【書評】戦国ベンチャーズ

どんな本?
ワンキャリアの取締役で、キャリア設計や組織論の専門家である北野唯我氏による著作であり(著作に転職の思考法等)、歴史上の偉人の人事戦略から現代社会における人事戦略のキーポイントを学ぼうという趣旨の本です。
日本企業の特徴として、「終身雇用」や「年功序列」がありますが、その中でも特に「年功序列」を日本の課題とし、歴史上成功を収めた人物たちは年功序列ではなくいわゆる「強みの経営(実力主義)」の人事戦略により卓越した成果を上げています。
※「終身雇用」は安心して働ける環境や長期的な人勢育成等のポジティブな側面もあると述べられています。
本作では、その具体的な事例をもとに、現代への応用例が描かれています。

唯才是挙(ゆいざいぜきょ)
三国時代の魏王朝の基礎を作った偉人である曹操が人事戦略の原則であり、簡単に言うと、「才能を強みによってのみ、評価・登用せよ」という意味合いです。実際、曹操は当時主流だった年功序列の制度を否定し、素行の悪いものであっても、実力があれば重宝し重要な役割を与えます。それがたとえ自分を苦しめた敵であっても。
また、マネジメントの父であるドラッカーも、「人は強みによってのみ卓越した成果を出すことができる」と述べています。
さらに、あの徳川家康は、孟子の言葉を用いて「賢を尊び、能を使う」を人材登用の考え方の根本に置いていました。
つまり、歴史上の名称は、年功序列ではなく人材を強みで評価していたということです。

自分の強みは?
本書では、人材の強みを組み合わせ、真の成果(①直接の成果、②価値への取り組み、③人材の育成)へつながるよう行動パターンを定着させることで組織としての強みを引き出し、弱みを無効化することを重要だと説いています。
一方で、読者である自分は、人材を登用・抜擢するような立場ではないので、重要な人材として抜擢される側になるために、自分自身の強みを理解し、より強化していきたいと考えました。
本書では強みの種類として、大きく「創造性(信長タイプ)」、「再現性系(家康タイプ)」、「共感性系(秀吉タイプ)」の3種類に分類していますが、自分の強みを簡単に分析できる強み解析ツールによって、自分を分類することができます。
ちなみに、自分の場合は回答に迷った部分もグラデーションとして含めると、「最高性」「回復性」(次点で「戦略性」、「コミュニケーション性」)が強みと分析されました。再現性が7割、共感性が3割程度のグラデーションですが、何となく自分の感覚とも会う気がしています。
本書を読んだ後、これらの強みを強化し真の成果論に結びつけるための行動を個人的に検討したので(勝手にOJTとOff-JTに分けて検討しましたが、かなり個人的なものなので記事からは割愛しました)、今後実行し、習慣化させていきたいと思います。
※上記は抜擢される側の立場での応用例ですが、抜擢する側の立場にいる人は、これらの特徴を理解したうえで、どう組み合わせるかが重要と本書では説いています。

感想
北野唯我氏の著作はほかにも何作か読んでいますが、わかりやすく、それでいて新たな発見もあり、自分の行動にも応用しやすいよう工夫されているので、面白いです。歴史をもとに、自分独自の理論を体系立てて構築しており(再現性)、かつ読者に分かりやすい形で伝えること(共感性)にもたけているように思いました。
自分の歴史には疎いですが、読みにくさはなかったので、歴史に苦手意識があってもあまり気にしなくてよいかと思います。


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