マガジンのカバー画像

【俳句】【短歌】の記事

41
俳句・短歌関係の記事をまとめました。
運営しているクリエイター

#鑑賞

【俳句】新年の俳句鑑賞

 あけましておめでとうございます。  新年は書道の書初め、将棋の指し初めなど、いつもとは異なる厳粛な雰囲気が漂います。俳句も例に漏れず、新年詠は一年の予祝ともいえる句が多い印象です。  しかし、新年、誰しも明るい状況ばかりではないかもしれません。今回は、歳時記「新年」の明るい句をご紹介し、少しでも皆様のお力になれればと思います。解釈は、あくまで私個人の感想ですから、ご参考程度にお読みくだされば幸いです。  正月の雪真清水の中に落つ 廣瀬直人  正月にふる雪はなにか特別です

【俳句】鶴亀杯2022夏をよむ

 前回の宇宙杯に続き、鶴亀杯に参加できまして、心より感謝申し上げます。拙句の成績はあまり振るわなかったのですが、審査員の皆さまや読者の方々に温かいお言葉をいただき、たいへん嬉しく、大いに励みになりました。  また、投稿された380句以上すべてを拝読しまして、読者側の楽しさも味わうことができました。すべての句に作者の顔といいましょうか、お人柄がみえる思いでした。  短歌を専門とする方々の句は、とても情熱的で、まるで小説の一場面のようでした。また、短詩型を専門外とする方々でも、

【随筆】令和俳壇・四月号の鑑賞

 俳句の専門雑誌のひとつである角川出版の「俳句」より、一般読者からの投句をいくつかご紹介したい。いずれも、プロの俳人に高い評価を得たものであり、俳句の魅力をお伝えするに適した作品であると考えている。  また、一般読者が投句されてから雑誌に掲載されるまで、四か月かかるため、今の季節、春に合わない冬の句である点はご了承願いたい。  また、句の選と解釈は私個人の感想であるためご参考程度にお読みくだされば幸いである。解釈の数は、読者の数と同じだけあると考えている。  句の引用はすべ

【随筆】石田波郷俳句大会句の鑑賞

 今回は、角川『俳句』令和三年二月号・特別レポート「第十三回 石田波郷俳句大会」より、一般の部に属する句をいくつかご紹介したい。当大会は昨年八月頃までに募集された句から選考されている。  俳人・石田波郷は戦後まもなく結核により東京の清瀬にある病院に入所した。その後も病と共に句作を続け、五十半ばの若さで亡くなっている。その事実から、石田波郷の句の背景に「病」を見出すことは俳句の鑑賞として不適切かもしれないが、くしくも病を思わせる句が大賞となった。病は誰にでも起こりうることであ

【俳句】南 うみを『入江のひかり』をよむ

 私は、角川『俳句』を定期購読している。収録句数が多く、俳人らの本格的な評論も毎号収録されている。また、俳人の新規発表作品も豊富で、今の俳句に触れられる点は大きな魅力だ。もちろん、他社の俳句雑誌のどれも固有の魅力がある。  今回は、角川俳句七月号に掲載されている、俳人・南うみを氏の『入江のひかり』16作品のなかより、そのいくつかをご紹介したい。選と解釈は私個人の感想であるためご参考程度にお読みくだされば幸いである。  鱊来る雪の鼻梁の若狭富士  原書に注がある。鱊(いさ

【俳句】富澤赤黄男をよむ

 俳人・富澤赤黄男(とみざわ かきお)とは珍しい俳号である。  「あの人は思想的にアカでも、軍隊のキイロでもない。それで二つをくっつけて赤黄男と名乗ったらしいよ」 (創風社出版『赤黄男百句』坪内稔典・松本秀一編より)  氏は明治から昭和にかけての戦時を生き抜いた人であるから、なるほど、と思う。  赤黄男は明治三十五年七月十四日、川之石に生まれた。今の愛媛県八幡浜市保内町川之石である。(中略)彼が俳句に関わるようになるのは郷里の第二十九銀行に勤めた昭和五年以来らしい。川之

【俳句】助詞「が」と「は」の効用

 主格の助詞としての「が」と「は」は一体何が異なるのだろうか。例えば、私”は”ご飯を食べる、私”が”ご飯を食べる。意味は同じだが、発信者の意思に僅かな違いを感じないだろうか。勿論、文脈により、「が」「は」のニュアンスは様々に変化する。  また、過去の拙稿にて、主格「の」「が」の違いについて述べた。本稿にて、重複する点は多々あるが、「は」の妙味と共に再考してくだされば新たな気付きもあるのではないかと期待している。  「角川俳句」令和三年二月号に、【特集】韻文のてにをは、と題す

【俳句】角川読者投句欄・佳作の鑑賞

 「角川俳句」は角川文化振興財団(発売:株式会社KADOKAWA)の発行する俳句専門の月刊誌である。本誌の最後には、一般の方々が投句して、プロの俳人数名に佳作以上の評を受けた句が掲載される。  秀逸句や推薦句は字も大きく目立ち、推薦句に関しては選評まで載せられる。選評とは、句のどこが良いのか説明したものである。プロの俳人に言葉をいただけるのであるから、飛び上がるほど嬉しいのだが、佳作には選評はなく、なかなか目立たない。佳作にも大変素晴らしい句が多いのに―と私は常々思っていた

角川「俳句」六月号の俳句鑑賞

 今回は、俳句雑誌のひとつ、角川「俳句」より、いくつかの句を紹介したい。選句と解釈は、私の主観であり、いわゆる独断と偏見がみられるかもしれないが、そのことでかえって新しい視点をもたらすという僥倖もあり得るのではないかと思い執筆した。皆様のご参考になれば幸いである。  海を曳く地球柔らか青嵐 「青嵐」対馬康子  山々が青葉を蒼天に広げ、盛んに揺らしている頃、海の波は白銀のように輝いている。その波は立っては消え、消えては立ってを繰り返している。まるで、地球が海を引っ張っている