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出産まであと0日。当日



【オペ室、編】


自動ドアが開いたら、
ちゃんとオペ室で
テレビで見るやつと全く同じ
無機質なあれだった。

冷たい手術台に登り
怯える妊婦がひとり。

怖く無い、大丈夫って
自分を励まそうかと思ったけど
違うと思った。

怖いに決まってるんだから
怖いでいい。

オペ室の看護師さんが
大丈夫ですか?と聞いてくれたから

「大丈夫じゃないです、
めっちゃ緊張してます」

って言ったら


ずっと横にいる&医師&麻酔科医&助産師
とにかく万全の体制で何があっても必ず対応しますという旨の事を伝えてくれた。

【どうぞ存分に優しくして下さい】

と心の中で唱えつつ
怯えるわたし。

やった事無いことに挑戦するのは
やっぱり怖い。

横向きの姿勢で
脊椎麻酔と硬膜外麻酔を入れる。

痛いと聞いてたけど、
すごく上手にしてもらったと思う。

麻酔が効いて来たら
おしっこの管を入れるんだけど
感覚が割としっかりあって
また怯える。

「あの、麻酔入れてるのにこんなに
感覚わかるんですか?めっちゃわかるんですけど (涙)」


絶対我慢しないと決めた。
我慢してこれでお腹切って痛かったら
大変なことになる。自己開示できない自分の不甲斐なさに後悔して二度と立ち直れない気がする。



ぴーぴー言うから
麻酔を足してくれたんだろう、
今度は気分が悪くなって来た。

血圧が下がりすぎて
地面に沈んでいく気持ちの悪さ

声を出すのも苦しい中渾身の

『きぶんわるいです…』

上げたり下げたり大変だ。



意識がだんだん朦朧としてきて
ここと、ちがうところを行ったり来たり

電気メスの焦げた匂い
先生の声

すごく精密な事をしてる事がわかる


結構時間かかるんだな
なんて思いつつ


大好きな亡くなったおじいちゃんが
来てるのがわかった


おじいちゃんの名前がパッと出て来て

どこかから誰かが見てる


おじいちゃんもいるからね、
大丈夫だよって

赤ちゃんに伝える


ずっと赤ちゃんと
意識を通わせて来た。


今日、お腹切るからね

お腹切って出てくるんだよー

眩しくなるけど、
びっくりしないようにね

光の方に行くんだよ


朦朧としながらそんな事を。



『もうすぐ赤ちゃん産まれますよ!』
『頭見えてきましたよ!』

帝王切開なのに
頭見えてきますよ、なんて
言うんだと思いつつ


そうか、もうすぐか。


赤ちゃん、
こっちだよ

おいで

いくよ




『ベビー出るよ!キャッチお願いします!』

先生の落ち着いた中にも
緊張が混じる声


『はいっ』

助産師さんの真っ直ぐな声
1ミリもブレの無い
真っ直ぐな声


一瞬の凛とした静けさの中


赤ちゃんの泣き声がした

それと同時に
私も泣けた


良かった。
産まれた


めっちゃ泣いてる

赤ちゃんも、私も


誰かが涙を拭いてくれてる


大変だったんだよ
ほんとに

色々あったんだよ
まじで


嵐の日も、

『赤ちゃんを無事に産む』

そこだけを信じて
ここまで来たの


目指す頂は高いから
私はまだ登らないといけない
壁はあるけれど


自分を開く事ができたら
誰かが涙を拭いてくれるだろう

だから、
涙が渇くまで拭いてくださいと思った。


胸の上に赤ちゃんが来て
また泣けた。


可愛い。
私はまだお腹が開いたまんまだし
管だらけで動けず
お顔もあんまり見えないけど
存在が丸ごと愛しい


よく頑張ったね
ありがとう



帝王切開嫌だとか
下から産みたかったとか
散々思ったけど

本当に、
どれだけの人が
どれだけ真剣に
私と赤ちゃんの安全を
守るために尽力してくれているのか

本当にありがとうと
感謝が沸いた。


早くパパに会いたい。
パパの顔が見たい。
私よりも不安な顔して
送り出してくれたパパに
赤ちゃん無事に産まれたよって
見せてあげたい。






















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