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感染が 拡大したら 我々が 守るべき物 は何でしょうか?

子供の頃から学校が嫌いだった。
子供の世界にも同調圧力があり、集団の中で空気を読んで振る舞うことが苦痛で仕方なかった。
そして、なにより教師と言う存在が私にとってストレスでしかなかった。たいして人格者とも思えないが、指示や命令だけはやたらとしてくる。おまけに、自分は子供たちのことを理解していると本気で思っているきらいがある。心からうざい存在だ。

幼稚園時代には、門の手前で行きたくないと泣き叫ぶことも多々あった。小学校に上がってからはさすがに泣き叫ぶ事はなくなったが、1秒でも遅く到着し1秒でも早く帰ることに命をかけていた。
もちろん放課後に友達と遊びに行くような事はあまりせず、家の近くの路地を散歩したり、部屋で時刻表などを眺めてぼーっとしているのが好きだった。


その一方で、正義感だけは人一倍強かった。
幼稚園の頃はクラスで1・2を争うほど体が大きかったので、弱い者いじめをするようなやつは許さず、鉄拳制裁をしてやった。そんな私のヒーローはウルトラマンや仮面ライダー、ゴレンジャーなどの特撮ヒーロー達であった。

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歴代仮面ライダーのソフビのおもちゃを買ってもらい、両手に握り締めあーでもないこうでもないと、組んず解れつ日々戦わせていた。余談だが、仮面ライダーアマゾンだけ根本的に作りが違うため首周りの強度が弱く、首が取れかけてプラプラしていた。
また、誕生日プレゼントで仮面ライダーの変身ベルトを買ってもらい、毎日30回位変身ポーズを繰り返した。しかし、1度も仮面ライダーには変身できなかった。


小学校に上がってからは、興味が特撮物からプロレスに変わった。我々子供たちのヒーローは、毎週金曜日午後8時にプロレス中継の画面の中で華麗に飛んだり跳ねたりしていた、タイガーマスクというプロレスラー。

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毎週毎週、世界各国からやってくる刺客たちを迎え撃ってやっつけるタイガーマスクに自分を同一化させ、日々のモヤモヤを解消させていた。自分も大きくなったらタイガーマスクみたいなプロレスラーになって、悪い奴らをやっつけたいと心から思っていた。
仮面ライダーの変身ベルトは、いつしかプロレスごっこのチャンピオンベルトとして使われることになった。

しかし、小学校も高学年になってくるとプロレスの仕組みに疑問を抱くようになった。なんでロープに振られて素直に戻ってくるのか? なんで絶妙のタイミングでレフェリーが失神するのか? なんで馬場は(以下略 
そんな中、我らがヒーローであるタイガーマスクは大人の事情で新日本プロレスを離れ、UWFという団体にスーパータイガーとして現れた。

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UWFは、格闘技志向が強いプロレスをリング上で展開していた。
ロープに振られても戻ってこず、コーナーポスト最上段からの攻撃は交わし、場外乱闘などもってのほかであった。しまいには3カウントルールもやめてしまい、KOかギブアップのみという現在の総合格闘技的な路線に舵を切りつつあった。

この路線を提唱していたのはかつてタイガーマスクの中の人だった佐山聡。しかしこの路線がプロレスファンたちに支持されるには時代が早すぎた。会場の客入りは悪く団体の存続も危ぶまれ、佐山は団体を追われるように去っていった。そして佐山は、後にシューティングという総合格闘技を立ち上げることになった。


私も佐山とともにプロレスファンから足を洗った。


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話は変わるが、私の正義の味方好きは女性の好みにも反映されている。
理想の女性は漫画『生徒諸君』のヒロインというかヒーローであるナッキーだ。学業に秀でスポーツも万能で、なおかつ『悪たれ団』というグループを率いて仲間を大事にする。

曲がったことが大嫌いで、損得感情抜きで権力者にも噛み付く。
男とか女とかそんな事は関係なく、人としてそうした姿勢を貫く人を尊敬し、惹かれていくのだ。

最近ではT Vドラマ『アンナチュラル』の主役である三澄ミコト。
去年の年末に再放送されているのを見て、一気に好きになった。彼女は一家心中のサバイバーであり、何よりも『不条理な死』を敵視する。彼女みたいな仕事をして、彼女みたいに生きたいと心から思った。

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時を同じくして、中国を発端とした新型コロナウィルスの世界的な感染が始まった。

感染力が強いが殺傷力が弱く、既往症のある年配の方への感染だけ注意すれば良いと最初は思っていた。しかし世界的に感染が蔓延し、このウィルスによる医療崩壊によって他の病気にかかった人たちの命まで奪われていくフェイズに突入してしまった。

奇しくもアンナチュラルの第1話は新型コロナウィルスを題材としていた。院内感染や濃厚接触、PCR検査や風評被害など今話題になっていることがあまねく扱われている。
ミコトは文字通り自分の生活を犠牲にしてまで、この問題の原因を究明し、解決している。


改めて見返したがやはりミコトの行動は素晴らしいし、やはりミコトのように生きてみたいと思った。


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そんな最中、私が暮らしている東京都内でも新型コロナウィルスの感染拡大フェイズに入り、深夜や週末の外出自粛要請がされた。その中で感染源として槍玉にあげられたものの1つが、私が従事している飲食店である。

心ある一部の大手企業は、勇気を出してしばらくの間全店休業の措置をとった。

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私はこの判断に対して、素直に素晴らしいと思う。なにより、不特定多数と接する大きなリスクを背負っている従業員たちに対して、感染リスクを防ぐという点で。

しかしその一方で、私が今従事しているような零細の飲食店にとっては、同じ措置は取れないのである。今営業を止めてしまうと会社に現金が入ってこなくなり、従業員や取引先に支払うお金がなくなってしまう。


このような状況下で、はたして自分はどのような行動を起こせばよいのであろうか?


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先ほど私はプロレスファンから足を洗ったと書いたが、じつは高校時代からまたプロレスを見るようになった。子供の頃よりも少しは世界の仕組みがわかるようになり、プロレスが持っている虚実入り乱れる世界観、今で言うところの『フェイクドキュメンタリー』的な魅力を感じるようになったからである。


特に見方が変わったのは、プロレスにおけるチャンピオンと言う概念。
昭和の時代、プロレスの本場であるアメリカでは各州にそれぞれのテリトリーが存在していた。そしてそれぞれのテリトリーでは、その地区のファンたちから圧倒的な支持を得ているスターレスラーがいた。

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ベルトを巻いている世界チャンピオンは、1年中休みなく全米を中心とした世界中のテリトリーを回り、タイトルの防衛戦を行っていた。そこでチャンピオンに課せられた任務は、相手を傷つけずに自分のタイトルを防衛すること。

3カウントフォールかギブアップでしかタイトルが移動しないという絶妙なルールを利用して、チャンピオンは反則負けや時間切れ引き分けという手段を使い、各地のスターレスラーを傷つけずに自分のタイトルを防衛するという離れ業を、日常的にやってのけていた。
それによって各テリトリーのプロレス人気は盛り上がりプロレスラーたちの生活も安定し、当のチャンピオン自身のステータスも確保されるのだ。


ならば私も記憶の中からあの変身ベルトを引っ張り出し、腰に巻いてみようか。正義の味方にはなれないけれど、あえて古き良きプロレスのチャンピオンのように振る舞ってみよう。
防衛することがなによりも大事である。それも試合を続けながら。


まずは従業員に感染させないこと。
次に、こんなご時世でもわざわざお店に足を運んでいただいているお客様に感染させないこと。社会的に逆風が吹いている中でもお店の営業を続け、お店を潰さないこと。

勝つ必要などない。そもそも我々の敵は新型コロナウィルスだったのだろうか?
いや、我々が憎むべきもの、我々の本当の敵はミコトが教えてくれたものそのものではなかったのだろうか?


そう、我々が対峙するべき敵であり防衛すべき対象、

それは紛れもなく 『不条理な死』 。

それだけである。




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