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【5人目】優しい人がよかった(18歳)

 友達の紹介で知り合った蒼大に告白された。とにかく優しい人だった。元彼の偉王がDV気質だっただけに、次は優しい人と付き合いたいと思っていた。ヒデともこのまま付き合ってられない。次に進もうと思った。

 蒼大にとって、私は初めての彼女らしい。都度可愛いと言ってくれたし、私をしっかりしていると言った。別の学校だったけど、学校帰りはほぼ毎日会った。

 蒼大の家族も歓迎してくれた。蒼大のお母さんは、とても綺麗だった。家事をしているとは思えないぐらい。一度、浮気してたりして、なんて蒼大に言ったこともあった。


 ただし、難点は蒼大が馬鹿であることだ。テストの点数もすごく低い。私がちょっとニュースの話をしても何もわからない。このままじゃ、蒼大が大人になった時に困るだろう。母親のような気持ちだった。毎日ニュースの記事を共有したけど、蒼大が読んでくれたことはなかった。

 そんな蒼大は、唯一ファッションが好きだった。私が全然知らないブランドや古着を着こなしていた。私も芸術を嗜んでた故に、ファッションを糸口に社会を知ってもらおうと考えたのだった。
 しかし、そううまくはいかなかった。結局、知識を蓄える気はなく、見た目だけのデザインを楽しんでいるようだった。


 ある日蒼大はが「服飾系の学校に進学して、服をデザインする仕事がしたい」と言った。正直、自分が服を着ることの楽しさと、生み出す楽しさを履き違えてると思ったし、蒼大には合わないと思った。

 私がDJをしていた時、蒼大が行きたいと言っていた服飾系の学校とイベントで一緒になった事があった。私が主催するイベントにも参加してもらった事があった。学校の近くで先生に会った時には蒼大が受けるので、と話をしておいた。


 結局、蒼太は推薦入試の課題を前日まで取り組まなかった。痺れを切らした私がコンセプト等を一緒に決め、一緒に材料を買いに行った。

 結果は、特待生A。学費の全額だか、半額だか免除という結果だった。一安心した。


 ある日、蒼大から「歩道歩いてたら、バスに雨水かけられて舌打ちした」という話を聞いた。こんなに優しい人でも舌打ちするんだ、と思った。


 そして4月を迎え、蒼大は服飾の学校に入学した。毎日楽しそうだった。
 2週間経ったある日、私は蒼大に振られた。学校で好きな子ができたらしい。裏切られた気持ちだった。蒼大の進学先には、私の知り合いも沢山いたので様子は聞いていた。浮かれているようだった。

 周りは、私に向けて蒼大のことを、女を知らせてもらったくせに、こんな形で裏切るなんて最低だな、などと言っていた。

 蒼大のお母さんは、私との別れに涙した。正直びっくりしたけど嬉しかった。


 蒼大のお母さんから、お茶やランチに誘われて、友達のような感じだった。なぜ別れてからなのかが気がかりではあった。

 ある日の夜、呼ばれた店に行った。すると、蒼大のお母さんの他に、2人の男性がいた。どうやら、片方の男性は蒼大のお母さんのお気に入りで、もう片方の男性を私の次の彼氏にどうか、という話であった。
 帰り際、蒼大のお母さんはその男性と車に乗った。私は、もう1人の男性に送られる事になったが、正直気持ち悪かった。


 それから、蒼大のお母さんとは会っていない。

 蒼大は、服飾系の学校を卒業した後、DJをしながら、服を作る工場に勤めていると聞いた。主催するイベントに出て欲しいと誘われたが、仕事の都合で断った。

 友人の話によると、蒼大に現在彼女は居ないが、相当モテると聞いた。一つ前の彼女とは同棲までしていたが、お互い浮気をしていたらしく、別れたと聞いた。

 私で女を知った男は碌でもない男になった。褒めてるからね。



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