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【3人目】愛と恋の違いが分からなかった(16歳)

 中3の卒業式後、高校入学前。当時付き合っていた陸都にデートの日の朝にドタキャンされた。
 入学式前にSNSで繋がるのが当たり前の時代。既に何人か友達がいた。そのうちの1人偉王(いお)と連絡を取ってる中で「代わりに俺が遊んでやろうか」と言ってくれたので会うことにした。


 待合せ場所で待っている時「ごめん、無理になった」と偉王から連絡が来た。今日はとことん駄目だと思ったその瞬間、「騙されやすいな」と言いながら偉王が現れた。今思えば、この一言が後に全て繋がる。

 カラオケに行き、夜景の綺麗な場所に連れてってくれた。小さい頃からダンスをしてきた話、音楽で夢を叶えたいこと、いじめられた事、いろんな話をしてくれた。
 別れ際、無言で見つめてきて、キスをされた。その瞬間、この人と付き合いたいと思った。


 入学式後、偉王は時間の全て私に充てた。既に私は陸都と別れていたが、偉王には彼女がいた。
 ある日の帰り道「偉王には彼女がいるし、私も新しい彼氏を作る。何もなかったことにしよう。」と伝えた。正直、勝負だった。

 そして、勝負に勝った。翌日、偉王から「彼女と別れてきた。俺と付き合って欲しい」と言われた。


 それから、偉王とはたくさんの思い出ができた。学校で手を繋いでいたのを先生に見られ怒られたこと。誕生日の朝、始発で私の家まで迎えにきたこと。私の幼馴染の男の子が、私の頭を撫でてブチギレられたこと。偉王の友達のバイクで3ケツしたこと。偉王はバイトのお金を全て私に使ったし、バイト以外の時間を全て私に使った。

 ある日、偉王の家で過ごしてると、身体を触られた。俺はお前のこと愛してる。恋と愛は違うんだ。この行為は愛の上で最上級の行為だ。と言われ、すんなり受け入れてしまった。結婚するまでしないって思ってたけど、そんな事どうでもよかった。初めては痛すぎて、最後までは出来なかった。

 その日を境に、偉王の束縛は激しくなっていった。SNSをやめろ、男の連絡先を全て消せ、幼馴染と電車の時間をずらせ、全て抵抗したが、最後は私が折れていた。
 SNSを再度登録したいと言うと「お前は一度決めたことをすぐ覆すのか」と言われた。


 夏休みになった。親友の芽衣からの誘いで飲食店のバイトを始めた。偉王も同じバイト先に来ると言って聞かなかった。

 バイト中、私は醤油瓶を落としてしまった。ガラスの破片が飛び散り、目の上を切った。みんなに心配されたが、偉王は違った。
 「お前が心配されるのは女だからだ。俺も同じようなことがあったが心配されなかった。」と言った。

 「お前は色んな人に好かれてるよな。化けの皮をかぶってるもんな」
 「直ぐに意見をふらふら変えやがって、この弱虫が」
 この頃の私は偉王に怒られないように必死だった。


 夏休みが終わろうとしている頃、偉王は学校を辞めると言い始めた。そして、私にもやめて欲しいと言ってきた。幼馴染と学校で一緒に居ると思うと狂いそうになるらしい。
 当時の私は依存状態だった。苦渋の決断ではあったが、断った。すると翌日には、偉王と芽衣が付き合っていた。

 何が起こったのかわからなかった。芽衣の言い分だと、私が偉王と付き合ってから全然遊んでくれなくて嫌だった、これは私の事が好きだからこそだ、と言っていた。

 偉王からは、非通知で電話が来たり、夜中から朝まで連絡が来たりしていた。SNSはブロックしたが、芽衣には秘密にしてくれと一通のメールが来た。学校を辞めて仕事を頑張っている、芽衣の事は大切だけど愛せていない、まだ私を愛している、困ったときは連絡くれ、と言う内容だった。それ以降連絡は来なくなった。


 それから1ヶ月経った。生理が来なかった。ストレスのためかと思ったが、念の為妊娠検査薬を使った。薄らと陽性の線が出て、取り敢えず偉王に連絡してしまった。

 偉王は大喜びしていた。この子は産んでくれ、俺は芽衣と別れると言った。
 私は親に生理が来ないから病院に行きたいと言った。病院では、念の為と妊娠検査をされたが、妊娠していないとの事だった。正直安心したが、偉王に伝えにくかった。

 結局、私に悪阻がないことや、病院に通わないことを不審に思われたタイミングで伝えることになった。最初から嘘だったんだろう、と責められた。


 その後、偉王は一人暮らしを始めた。俺と一緒に暮らせ、学校もやめろ、お前は嘘つきだから信用出来ないと言われた。
 その時の私は従うしか出来なくなっていた。学校を辞めたくはなかった。偉王が寝ている隙に学校に向かい、偉王から鬼電が来て帰る。

 ある日、意を決して別れたいと伝えた。すると包丁を持ち出したが、どうせこの人は私を殺せないし、自殺も出来ないと思ったので焦らなかった。
 すると私に包丁を持たせ「俺を殺せよ。そうすればお前は犯罪者。俺への罪を一生償うことになる。そうれば、お前は一生俺と一緒だ」と言った。もう私はこの人から逃げられないと思った。


 結局、学校側が仲裁に入る形で、両者の親とが学校に集まり話し合うことになった。
 偉王は、俺は一度もお前に会いたいなど言ったことはない、お前が会いに来ているだけだ、とみんなの前で言った。私は泣きながら、じゃぁ何で優しくしたんですか、と言うのが精一杯だった。先に偉王側が退出する形で話し合いは終わった。
 偉王の元担任が「心配だと言う理由で、偉王から貴方が学校に来ているか、と電話で聞かれたことがあった」と言っていた。


 それからは、毎日平穏に学校へ通った。私の一連の出来事を不審がった人もいたし、変わらず仲良くしてくれる友達もいた。

 芽衣とは、もう偉王とは会わないという約束のもと、仲直りすることとなった。

 17歳へ続く。

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