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離婚ほやほや!ジェントルされ夫と板橋ミーティング【婚活放浪記】




「あの〜...平井さんですか?」

左様。


20時過ぎの板橋駅交番前、ひとりの男性がわたしに声をかけてきた。
彼こそが本日のお見合い相手、井上さん(39歳)だ。小柄で少し日に焼けている「上品なあんちゃん」といった印象。
わたしのお見合い相手大募集ツイートを見てDMをくださった猛者のひとりである。


ツイッターにいるやつなんてどうせ全員妖怪の佃煮みたいなもんだろと思っていたら、意外にもちゃんとした成人男性が現れてしまった。


「はははまさかまさかですね、、、、」


不意をつかれたせいで第一声が心の声になってしまった。これぞ妖怪の佃煮としてあるべき振る舞い!
今日は井上さんおすすめの焼肉屋に行くことになっている。



「...さてさて、お店は歩いてすぐなんですか?」


「ごめんなさい、反対の改札口なんですよ...」


待ち合わせ場所を根拠なく勝手に決めて井上さんを呼びつけたのは数分前のわたしだ。絶対謝らないでくれ。
井上さんはそんなわたしに対しても「キメーんだよ佃煮が!!!」と激昂することなく懇切丁寧に接してくれる。佃煮好きなのかもしれない。

そして我々は大幅な迂回の末、商店街に並ぶ焼肉屋にたどり着いた。





「あ、井上2名で予約なんですが....」


予約だーー!!予約してくれているーーー!!
感動である。


わたしは店をちゃんと予約してくれるような「なんか素敵そうな男」とは縁のない人生を送ってきた(?)

なんか素敵そうな男↓
・飲食店を予約してくれてそう
・記念日に小さなサプライズしてくれそう
・デートプランを考えてくれそう
・重い荷物を持ってくれそう
・ディズニーランドを楽しんでそう

「なんか素敵そうな男」はわたしにとってネッシーとかツチノコみたいなもんである。どうにも存在はしてるらしいが実物を見たことがない。まさに令和のUMA。月刊ムーで特集を組んでほしい。

わたしの元恋人諸君は余裕でわたしの誕生日を忘れる。他記念日やイベントなど意識しているはずもなく、こちらがクリスマスだぞと騒げば浅草地下街の焼きそば屋に連れていかれた。そのまま後輩との飲み会で安酒をあおり泥酔。「暑い」「寒い」の二言を駆使してディズニーランドを一年中断ってくる。一生パズドラやっている。すぐ無職になる。

、、、

そういえば一生パズドラやってる彼氏(高円寺住みロン毛AV制作会社勤務)と別れて半年後くらいに飯でもいこうよー!ってなった時、なんかいいかんじのもつ鍋屋予約してくれてて「おめー、、、グッジョブ、、、👍」ってめちゃくちゃ感動したな。そいつがいつも履いてる汚ねえ下駄がYohji Yamamotoかなんかに見えた



「一応これ、会社の名刺です。怪しい者ではないので....」


ギリわたしの方が怪しいとはおもうが、ありがたく頂戴する。自分の名刺はしっかり自宅に忘れてきちゃった!


「僕は体質的にお酒飲めないんですけど...本当に気にせず好きなもの頼んでくださいね!」


「はい!!!生ひとつ!!」



婚活放浪第3回戦、開幕である。








ここである種悲劇ともいえる事実をお伝えしよう。
井上さん、めちゃくちゃいい父親であり、めちゃくちゃいい旦那なのだ。

・娘溺愛
・酒飲まない
・浮気しない
・女遊びしない
・堅実なサラリーマン
・水回りの掃除できる
・キャンプ好き
↑しかもキャンプ道具の輸入品を修理して販売する副業までやってるらしい
あと都市伝説好き

もちろん見ず知らずのわたしに対してもとても丁寧で終始敬語。下ネタなんか一切口にせず、私の話になんでも笑ってくれる。またその笑顔はどこか切なさをはらみ、味わい深い。

そ、しかしタイトルにもある通り、彼は離婚ほやほや、そしていわゆる元サレ夫なのだ。

「一緒に生活するうえでの不一致も多くて、ずっと離婚のことは考えてたんですけどね。そんな最中に妻の浮気が発覚しまして…」

「あらあら、なんで気付いたんですか?」

「ツイッターの友達が教えてくれたんですよ」

「!?そんなことある???」

そんなことあるらしい。

「それで自分も匿名のアカウント作って、妻の鍵アカをフォローしてみたらまあそこには色んなとんでもない事実が…」

・調査能力が高い
も追加だ。

さてと話は戻り、なぜ「悲劇」なのか。
婚活でそんなに良い男性が来たならそれが成功じゃないか!!!そうだそうだ!!お前の分際で文句垂れてんじゃねえ!!先月水道代未払いだったくせに!!!!!!皿洗わないで3日は放置するくせに!!!!あとこないだマッチのライブ見にいったよな!!!!情熱☆熱風せれなーでやってくれなくて残念だったな!!!!!


「井上さんはどんな女性が好きなんですか?」

「うーん……思いやりのある人かな」

わたしに最も欠如するもの、それは思いやりだ。
基本的に自分のことのみを考えて生きている。
ここでかつての恋人たちから授かったあだ名を紹介しよう!

・激情ハードコア
・暴力温泉芸者
・妖怪

以上だ。

そう、ちゃんとした男性であるからこそ、ちゃんとした女性、求めるよね、そんなん当ったりめえの摂理ですよね

井上さんに至っては一度元奥様に懲りていることもあるし、より一層愛と平和を求めているはずだ。そして目の前のわたしが持ち合わせているのは破壊と暴力。



焼肉屋は当然のように井上さんが奢ってくれた。
どうすればいいんだわたしは。わざわざ会いに来てもらったのに今のところなんの役にもたっていない。もりもり焼肉を食ってビール飲んで好き勝手しゃべり散らかしただけだ。さすがに人としてまずい。

「あの…わたしに井上さんPR用のパワポ作らせてください!」

井上さんはあの味わい深い笑顔で笑ってくれた。
楽しかったです!と駅の入り口まで送ってくれる。

井上さん、ありがとう。絶対幸あれ。
わたしはパワーポイントの使い方を勉強し始めた。




婚活放浪記はつづく。

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