【小説】蕺草一家 -DOKUDAMI IKKA-
蕺草と記す珍しい苗字の家族は、ドクダミという不吉な音韻にそぐわず、母子共々白く可憐で美しい容姿を備えている。二人の子は沙知子と小夜子、双子の姉妹である。彼女たちに父親はいない。誰か分からないと言った方が正しい。一見大人しそうな母親は、大層肝の据わった女である。かつて偽名を用い、紫煙を燻らせながら賭けていた金は、若き女帝と呼ばれるに相応しい額であった。
彼女は美貌と勘、そして奇妙な勝ち運を武器に、裏社会で名の知れた賭博師となり、その道の男たちを手玉に取った。だが、不用意に授