうちに来るようになった。シロを可愛がってくれた。シロを閉じ込めて、くぅんと泣くのを可愛いと言っていた。
高野さんが家にくる前、家の掃除が欠かせなかった。シロの毛が付くのが許せないらしい。洗濯は3日に一度だったが、1日一回に変わった。
ある日私が家に帰ると、シロが舌を出して横たわっていた。その時高野さんはうちでお風呂に入っていた。私がシロに水を飲ませると、シロは落ち着いた。ただ、真っ直ぐ歩けないようだった。
高野さんはシロを持ち上げ、遠くに置いた。シロはフラフラ歩きながら私の膝の上にきた。それを面白がって2度程繰り返した。
私は無言でシロを奪い、病院へ向かったが、特に異常はないとのだった。
それから2週間後。その日、高野さんは仕事を休み、友人と遊びに出掛けていた。
仕事から帰ると、シロがゼェゼェ言いながら横たわっていた。急いでタクシーで病院に連れて行くと、入院になった。
酔っ払った高野さんから電話が来た。シロどうなったの?と聞いた次には、今日楽しかったと言う話をしてきた。不安なら今から行くよ、と言われたが断った。
翌日の昼、シロが自発呼吸をしていないと病院から連絡があった。急いで病院に向かった。結局、シロは安楽死を選ばざるを得ない状況だった。
シロと一緒に家に帰ってきた。その日は高野さんが仕事帰りに家にくる日だった。
高野さんが家に入ってすぐシロを見て、これは無理と言って、シロが入った箱の蓋を閉め、隅っこに置いた。
私がお風呂から上がると、高野さんの姿はなかった。私の家に置いて行った高野さんの服も無くなっていた。
携帯を見ると「今日はごめん。一緒にいるべきなんだけど、俺個人の理由とシロの死骸が理由だ」
シロの”死骸”と言う言い方がとっても嫌だった。
その後話を聞くと、仕事を休んだ日、女の子と遊びに行っていたらしい。俺個人の理由とはこれであった。
その後、高野さんから振られた。私とは価値観がとても合って、このまま将来のことも考えられればと思っていたと言った。
「高野さんは幻の私しか見ていない」と答えた。
別れてからも偶にランチに行って話した。あの日の女の子とは無事付き合ったらしいが、振り回されて終わったらしい。その後、年上の女性と付き合っており、交際は順調そうだった。
シロ、大好きだよ。
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